眠れぬ夜
夕日 2
それとも本気で僕のことを?
「・・・みや、鷺ノ宮」
「え?」
しばらく自分の考えに耽っていたら、不動が僕を呼んでいたようだった。
「ボーッとしてたな、疲れたのか?」
不動が僕の前髪をサイドに流し、そのまま手を動かさずに置いていた。
その手が大きくて温かくて、気持ち良かったので僕は目を紡錘って不動に頭を預けた。
「・・・鷺ノ宮、眠いのか?」
フフ、良い声だなぁ。
こうやって目を閉じて不動の声を聞いていると、とても落ち着いて安心する。
「鷺ノ宮・・・」
あっ、不動の吐息を近くで感じる。
キス、されるのかな?
じっとして待っていると、不動の指先が僕の唇に触れ、それを型どって行く。
あぁ、くすぐったい。
思わず笑ってしまい瞼を開けると、目の前に不動の瞳があり、僕の瞳を静かに見ていた。
「ふどう・・・」
綺麗な黒曜石の瞳。
吸い込まれそうになるよ。
だけど僕がドキドキして息も出来ないでいるのに、不動の方は冷静に僕を見つめている。
なんか悔しいな。
そうしてお互いに見つめ合っていると、不動が先に口を開いた。
「鷺ノ宮、キスしていいか?」
僕は目を見開いた。
だって!
だって不動が頬を少し朱に染めて、うつ向き加減に言うんだ。
その可愛らしい仕草ったら、普段の不動からは誰も想像つかないだろう。
「鷺ノ宮、良いか?」
僕は不動の両頬に自分の手を持っていき、視線を合わせた。
そして腰を浮かして不動に顔を近付けた。
「聞かなくても・・・」
不動の唇にもう少しで触れる所で動作を止めて。
「不動なら構わないよ」
不動の目が少し見開かれ固まっていたので、僕は自分からキスをした。
あぁ!
どうしてなんだろう?
キスって凄く幸せな気分になる。
ただ唇と唇がくっついて、舌と舌とが絡み合い歯列をなぞるだけで、どうしてなの?
「ハァ、ハァ、アッン、ンンッ・・・」
長いキスを充分堪能した後で、不動は僕が心の奥底で求めていた言葉をくれた。
「今日は帰したくない」
身体中が火がともったように熱くなり、僕は頷いた。
「僕も帰りたくない」
僕達はお互いを求めていた。
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