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月三物語
ページ12

「赤月……お前、一体何処に居たんだ? それに感化って何だ?」

 赤月は、用事があって出掛けてたと云ったが、俺は違うと感じた。

「感化したと云うのは、感情が伝染すると云う事だ。だから、涼が楽しい時には皆、楽しいし。悲しい時には……」

「章吾! もう、いい!」

 突然、涼は立ち上がり部屋から出ていった。

「何で? 赤月……」

「月島が、涼に聞かれたくなかった様だから」

 確かに青木の事を、赤月以外には聞いて欲しくはなかったが、涼を傷付けて迄は。

「赤月、話があるんだ。青木の事で……」

 赤月は、穏やかな顔をしてポッリと言う。

「月島、アイツが私をずっと想っていたのは知っていたよ……だけど私は、その想いには応えられないんだよ。もう誰も、一生人を愛す事は無いだろう……」

 余りに強い感情のため。
 手を触れても居ないのに、赤月の意識が俺の所へ流れて来る。

『もう……誰も愛して、あんな想いをするのはゴメンだ……だから最初から諦めた方が……良いんだ……』

「赤月、お前……何で諦めるんだよ? 俺は、俺は諦めたくないよ。絶対に」

「月島、涼のことが好きか? どんな事があっても?」

 さっきから穏やかに話していた赤月が、そう言って俺の顔を見つめた。
 俺の気持ちはもう、決まっている。

「俺は涼が好きだ……」

 赤月は微笑み手を差し出した。

「月島、涼は男じゃない。女だよ」

 冗談にも程がある! 何処から見ても、男にしか見えないぞ!



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