拝み屋 西条望の心霊ファイル
A
おれの家は代々、隔醒遺伝で霊能力を持った子供が産まれる。
母方の祖母が今の家長だ。
父は自分の実家の家業を弟に譲り西条の家に婿養子に入った。
其れが母と結婚する為の絶対条件だったから――
祖母がまだ若かりし頃に写真でしか見たこともない祖父は結核と云うアナログな病でこの世を去った。その祖父とおれがドッペルゲンガーの如く瓜りふたつ――
……迷惑な話しだ。
「ただいま――」「帰ったよ」
二人揃って玄関で声を掛けてから中へと入る。
口は悪いが躾には厳しい祖母の教え。
「おかえりなさい。どうでしたか?望さんは……」
おれとば―さまは顔を見会わせば―さまはニヤリと笑い――
「立派に努め上げたよ。これで西条の家は安泰だね」
『ば……ばばあ。何考えてる?』
「そうですか。良かった……」
胸に手を当て心底ホッとした母に心配かけない様にぎこちなく笑うおれ。
『暫くの間ば―さんに頭が上がらないな』
気付かれない様に溜め息を付き元気を振り絞り言う。
「じゃ、学校へ行って来るから。婆ちゃんありがと。」
部屋に上がりかけた所で、ばーさんに首ねっ子を掴まれた。
思わず睨み付けたおれの顔を見て母が早くも目を潤ませている。
『ヤバイっ!泣きそうだ。』
「婆ちゃん何か用?」
引きつりながらも笑顔を返し、ばーさんに聞いてみる。
そ―なんだ、おれに弱点と云う物があるとすれば、まさしく母なんだろう。いや、おれだけじゃ無い。父も……恐らくばーさんも。
母のウルウル攻撃を予感したばーさんは、極めて優しい猫なで声で話した。
うえっ、勘弁してくれ……
「望――今日は高校休んだらどうだい?疲れただろう?」
反論する余地も無くおれは首をカクカクしていた。
『くっそう――また休みかよ。留年しちまうじゃないか。』
力なく肩を落とし部屋に上がって行くおれの背中はさぞ哀愁が漂っていた事だろう――
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