小説
大人と子供の境界線 兵部×皆本 シリアス小説完結
「ねえ、皆本君」
「いったいなんだ?」
「オトナとコドモの境界線ってどこにあると思うかい?」
人は時として見かけで人を判断する。
ともすれば、見かけでしか判断しない場合もある。
とすれば、今僕とこの変態爺は中のよい兄弟にでも人には見えてるのかもしれない。
かなりぞっとする考えだが。
「僕はね……できたらね」
「いったい何が言いたい?」
「……できたらね、普通に年をとって、仲間と一緒に笑いあって暮らしたかった。戦友と一緒にね」
そうだこいつの仲間といえばもうバベルのあの人しか残ってない。
しかも二人は敵同士になっている。
昔は味方であり、義理の姉弟でもあったのに。
「…帰りたいな」
「……」
「昔に」
僕は黙り込む、さびしそうなこの男の横顔は、どこかチルドレンに似ていたから。
家族のことを考えるときのチルドレンに。
「……と僕はたまに思うんだよ。皆本君」
「……まあ爺は昔のことを懐かしく思うらしいし」
「ガキのくせに、オトナぶって」
「僕はオトナだ!」
「僕からみたらまだコドモだよ。坊や」
にやりと意地悪げに兵部が笑う。
そんな顔は、さびしそうなあの横顔とは違い、心底僕をからかうことを楽しんでいる顔だった。
僕らは並んで歩いていた。
人ごみの中。
二人、ただ二人歩いていた。
僕はさびしげなこの男の横顔をみて、今は何も言うことはできずにいた。僕を元に戻せとか、変態爺とかいう言葉を。
シリアスのつもり(ToT)毛屋さんところのお題シリーズです
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