季節シリーズ 7 「真妃は違う」 「どう違うんだよ」 「真妃は・・なんて言うか誰にもお前の素顔を見られたくないっていうかお前を誰にも渡したくないって思ったのは真妃が初めてなんだ」 机の上に腰をおろして僕を真っ直ぐに見つめてくる彼は続けた。 「で、本当の話は何?それを聞きたいだけじゃないだろ?」 僕は大きく息を吐いた。 「僕はゲイだ。男しか好きになれない」 「だろうな。じゃなきゃ、俺がキスをした時点で殴られるか気持ち悪がられるかだろうし」 「それが原因で僕の家庭はバラバラになった」 「え?」 僕の言葉に大輝の顔が真剣なものに変わる。その顔を見ながら僕は全てを話した。 話を聞きながら大輝の顔はだんだんと険しいものに変わっていき、口を挟むこともせず聞いてくれた彼は悔しそうに 「知らなかった」と言ってくれた。 「桐原が知らないのも当然だよ。この事を知ってるのは当事者以外では蒼介さんだけだから。高校の先生も中学の先生も知らないし。 こんな僕だから・・いらない人間だから君に好きになってもらえるような人間じゃないって言ったんだ。話を聞いて嫌になっただろ? だからもう」 話している途中で抱きしめられた。 「なんで嫌になるんだ?親の離婚はお前のせいだけじゃない。事実を確認もせず怪我した子供を放っておくなんて・・ 元彼も碌な奴じゃない。俺がその場にいたら思い切り殴ってやったのに」 そう言いながらギュッと抱きしめられる。 「それにな、真妃は要らない人間なんかじゃない。少なくとも俺には居て欲しい、側にいて一緒に笑ったり泣いたりいろんな ことをしていきたい人間だ」 「嫌じゃないのか?」 大輝の言葉に泣きそうになり震える声を励まして聞いた。僕の問いに彼は腕の力を緩め顔を覗き込んで言ってくれた。 「そんなことで嫌になんかならない。俺のことが信じられないか?」 「わからない・・でも信じたいと思った・・」 「なら信じろ。」 ついに泣きだしてしまった僕を大輝は再び抱きしめてくれた。 「真妃、好きだ。俺の恋人になってくれ。俺がお前の過去を消せるくらい愛してやる」 その言葉を聞いて更に涙が溢れしがみつく僕を彼は泣きやむまでずっと抱きしめてくれていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |