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小説
時々想像してみるの、貴方がいない世界を(兵部×皆本、切ない系 完結)夜泉さん2000キリリク
 時々想像してみるの、貴方がいない世界を。
 そこは多分暗闇だろう、永遠の。
 夢の中で貴方を見た。とても切なかったの。
 
 ……ラジオから流れてくるメロディ。
 あまったるい恋を歌う、どこかその唄はボクは苦手だった。
 どこかこの頃イライラする。
 ボクはなんとなく聞いていたラジオをとめた。
 そして自分の部屋のソファーに身をゆだねる。
 世界に貴方がいない、そんな世界……イラナイ。
 この唄はボクは大嫌いだった。
 そしてボクは身を起こす。
 このイライラを解消させるためだけに……。

「貴方のいない世界なんて意味がない、そこはきっと永遠の暗闇だろう」
 ボクはハミングしてみる。目の前にあるのはバベル、超能力者たちを利用している組織だ。
 ボクの持論としては「どうして超能力者は、ノーマルに恐れられ、迫害されなければいけないのか?」というものだ。
 ボクたちはただ普通の幸せがほしいだけなのに。
 バベルは、ボクたちを利用する組織だ。
 多分昔のあの人の作り上げた軍部のような。
 ボクは空に浮かびながらただ歌っている。
 そんなボクが見ているのは『彼』だ。
 彼は楽しそうに笑っていた。
 ボクがいないその場所で。
 色黒の男と楽しそうに笑いあっている。
 『彼』の親友というその男がボクは大嫌いだった。
 どうしてかはわからないけどね。
 あいつが彼の肩に親しそうに手をかけた。
 胸が痛んだ。
 夢の中で貴方を見たの。とても切なかった……。
 何度も何度もハミングしてみる。
 するとちらっと窓の外に目を向けた『彼』の目が一瞬ボクと合った。
 すると途端に険しい目となる。
 楽しそうにうれしそうに笑っていたその顔が、強い憎しみ……いやなんだろうか険しい表情に支配されていく。
「兵部!」
「貴方のいない世界なんて意味がない。夢の中で貴方をみた、とても切なかった」
 ボクはただ歌っている。
 君はそんなボクを強い瞳でにらんでいる。
 あいつといるときは本当に楽しそうだったのに。
 どこか胸が痛くなる。
 窓を開けて彼は叫ぶ、降りて来い! と。
「……貴方がいない世界は暗闇だろう、永遠の。私は一人、世界に一人、きっと永遠に一人。貴方のいない世界になんて生きていけない。想像してみるの、貴方のいない世界を。そこは永遠の暗闇だろう。私はずっと暗闇に一人、永遠に一人」
 このフレーズはボクは大嫌いだった。
 でも歌ってみる。するとその唄を聴いた君は驚いたように目を見張る。
「ずっとずっとずっとずっと一人、永遠に一人、暗闇に一人」
 ラジオから流れるこのメロディ、どうしても聞いてしまう。
 ただ一人いるときについつい。
「どうした?」
 彼は小首をかしげてボクを見る。いつもの様子とボクが違うのに気がついて。
「……どうして、普通の人たちはボクたちを恐れる?」
「……おいどうした皆本? つか兵部じゃねえか、すぐ局長に連絡を!」
「おいまて賢木、ちょっと……」
 白衣の男、『自称』皆本クンの親友があわてて窓の外を見て叫ぶ。
 そうだねえ、ボクはバベルの敵だもんね。
「……ボクらは何も悪いことをしていないのにね」
「……でも恐れない人たちもいる!」
「でも大半の人たちはボクたちを恐れる。それは事実だ」
 いつもボクは彼に問いかけてしまう。
 だって彼は偽善者だから。
 賢木が慌てて部屋から出て行くのをボクは冷たい目で見る。
「バベルの犬が……」
「どうしてお前は僕たちと争う? 僕たちと兵部、あんたの考えは似ているはずだ。共存できるはずだとは思わないのか?」
 いつもボクたちはこう問いかけあう。これがこの後ごろの日課とかしていた。
 ボクは冷たい目で彼を見る。
 そして深いため息を一つつく。空に浮かびながら。
「……ボクたちはただ特殊な力をもってしまっただけのただの人間だ。ノーマルはそれを認めようとしない。ほら澪だって、両親から虐待されていた、こんな化け物自分の娘じゃないってボクだって……」
 ボクは昔のことを一瞬思い出す。
 話しすぎた、とボクははあとまたため息をつく。
 どうしても彼の前だとボクは暴走してしまうようだ。
「……イライラする君をみてると」
「はあ?」
「……イライラするんだよな」
 ゆめの中で貴方をみたのよ。
 そう、ゆめの中でしか貴方と会えないの。
 今はそうなの。
 ハミングしてみる。
 この唄の憐れな女は多分ボクかもしれない。
 ゆめの中でしか君は……。
 でもあいつには笑いかけるんだ。この感情はなんだろう? わからない、わからない、理解不能。
 ボクを途方にくれたような顔で君は見ていた。
 胸がとてもとても痛かった。
 ただそれだけがボクを支配していた。
 ボクは遠い瞳で空を見る。
 君は笑わない。ボクの前では。
「兵部、あのな!」
「……永遠に一人、ずっと一人」
 一人はいやだ。誰か助けて、と叫ぶ小さな子供がボクの中にはいるけど。
 多分誰も助けてくれない。
「……早く逃げろ!」
「え?」
「今日の夜僕のマンションでにきてくれ! ゆっくり話し合おう!」
 これはなんだろうか、と思う。
 デートのお誘いじゃないのはわかってるけど。
 兵部が、と大声で叫ぶバベル職員たちの声が聞こえてくる。
 しかも逃げろって……。
 とりあえずボクは瞬間移動に入る。
 彼はどこかいつもとは違う目でボクを見ていた。
 それは確かだった……。


「……皆本、ほらみてみろ!」
「……やめろ薫!」
 ほら率直な感想を言ってみろ、と女王が黒い『勝負パンツ』とやらをもって彼に迫っている。
 ボクは彼のマンションの外でそれをみていた。
 永遠に一人、ずっと一人、私は一人。
 この唄を作ったのは超能力者だった、とボクは聞いている。
 ずっと彼女は一人だった。ずっとずっと一人だったらしい。
 ボクは深いため息を一つつく。
 他の二人が、さすがにいじめすぎよ。と女王をとめている。
「……一人はいやだ。誰か助けて……」
 そう彼女はずっと叫んでいたのかもしれない。
 彼は困った顔をしながらも楽しそうだった。
 ボクの前ではしない表情だ。
 ボクはどこかやはり胸が痛くなるのを感じる。
 ハミングする、フレーズをハミングする。
 ゆめの中で見たんだ。君の笑顔を。
 胸が痛くなる。
 帰ろうかな、とも思い始めてきた。
 ボクはふわりと空にまた浮かび上がる。すると彼は窓の外へと目を向ける。
『少し待っててくれ』と彼の思考が流れ込んでくる。
「……女王たちだけが大切なんだろ、あいつには笑いかけるんだろ、ボクなんてどうでもいいんだろうに、どうして……」
 ボクはため息をつく。
 理解できない感情がボクを支配して、警告するシグナル。
 この感情を言葉にしてはいけないと。
 ボクの中でボクがささやく。
 点滅するシグナル。
 警告するシグナル。
 でもボクは彼を待つべく、目を閉じた。
 彼とただ二人話すためだけに。


