誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて15
.
『なぁ…皆此所に居るよな…?』

彼はそう言いながら周りの友人達の顔を、一人一人確認する様に覗き込んだのです



勿論…私達は全員そこに居ました

だからそんなドアの閉まる音が、私達に聞こえる筈が無いのです



でも…聞こえたんです



今度は私だけではなく、此の場に揃った友人達にも…



それは聞こえたんです



そして何処にも必ず一人は居るタイプの友人が、もう一度様子を見に行こうと言い出したのです



此の発言には友人達も流石に即答を避け、隣り合わせた人と顔を見合わせていました

本来ならば…行かなかった筈なのです



けれども、群集心理と言うものは恐ろしいもので、個々では決して行なわない事でも、人数が揃うとしてしまうのです

そして此の時の私達がそうでした



例の彼が行こうぜと賛意を示した途端に、それまでぐずぐずと周りの意見を測り兼ねていた者達迄、さっきの音の元を探し出そうと声を荒げて言い出したのです



此の時私は気付くべきでした

ホテルの部屋は外から鍵を掛けると言うよりも、中から鍵を掛けるのがその第一の目的なのです

だから、私達の探索方法は、根本的に間違っていたのです

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