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拝み屋 西条望の心霊ファイル
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 その部屋の中には、禍まがしい気が満ちていた……
 一歩足を踏み入れたおれが、途端に回れ右をして帰りたくなる程に……
 覚悟をきめて、依頼した両親に向き直り一人で入らせてくれと頼むと、どこかホッとしたようにその場から離れた。
 部屋の主は、おれが中に入った途端、唸り声とも叫声とも、つかない奇妙な声を発する。

『…なにしに……くるな…おまえに…わたし…祓え…る…』

 おれは、経を唱えながら近付いて行く……




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「終わりました。もう大丈夫ですよ…こちらに来て娘さんに会って下さい。」

 両親が部屋に入り、涙の再会?を交している間、おれは今にも崩れ堕ちそうな体を必死になって支えて居た。


「本当にありがとうございました!何とお礼を言ったらいいか……」
 しきりに頭を下げる親子に営業スマイルを見せその家を出た。

 表に停めてあった車に乗り込むなり、口を押さえて吐気と闘う。
「情けないねぇ、お前も未だまだ修行が足りないよ。」

 苦しんでるおれに、無情にも掛けられた声の主に、

「うるせぇ…ババア、早く何とかしろってんだ。」

 言葉ほど威勢のよく無い、弱々しい声で応酬する。

「仕方ないね、家まで持ちそうも無さそうだ。これに懲りたら、
もう一人でやろうなんて考えないこった。」

 激しく後悔をしていたが、
生来の気性のため謝るなんて事はしない。
 ひたすら耐え忍ぶおれ……


 本日、初めて一人だけで除霊を試みたおれ、西条望(のぞむ)が初めて負けを認めた日だった――




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