月三物語
ページ10
まさか、本気だったなんて。
アイツの腕を掴んだ時、青木の意識が流れ込んで来た――
『ああ、好きだよ! 好きで、好きで、堪らねえんだ! アイツを始めて見た時から……クソっ! バカヤロ――!』
『俺は、なんて事言ってしまったんだ……幾ら頭に血が上って居たからって……』
自己嫌悪で落ち込みながら、赤月と涼の待っている所へ戻って行く。
学食には独りポッンと座る涼が居て、俺の姿を認めると走って来て言った。
「浩司、章吾が帰っちゃったよ。一体どうしたのかな?」
今にも泣きそうな顔をしている涼に俺は、「涼、赤月の家は何処だか判るか?」
なんとか赤月に会って青木の事を話さなければ。
「浩司、コッチに来て」
涼が連れて行った所は男子トイレで、扉を開けて誰も中に居ないのを確認すると、奥の個室に俺を呼んだ。
「浩司、≪跳んで≫行くよ。始めてだから目を閉じた方が良いかな?」
『なに? もしかして≪跳ぶ≫って言ったよな? 俺は、赤月の家は何処って聞いただけだぞ? 歩いて行ったほうが……』
その時、考えてた俺に涼がギュッと抱きついた! 涼の体からは良い匂いがして、クラクラする。
「……涼、どうした?……」
「ちょっと静かにして! 集中しなくちゃいけないんだ。それに、ちゃんとくっ付いて居ないと離れたら大変だから……」
と言って、益々ギュッと抱いてくる。いつの間にか俺も、涼を抱きしめていた……
「浩司、行くよ……」
涼が言った途端、目の前の景色が早送りになって、目が回りそうだったから、慌てて目を閉じた。
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