夢のリア充 ラブラブ【Day】
綺麗に整頓された部屋。
なんとコトミの部屋である。
しかもなんと机に向かっているコトミ。
いや、教科書の上にスナック菓子が置かれていることから、結局勉強は放棄したのだろう。
「ktkr〜♪
wktk〜♪
ジンジン感じる
ビ・ビ・ビ・BEAM〜♪」
イヤホンをして、音楽鑑賞兼カラオケ中だった。
今日は彼が我が家にやってくる日。
タカトシと手分けして完璧に掃除したので、コトミとしては万全なる体制で彼を迎えることができる。
「コトミー、入るぞー。」
「目指せリア充!
各駅停車を追い越すように〜♪」
「…。」
ガチャっ
「コトミ。」
「ハネムーンは…ふぉーわっ!?
びっくりしたー!」
「ハルヤ来たぞ。
つか、1時間で2問しか解いてないじゃん。」
「あふん。」
コトミに補習フラグが立った。
タカトシの部屋に行くと、ハルヤはベッドの上でうずくまっていた。
何かを手に取り、それを凝視しているようだが…。
「コトミン…。
タカがエロ本持ってないわけが分かった。」
「な、なんだって!?」
「この黒くて長い髪!
これは紛れもなく会長の髪だろう!
そしてこっちは七条先輩、これはスズちゃん!」
「まさか…!」
ベッドの上に落ちていた髪。
災いは、意外な所から降りかかった。
「ロリロリ、S、ボイン。
気分で選べる3タイプかおい!?」
「俺かなりひでぇヤツになってるぞ!?」
スズのナイナイオッパイをチュパチュパ、シノの美脚をナメナメ、アリアのダイナマイトオッパイをペロペロ。
ハルヤの頭に浮かぶエロんエロんな光景。
タカトシは既に、紙面や画面に映された平べったいエロから身をひき、生の温かいリアルを感じ取っていたのか。
恋愛とは無縁な朴念仁副会長だと思っていたことを、後悔するハルヤであった。
「スズちゃんのパイ☆パイ!」
「ブッ飛ばされるよ?」
彼にとってπ乙はない方がいいのだ。
無い胸ブラ要らず、と言った所だろうか。
一方、爆走しているハルヤをよそに、コトミは少し胸を痛めた。
成長期ではない。
むしろ、成長してしまっているが故の悩みを抱えているのだ。
コトミが持つ魅惑の巨乳は、もうどうにもならない。
自分の胸は何故こんなにも成長を遂げてしまったのだろうかと、ため息をつくこともあった。
本来なら巨乳で男を落とせるはずが、好きになった人に限って極限の貧乳好き。
世の中はどうして私にこんな運命を授けるのだろうか。
誰がなんのために私を貶め、残酷な代物を付けさせたのだろうか。
そうやって時々、ぐっと涙を堪えて太陽を見つめていたのである。
かなり大げさに。
「さてと。
じゃあ、俺ちょっと行ってくるわ。」
「あぁ、分かった。
まぁドンマイ。」
ハルヤの爆走を食い止めたタカトシは、突然外出の準備を始めた。
「タカ兄?
どこ行くの?」
「昨日、俺が生徒会で壊したヤツがあって、それがないと月曜大変らしいんだ。
だから、急遽買い出しに行くことになって…。」
「全くもう。
タカ兄はおっちょこちょいなんだから。」
言い返せないタカトシは、準備を終えて2人に背を向ける。
そして、部屋のドアノブを握ると、振り替えって声をかけた。
「まぁ、そんなわけで、しばらく2人で遊んでて。
1時間ちょいくらいで終わると思うから。」
「はいよー。」
返事をするハルヤに軽く会釈をすると、タカトシは出掛けていった。
(よーし!
タカ兄がマヌケで良かった!)
コトミとしては、距離を縮める絶好のチャンス。
この機会を逃さずにいられるか。
不確かな愛を持ったまま、あやふやにふらふらと進んでいくコトミの心。
それに気づくのは兄、タカトシだけ。
しかし、暴走を止められる唯一の彼は今、いなくなった。
これが、彼女の張り切りをどんな方向に向かわせるのだろうか。
それは、コトミのみぞ知る。
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