眠れぬ夜
ビーチ 3
僕の身体に日焼け止めを塗り終ったところで不動が立ち上がった。
「鷺ノ宮、海に入ろうぜ。」
熱った砂浜を素足で歩いて行き、海の中に足を浸けると海水が冷たくて、とても気持ちが良かった。
そのまま浅瀬に立っていたら、不動が先に腰に浸かる所まで歩いていて、勢い良く泳ぎ出した。
「ヘェ、綺麗なフォームで泳ぐんだなぁ。カッコいい。」
力強いのに無駄な動きがなくて、水の流れに乗っている。
「ハァ、惚れ惚れするなぁ・・・///。」
不動をずっと見続けていたら、急に視界から消えた。
「不動?」
潜っているだけ、だよね?
でも・・・足が痙攣したとか?
かなり長い時間、上がって来ないので心配になった僕は、急いで不動が潜った所に向かった。
「不動、不動?」
嫌だ、嫌!
不動死なないで!
必死になって不動を捜していたら、腰に何かがまとわりついてきた。
「え?」
ザッバァーン!
海中から誰かが飛び出してきた・・・かと思ったら、水中に一緒に引き摺り込まれた。
『だ、誰?・・・く、苦しい・・・。』
いきなり引き込まれたせいで、空気を思い切り吸えずに海中に入ったために、直ぐに息が苦しくなり限界になってきた。
その時!
唇が何かに噛み付かれたように感じた。
思わず眼を見開くと目の前に・・・不動の瞳が現れた。
ビックリしたのと安堵と、今何が起きているのか呑み込めなかった僕は、放心してしまっていた。
そんな僕を見て不動は目を細めて笑っていた。
『あっ、舌が入ってくる・・・んっ、ん!』
それで分かった。
あ〜、今、不動にキスされてるんだ。
変な感じ。
体が浮いているからなのか、いつものキスとは違い、より自然体で不動を受け入れているような気がする。
ユラユラ揺れて、まるで幼子に戻ったような感覚・・・。
ずっと浸って居たかったけれど。
『ススゥ・・・!』
しまった!
海中にいることを忘れて、鼻から息を吸いこんだ。
鼻に水が入り苦しい!
ザッ!
「おい、鷺ノ宮!大丈夫か?」
「ケホッ、ゴホッ!」
うわっ、口の中が塩辛い。
「鷺ノ宮、苦しいか?」
不動が必死の形相で問いかけてくる。
「もう、もう大丈夫だよ、平気だから。」
不動が安心してくれるように笑顔を見せて言った。
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