誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて13
.
『待ってよ!置いて行かないでよぉ』



『大丈夫!此所で待ってるから、転ばない様にゆっくり下りておいでよ』

私は階段の上の方から聞こえる泣きそうな女の子の声に向かって、そう大きな声で答えたのです

そしてその場に止まり、彼女の事を暫く待っていたのでしたが…



どの位の時間、私はその場で待っていたのでしょうか?



…十秒?



…二十秒?



『…』

階段を駆け下りるバタバタとした足音は聞こえるのですが、それはどう耳を澄ませて聞いていても下の方から…遥か階下の方角から聞こえて来る様子で、一人その場に止まった私は、言い様のない孤独と今迄に体験した事もない恐怖を味わっていたのでした



『どうしたの?早くおいでよ!』

その私の呼び掛けに反応する者は、最早誰もいませんでした



『…?』

私は薄暗い階段を、もう一度昇り始め様としたのです



その時でした!私を呼ぶ友人の声が聞こえたのは…



その声は遥か階下から、壁を反響しながら届いたのです



『おーぃ…何かあったのか…下で皆待ってるよぉ…』



次の瞬間、私は身を翻し階段を駆け下りたのです

その私の後ろ姿に…あの声が再び…

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あきゅろす。
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