誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝13
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彼がそのモノの正体に気付いたのは、必然の成り行きだったのです

彼の父親が店を開いた頃の事を思い出せば…直ぐにわかる事でした…

もっとも…その習慣を持つ彼にとって…ではありますが…

けれども、その習慣が彼等の住む地方に根ざしたものなのか、彼等の一族だけの習慣なのかは、今となっては…よくわからないのでした





彼の父親が店を開いた頃、日本は戦争で疲弊しきっており、食糧を生産すべき農村も人手の多くを無くし、その食糧自給率は国を支える能力すら下回っていたのです

日本は戦勝国よりの食糧支援で、細々と命を繋いだのでした

そんな時代だからこそ、彼の父親が手に入れて来る食材は、GHQ絡みか闇の市から仕入れた物だと、彼は思っていたのです

けれども、今となって冷静に考えれば、そんな筈はありませんでした…

大陸から命からがら逃げて来た父親と自分達に、材料を買う余裕など…

そう考え付いた途端に、彼の脳裏に浮かぶ場面があったのです

それは、父親が一人の男に、こっそりとお金を渡していた所でした

その男は、終戦間際まで大陸内部に居たそうで、父親にこう言ったのです

『この味…覚えがあるぞ、アレを使ったな』

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