「……兵部、悪かったな」
「何が?」
「呼び出したりして」
 ボクは今は彼と二人、居間のソファーに座っている。茶などがボクの前には置かれている。
 ずずっとボクはそれを飲み干した。
「……お前、どうしてノーマルを憎む?」
「憎んではいない、彼らがボクを憎むだけさ」
「……憎むからだろう、お前が」
 ……会話は平行線。
 どこまでいっても平行線。
 ボクはふうとため息をつく。そしてコップをかちゃんと机においた。
「……どうして笑わないんだろう」
「え?」
「ボクといると楽しくないんだろ?」
「はああ?」
 ボクはどうせボクは君の敵だしね、とつぶやく。
 何がいいたいのかわからん、と彼は頭を抱える。
「……どうして君はボクといるとき笑わない?」
「楽しくもないのに笑えるか!」
「ボクのことが嫌いなのか?」
「嫌いじゃないけど……」
 困ったなあ、という顔で皆本クンはボクを見ている。じっくり話してみよう。と彼はいったが。
 どうしてボクのことなんて嫌いなんだ。とボクは悲しげな顔をしてみる。
「……ボクは所詮一人だ」
「パンドラのメンバーがいるだろ?」
「……どうせ一人なんだ」
 ボクはさめざめと泣き出す。するとおろおろといったように彼はボクをなだめにかかる。
「……笑ってくれないか?」
「え?」
「……女王やあいつといるときみたいに」
「あいつってだれだ?」
 ゆめの中でしか貴方は笑ってくれない。
 ゆめのなかでしか。
 フレーズが頭の中で流れる。
 どうせボクは一人なんだ。とボクは心の中で自覚した。
「君の親友ってやつだよ」
「賢木?」
「……仲良く色々話していて……ボクのこと無視していたしね」
「はあ?」
 時々思うことは、自分が一人ぼっちってこと。
 悲しくて寂しくて、ただ冷たい雨の中歩く。
 一人ぼっちはいやだ。とボクの中でもう一人のボクが叫ぶ。
「……お前も大切だ」
「え?」
「ずかずかと僕の中にはいってきて、言いたいことだけいって去っていって、面白いやつだなとは思ったりする」
 なんかボクの中に勝手に入ってきて、心の中を踏み荒らす。と同じ事を思っていたんだ。と思う。
 渋い顔で彼はふうとため息を一つついた。
「なんか……わがままいうときの薫みたいだなって思ったりする」
「ボクが女王と同じ?」
「似てるよなって思うことは多いな」
「似てない!」
 はいはい似てない、似てない、と彼はため息とともにいう。そして柔らかく優しく笑う。
「なんか相手にしてると面白いし、楽しい」
「え?」
「話をしていると飽きない」
 彼はくくっと楽しげに笑った。そうだこんな顔が見たかった。と思う。
 胸が焼けるように痛かったのが消えていく。
「……話をしないか?」
「何を?」
「まあなにかといって話すことは思いつかないが、とりとめもない話でもいいし」
 なんでもいいゆっくりと話してみようなんでもいい、お前のことでもいいし、僕のことでもいい、と皆本クンは笑いながら手をボクに差し伸べた。
「……ボクのことは大切に想っているって」
「うん、見てると楽しいし、飽きないし、楽しい」
 出会うたびに好きになる。
 出会うたびに惹かれて行った。
 素直になれなくて、ただいじめてみた。
 でも彼はボクに会うことは楽しいといってくれる。
 それだけでうれしい。とても。
 ボクは彼の手をとった。そして握手する。
 ボクたちは立ち上がり、そして手を取り合っていた。
「そうだね、話をしよう。ゆっくりと」
「ああ」
 昔昔、あるところにノーマルの夫婦のところに、一人の男の子が生まれました……彼の名前は……京介と名づけられました。
 ボクは昔話を始める。すると真剣な表情で話を彼は聞いてくれる。
 ボクは話し始める、昔からのボク、そして捨てられたボク、あの人とであった後のボク。
 彼はゆっくりとうなずきながらボクの話を聞いている。
 ソファーに座り、向かい合い、茶など飲みながら話をしていた。
 ……昔昔、一人ぼっちの男の子がいました。
 彼は皆と仲良くなりたかったのですが、でも彼と友達になってくれる人は誰もいませんでした……。
 ボクの話が終わると、ゆっくりと彼も話し出す。
 一人ぼっちの子供時代、ようやくできた友達。
 初恋の人の話、そしてバベルで出会った子供達、
それから……見ててとても楽しい『若作り爺』の話を。
 ボクは若作りのところで怒り出す。
 すると悪い悪い、と彼は手を振る。
 そして彼は気がついたのです、とても寂しがりや乃子供がチルドレンのほかにまだ一人いることを……。
 ボクは彼のその話のところで首をゆっくりと縦にふる。ボクのこと? と問いかけると、そうだよ。と彼が答える。
「一人ぼっちの子供は、とてもわがままでした……」
「ボクのことかい?」
「まあそうかな」
「……そうか」
 わがままな子供はいつも彼を振り回します。
 でもいつかそれがどこか楽しいと感じる自分がいることに気がつきました。
 彼の話は続く。
「……そして……わがままな子供と友達になりたいと想う自分に気がついたんです」
 ボクは相槌を打ちながら笑った。
 彼の言葉がとてもうれしくて。
「……まあそんなところだ」
「そっか……」
 友達ってのがちょっとひっかかるけど、でもとてもうれしい。
 ボクはくすっと一つ笑う。
「まあ……ボクは一人ぼっちじゃないということがよくわかった」
「そうだ」
「それで今はよしとしよう」
「はあ?」
 彼が今はってなんだよ。と尋ねると、秘密だよ。とボクはウインクで答える。
 話をしよう、もっと話を。
 とりとめのない話でいい、もっともっと、とボクが言うと、わかった。と優しく柔らかく彼が笑う。
 優しい時間が過ぎていく。
 もう泣いている子供はいない。
 優しい時間が、今のボクたちの中に流れていた。
 ただ流れていた。
 


 夜泉さんからの2000のキリリクです。
なんだろう・・・・私的に知らないうちに皆本への想いに身をもだえている=自分でも知らないうちに皆本への嫉妬に身をもだえるって感じです。完結です。
女々しい兵部だった・・・。いちお攻めなんですけどお(汗 夜泉さんこんなですけどもらってくださいませませ!


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あきゅろす。
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