誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて14
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私はその場に居た誰にも、その事を話しませんでした
それはその子の呼び声を聞いたのが私唯一人だった為、私の聞き間違いだと言われるとそう思ったのと…それよりなにより此の直ぐ後に、私達は思い出したくもない体験をしたからです
そう…此の後直ぐに…
『どうしたんだよ、階段の途中で急に立ち止まったりしてさ…お前が下りて来ないから、皆で心配してたんだぜ…んっ?顔色が悪いな…上で何かあったのか?』
私はその問い掛けに、答える事が出来ませんでした
私はただ黙って、首を横に振るだけだったのです
『まぁ、いいや…暗くなって来たし、もう帰ろうぜ』
そんな私の態度をどう思ったのかは知りませんが、例の彼は深く追及する事もなく、周りの誰にともなくそう言いながら、壊れた大きなロビー入り口へと足を向けたのでした
此のまま帰ってしまえば、何も問題も無く済んだのです
けれども私達は帰りませんでした
その時、頭上から聞こえた聞き覚えのある物音が、皆の足を止めたからです
それは錆び付き軋み独特の音を奏でる、ホテルのドアが閉じられた音でした
そして凍り付いた様に、その場に立ち尽くす私達は…
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