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小説
「祝ってくれる人がいるというのはいいもんだ」(兵部×皆本、兵部少佐誕生日のお話、ほのぼの 完結)
あの人がボクを殺す。
 その悪夢を繰り返し見る。
 パンドラは悪夢の箱、それをあけたら、でも最後にあるのは?
 ただ見るのはでも今は悪夢、あの人がボクを殺す悪夢。
 繰り返し繰り返し見る悪夢。

「京介どうした?」
「ああ、なんでもないよ」
 平静を装うために、ボクは二コリと、心配そうにボクを見つめる皆本クンに笑いかけた。
 転寝をしていたなんて、不覚、と思う。
 ボクは遊園地のベンチでいつの間にかうとうとしていたらしい。
「うなされてたよ、京介」
「大丈夫だよ、ありがとう」
 夢の中であの人はボクを殺す。
 それは間違いないけれど。
 でもそれは過去であり、もう過ぎたことだと思う。
「気分悪いんだったら帰る?」
「いやいや、せっかくこうしてキミがデートにつきあってくれるんだから、帰るなんてもったいない」
 ボクは心配する彼に、大丈夫、大丈夫、と繰り返す。
 彼は小さい頃のボクにどこか似ている。
 強い能力故に疎んじられた、そしてようやく信じられる人に出会ったけど……信じている親代わりのあの人はボクを裏切った。
 
 ボクは頭をぶるぶると振った。このような考えはチルドレンたちの面倒を見る彼の前では出さないようにしたほうがいい。
 鈍いようで彼は割りと勘がいい。こんな考えをしていることを知ったら、気を使わせる。
「……なあ、京介」
「なんだい?」
「辛い時は辛いっていったほうがいい」
「え?」
「悲しいときは泣いて、さびしい時は言葉にだして、そうすれば悲しいこともさびしいことも消えていくって……」
 ボクは優しい言葉を聞いて、少しうれしくなる。
 正直彼の口からこのような言葉が聞けるとは思わなかったから。
 誰もいない遊園地、今は彼とボクだけ。
 デートに誘って、来てもらえるとは思わなかったけど、遊園地にはきてみたかったんだ。と彼はにこりと笑ってボクにつきあってくれたっけ。
「今日って八月十二日だろ、だからさ……」
「え?」
「誕生日おめでとう」
 皆本クンは懐から何か取り出した。
 それは小さな箱、かわいくラッピングされていた。
「これ、ボクに?」
「……うん、誕生日おめでとう」
 多分バベルの不二子さんあたりから、誕生日きいてくれたんだなあ。と思う。
 とてもうれしくなってボクはにこりと彼に笑いかけた。
「あけていいかい?」
「うん」
 ボクは箱を受け取る。ベンチに座った僕は今は皆本クンをちょっとだけ見上げる姿となっている。
「あ、写真立て」
「うん、結構これっていいかなって思って」
 小さな写真立てが、箱の中にははいっていた。
 ボクは、そういえば写真なんて何年もとってないなあ、と思う。
「京介、これからたくさん思い出をつくればいい」
「え?」
「泣きたいときは泣いて、悲しいときは悲しいっていえば、多分それは人に伝わるから」
 多分これは、彼の持論しれないなあ、と思う。
 とてもうれしい、とボクは思い、写真立てを懐の中へとしまった。
「ありがとう、大事にするよ、皆本クン、いや……今光一」
「今日一日だけは、名前で呼ぶって約束だからな……」
 小さな女の子は、いつか素敵な大人の女性になる。
 その時、できたら……幸せになってほしい。
 あの予知のような未来はできたらこないほうがいい。
 照れたように笑う光一を見てボクはそう思う。
 あの悲しい未来が来ないことを、祈りながら。

誕生日に書いたものです。
二人は恋人同士〜。が前提のはずが、ほのぼのになってしまいましたねえ。

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