季節シリーズ
17.
「工学部1年の染矢真紀です」
同じ学年だったのかと思っていると彼はニッコリと笑って言った。
「ねぇ、友達にならない?」
「え?」
突然の誘いに僕は戸惑い、僕のそんな様子を見て彼は笑った。
「ごめん。突然すぎだけど友達になれたら嬉しいかな」
「でも・・君のこと、よく知らないし」
「だから友達になって知ってくれたらいいじゃない?」
通常ならば即座に断るのだが“でしょ?”と笑いながら言ってくる彼に気がつけば頷いていた。
「よかった〜染矢君とはいい友達になれそうな気がする!」
嬉しそうな様子でそう言いながら携帯を取り出す彼をみているとさらに言ってきた。
「じゃあさ、番号交換しようよ」
彼に押される形で番号を交換した僕は不思議な気持ちで新たな番号が登録された自分の携帯をジッと見た。
「どうしたの?」
「いや・・自分の携帯に友人の名前が登録されるのって3人目だから・・」
「え?他の人のは登録してないの?」
僕の言葉に目を丸くし驚いた様子で聞いてくる石川君に苦笑いを返す。
「僕、ずっと友達っていなかったから」
「マジで?そんな綺麗な顔をしてたら皆、友達になりたがったりしたでしょ?」
顔のことを言われて思わず眉をひそめた僕をみて地雷を踏んだと思ったのか「まぁ、人それぞれだしね〜」と言う彼を黙って見つめた。
「ここで立ち話も何だしどこか座れる場所に・・ってこんな時間だし食事でも一緒にしない?」
と言う彼に時計をみると正午をまわっているのに気付き頷く。
「染矢君って弁当かなにか持ってきてる?」
「うん、弁当」
弁当は同棲を始めてから毎朝、大輝の分も一緒に作るようになった新たな習慣。
「そっか〜俺は何もないから学食でいい?」
「・・・いいよ」
普段は人気のない所で食べるのが日常になっていたから少なからず緊張したけれど、何も持ってきていない彼に付き合うことにした。
彼は友人が多いらしく、2人で歩いているとあちこちから声がかかる。
「君は友人が多いんだね」
「う〜ん。俺、こういう性格だからなぁ。人見知りとかしないし。染矢君は人見知りする方?」
「・・そうだね。人と接するのはあんまり得意じゃない」
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