誰かに聞いた怖い話
・・・三毛猫7
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その年早々に、男には喜ばしい出来事が待っていた

男の妻が年明け早々、まだ年賀の匂いが残る内に、待望の男子を産んだのである

この時、男と妻の間には既に一女がおり、一姫二太郎の言葉通りに理想の家庭を育んでいたのだった

冬の最中に生まれた息子もすくすくと育ち、それ迄働く事にのみ生き甲斐を感じていた男の、現在の唯一の楽しみは畑仕事から帰った後で、娘が弟の世話をしたがり妻に纏わり付く中、妻が息子をいとおしそうに胸に抱き、その妻の肩越しから娘が赤児の顔を覗き込む様に、妻の左肩にちょこんと顔を乗せている…そんな光景を銚子を傾けながら見ているのが、彼は堪らなく好きだった

男も妻も…誰もがその生活が、これからも続く事を信じていた





最初に異変に気付いたのは、家の中で夕食の支度をしていた妻でも、勿論近所のお宅に遊びに出ていた娘でもなく、茜色に染まり初めた空を腰を伸ばしつつ見上げながら、その色合いに何故か胸騒ぎを感じて、いつもより早く帰宅した男だった

彼が衣服に着いた埃を払う時間ももどかしく、息子を寝かし付けている部屋に入った時に、彼の目前を横切り庭へと駆け出して行く物があったのだ

それは一匹の三毛猫だった

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