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番外・過去拍手ほか書庫
怜争奪戦?
あくびをしながら伸びをして廊下を歩くのは望だった。
そのまま一階に下りようとしてある扉の前で立ち止まる。
どうせだから可愛い弟でも構って遊んでからにしよう、と思いつきにやける。
たまに行われる楽しみ。

一応名前を呼びながら開けてはみるものの、無防備な寝顔を想定した上での楽しみである。
が、今日は違った。


おはよう、と言ってももうすぐ昼時という時間。
部屋を覗いたのんちゃんはそのお客さんを見るとあからさまに不機嫌になる。

「貴ぃ様ー……何で居るんだ!」

指をさしたのは、遊びに来ていた響生に。

「コラ怜!部屋に男を入れるとは何事じゃ!」
「じゃ、って」

何その口調?と言う前に響生から少しでも離そうと抱き締められて引っ張られた。
普通に遊びに来てるだけなのに。
響生は何故か目の敵にされている事に動揺もせず必死に身の潔白を訴える。

「まだ何にもしてませんから!」

一体どういう言い訳か。

「『まだ』って何だコノヤロー!今から手ぇ出す気か!怜ちゃんは渡さんぞ!」

響生が余計な事を言うから火に油を注ぐ形に。
抱き締められる腕に更に力が入り苦しくなってくる。

「いや、だから、えっと、安心して下さい!お兄さん!」
「お前にお兄さんて呼ばれる筋合いは無いわー!!」

のんちゃんの怒りを前に一応言葉に気を付け始めたとはいえ間抜けな気がする。
けれどのんちゃんの方もいちいち揚げ足を取ってわざと突っかかっている。

「言っとくがなぁ!怜ちゃんはお前の様な平凡な庶民にはもったなさ過ぎるっつの!」
「確かに俺は平凡だし華やかな職業でもないですけど!それが関係ありますか!?怜が苦しがってるから放して下さいよ!」

響生まで怒りに火がついて最早冷静ではない。
そして二人で引っ張りあいを始めるからそろそろ限界です。

「のんちゃ…っ、響……ちょっ、苦し……からっ」

大の男がおもちゃの取り合いの様な事をして何が楽しいのか。
気付いて慌てて放してくれたけど疲れてぐったりとソファーに倒れ込む。
今度は二人で必死に謝って心配してくれた。

「ばかぁ」

横になったまま見上げ、せめてものお返しにと言ったら思ったよりも衝撃が大きかったらしい。
のんちゃんは胸を押さえ、響生は頭を抱えてショックを隠しきれない状態。

「怜ちゃん」

のんちゃんが急に優しい声になったかと思うと、そっと前髪を横によける。
黙ったままだからこっちも黙っていると抱き起こされてまた抱き締められた。
そしてニヤニヤして響生を見る。

「どうだ、これが兄弟の特権だ!お前より遥かに警戒心が薄いぞ。たーんと羨むがいい」

見せつけたかっただけかい!

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あきゅろす。
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