誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝12
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それから彼は、父親の書き残したノートを元に、スープの仕込みを始めたのです

そこに書かれていた方法を使う事によって、彼の作るスープは旨味を格段増し、深いコクとすっきりとした後味を持つ様になりました

そしてそのスープの味が評判となり、彼の店は息を吹き返したのです

けれども彼は不満でした、その方法で作ったスープでも彼の父親の味とは…やはり何処かが違っていたのです

ましてや、彼が昔一度だけ食べた事がある料理には、程遠い味だったのでした

だから彼が、その味を再現してみたいと思うのには、それ程の時間はかかりませんでした

例えそれが、人として絶対にやってはいけない事だとしても…





そして彼は、父親の書きつけに書かれていたある食材を使って、スープを作ったのです

その食材は、大陸ではそれ程珍しい物ではありませんでした

市場でも普通に売っているのです

けれども、今の日本では決して使われないモノだったのです…今の…日本では…

それでも、彼の目指す味にはなりませんでした

どうしても、脂の具合や薫りが違うのです

でも、彼にはたった一つだけ、思い当たるモノがあったのです

それは、禁断のモノでした…

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あきゅろす。
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