誰かに聞いた怖い話
・・・秘伝11
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次の瞬間、酔った彼は取り上げた分厚い本を、床に取り落としていたのだった



『何だ…これ?』

本を拾い上げた彼の瞳は、壊れた様に本からはみ出した、何やら文字や数字の書かれた紙の束に釘付けになっていた

その本は随分と変わった造りをしていた…

いや、普通の本を誰かに作り替えられていたのだ

その本は、前半分程のページは本来のままであったが、後半分のページは切り取られ替わりに紙の束と小さいノートが、器用に挟められていたのだった

その紙の束に書かれた走書きを読み進める内に、酒に酔い濁った彼の瞳は徐々に光を取り戻し…彼の顔には満面の笑みが溢れ始めていた



『親父!』

それは、彼が一番望んでいた物であった

そこに書かれていたのは、彼の父親が養父から受け継いだ大陸の料理の技の数々と、彼の父親が自分自身で編み出した食材の処理方法だった

そして、彼がどうしても再現する事が出来なかった、父親の料理の秘密の一端をも、大陸の言葉で詳細に書かれていたのである

彼は紙の束からノートに視線を移すと、ページを捲り始めました

そこには父親から息子へ、料理への心構えと伝授すべき技の数々が書かれていたのでした

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