3バカトリオ
ハルヤは、コトミの兄、タカトシの友人である。
彼は、かなり遊んでいた。
と言っても、悪い意味ではなく、趣味が広くて深いと言うこと。
良い遊び人の彼がする話の面白味は、他の人にはない独特なものだった。
興味のない分野の話でも、面白く感じる。
そんな話ができる、珍しい男子高校生だった。
毎日のように違う話をして、そして、放課後は仲間と色々なゲームをする。
週末には、でかけるなり家にこもるなり、フリーダムな生活を送っているらしい。
果たして正しい学園生活なのかは分からないが、少なくともコトミにはそれが眩しく映ったのだった。
「いや〜、失敗した!
ドリアに塩振りすぎてさぁ。
口内炎上、と言うか、塩上だったよ。
塩だけに。」
「ダジャレが分かりにくい!」
「さすがタカ君!
ツッコみ所分かってるぅ〜。」
学校で時たま見る3人の姿。
タカトシと、ケンジと、そしてハルヤだ。
昼休み、生徒会の活動がない日は、この3人でしゃべることが多くなった。
「タカ兄!
ハルヤ!」
「お、コトミン。」
彼女をコトミンと呼ぶ彼。
彼が魚見とコトミをコンビ化し、ウオミン&コトミンとして成立させた時についた愛称だ。
「そうそう。
今度、コトミン家にお邪魔するな。
タカのエロ本探っといて。」
「お任せくださいっ!」
ハルヤは、コトミが思春期であることを知っている。
なので、男が女に下ネタを放つと言うセクハラ的展開がまま見られた。
さて、元気よく任務を引き受けたコトミに対してタカトシは、持ってないなどと答えて抵抗した。
そのため、彼にハルヤとケンジが噛みついた。
「え、男なら最低3冊はあるだろぉ〜?
行け、ケンちゃん!」
「あぁ。
持ってないとか、ただのカッコつけ発言だろう。」
おかしい。
たった一言だけなのに、何故かケンジが不憫だ。
「じゃあタカ兄。
二次萌え系がいい?
姉萌え系?
それとも、妹萌え系?」
「仕込む気満々だな。」
世間はクリスマスムードに包まれ、人々の特別な思いがせわしなく行き交っている。
その中で、コトミは彼を探した。
彼に憧れる気持ちが恋愛感情へと発展し、今は立派な片思い人である。
しかし、それが真かは分からない。
まだまだ思春期の高校生で、恋愛も未発達。
恋心を抱いたのかどうかを知る術も持っていなかった。
そんな彼女ではあるが、少なくとも、彼には特別な感情を抱いていることは間違いない。
「あ、タカ兄!
そう言えば、愛しの会長様がお呼びですよ?」
「変な言い方するな。
誤解招くから。」
コトミはニヤニヤしながら、タカトシの袖を引っ張った。
「いってら。
今日もリア充ご苦労様ですぅ!」
「私もスズ先輩に用あるからついてくー。」
ハルヤのひやかしに不快な顔で答え、コトミを連れてこの場を去るタカトシ。
しかし、コトミは何かを思い出すと、そのタカトシに待ったをかけてとんぼ返りした。
そして――
「せいっ!」
ドスッ
「いったぁぁぁ!?」
「!?」
ケンジは、コトミに蹴られた。
彼が蹴られねばならなかった理由は、よく分からない。
さて、ケンジが蹴られた後、津田兄妹は生徒会室へ足を運んだ。
「よかったな。」
「当然!
闇の支配者が授けた私の右足から繰り出す蹴りは…。」
「ハイハイ以下略。
そしてそのことじゃない。」
「何?」
「ハルヤ、今度来るじゃん。」
「あぁ…。
うん。」
タカトシは、コトミ唯一の理解者だった。
いや、むしろ他の人には話してない。
理由は多々あるが、最大の理由はあやふやな恋愛感情にあるのかもしれない。
それでもタカトシに話せたのは、恋愛に疎いことが分かりきっている朴念仁の鈍感ダメ兄貴だったからである。
「タカ兄も早くいい人選びなよ。」
「選ぶ?
いや、探すだろ?」
「はぁ…。」
探さずとも沢山いるだろうに。
もうタカトシに恋愛は無理なのではないか、と思う妹であった。
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