番外・過去拍手ほか書庫
2
まんまと悔しがる響生はひとまず無視して、放してもらおうとじたばた暴れる。
「男ばっかで何してんだ、むさ苦しい」
「男ばっかじゃないわよ!」
いきなり入ってきたかと思えば皐ちゃんが眉間にシワを作る。
のんちゃんは「俺のだから」と皐ちゃんに言ってはいるが横目でちゃっかり響生を睨んでいる。
「いつから望兄のって決まったんだよ。ていうかそれ怜ちゃんが迷惑がってると思うけど」
のんちゃんがいつまでも抱き締めているのを『それ』呼ばわりして邪魔しにかかる。
妙な争いに新たに一名参戦しました。
と思っているとまたも扉が今度は勢いよく開き、ぱたぱたと王子が駆け寄って抱きつく。
もう一名追加。
あちこちから抱きつかれたり引っ張られたりして嫌になってきた頃、携帯がなったから逃げる口実が出来た。
何とか廊下に逃れて電話に出ると真弓先生で、心拍数が上がる。
ウキウキと嬉しそうに話す後ろ姿をこそっと覗いた彼らは静かに扉を閉めた。
皆言葉にはしたくないらしく、揃ってただ溜息をつく。
「くそぅ!意外なとこに落とし穴がぁ!」
悔しがって叫ぶ望にバシバシと背中を叩かれ痛がる響生。
「え!?誰っ、誰ですか!?」
「知るか!探れ!」
皐は冷静に一言残し、王子を連れ出ていく。
「マークし損ねたな、望兄」
「僕知ってるけど教えなーい」
以前話題には出たはずなのに、隠された敵をすっかり忘れてしまったらしい望に王子はさりげなく意地悪を言って消えた。
携帯を切り扉を開けると、のんちゃんと響生が二人で重苦しい空気を発していて非常に入りにくい。
第一声をどうすべきか迷っておろおろした挙げ句、よし逃げよう!と決心して黙って扉を閉める。
途端二人が叫んで立ち上がる音がしてゾワッと恐怖心が襲う。
「おいコラ怜ー―っ!!今の誰じゃあー!」
「あ!まさか!くまのアイツかあーっ!?」
ぎゃー!追い掛けて来るーっ!?
「知らない知らない!やだっ、来ないでぇ!」
急いで一階に逃げていくとリビングに悟兄を発見。
これで助かる!とソファーに座る悟兄に横からばふんっ、と抱きつく。
「助けてぇっ」
悟兄は黙って頭をぽんぽんと撫でる。
息を切らすのんちゃんと響生が追い付くと、それを見てガクリと膝をついた。
「さっ、悟兄まで…!」
「俺……くじけそうだ」
何の事だ、と眉間にシワを寄せているけれど背中には悟兄の手が回る。
私には優しいんだという優越感というか、独占出来た気がして嬉しい。
すり寄って見ると目が合って、珍しくふっと微笑んでくれた。
すっかり心が折れてしまった二人にふふんっ、と笑ってみせる怜。
怜を独占的に可愛がる、もしくはモノにするのは果てしなく手強い道のりかもしれないと思った二人だった。
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