眠れぬ夜 夕日 1 水平線に夕日が沈む瞬間を、波の音を聞きながらビーチに座って不動と2人で眺めていた。 辺りに人影はなく、世界に僕達2人だけになったような錯覚を覚える。 こんなに静かな時を不動と過ごせることができるなんて、なんだか不思議な気がする。 ほんの3ヶ月前までは話すことも、こうやって寄り添うこともない、まったくの他人だったのに。 「髪・・・乾いたようだな」 不動の長い指先が僕の髪の毛を弄りながら、呟いた。 つい先程、シャワーを浴びて水着から服に着替えたばかりの僕達は、髪の毛を自然乾燥させていたところだった。 「不動も乾いたの?」 僕は隣にいる不動を見て尋ねた。 「アァ」 夕日に照らされた不動の顔には、いつもの冷たいようなキツさはなく、穏やかな表情をしていて、それがなんだかとても美しいと感じた。 「・・・キレイだ」 心に思ったことをそのまま口に出して言ってしまっていた僕は、恥ずかしい発言をした自分に気付き、不動から顔を背けてしまった。 不動はそんな僕の様子には気付かなかったみたいで、それどころか勘違いしたようだった。 「そうだな、ここから見る夕日はとてもキレイで、ガキん頃から好きだったよ」 不動の落ち着いた話し方と照れたような表情に、胸がキュンってなった。 反則だ。 なんでこんなに可愛い話し方するんだ? 不動じゃないみたいだよ。 「鷺ノ宮、そろそろ帰ろうか」 「え?あ、うん。でもいいのか?」 「何が?」 「夕日。まだ完全に沈んでない」 不動は視線を少し前に向けた後で僕の方を見、フッと笑った。 「これ以上、人気の無い所でお前と2人でいたら、理性が効かなくなるからな」 「え・・・///」 「行こうぜ。帰り遅くなる」 不動は・・・。 不動は僕のこと、 大事に思ってくれている? 分からないよ。 だってさっきは、海の中で無理矢理射精を促したし。 でも口では挿れたいって言っていたけれど、しなかった。 「鷺ノ宮?」 不動は僕のこと好きだって言ってくれたけれど、未だに信じきれない僕がいることも事実。 不動は僕のどこが好きなんだろう? お手軽にsexできる相手として? それとも? [*前へ][次へ#] [戻る] |