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ハニーキャット
14

「どうかした?」


恥ずかしさを堪えながらハルさんの目を真っ直ぐに見つめる。

ちゃんと言わなくちゃ…

そして軽く息を吸って口を開く。


「ぇ…と、ありがとございました!」

「は?……ど、ういたしまして?」


一瞬キョトンとしたハルさんを見てもしかして変なこと言ったのかと不安になる。
だが、すぐに決まりの返事が返ってきて胸を撫で下ろす。

よかった。ちゃんと言えてた。

ホッと張っていた軽い緊張感が解けていた所に想いもしない言葉を耳にする。


「礼はイイとして…君みたいな子は狙われやすいから気をつけなきゃダメだよ」

「え…」


突然の思いもしない言葉にただ瞬きを繰り返す。
ハルさんはそんなボクを知ってか知らずか続けて口が動く。


「簡単に人を信じてホイホイ笑顔でついていったりしちゃ、ぜっったいにダメだから!それに、ここの奴等って野蛮なのが多いしね」


真剣な表情と力強い声質に圧倒される。
それに何処かで聞いたことがあるようなセリフに違和感を覚えた。

どこだっけ…あ猫田くんにだ。
というか、さっきもだけどボクってそんなに危なっかしいのかな。
だけど、皆が思ってる程そんなに子どもじゃないんだよ。
今回はたまたまだったし、それに心配しなくてもハルさんみたいな優しい人が助けてくれたんだよ。

そんな心配しなくても大丈夫と完全にハルさんの存在に安心しきって油断した返事を返してしまう。


「はい…でも、ハルさんみたいな優しい人も居るからきっと大丈夫…です」


本心からそう思いふにゃんと顔の筋肉を緩めながらそう応える。
するとハルさんからスッと表情が消えたと思うと…


「…ゴメンね」

「え…?」


よく聞こえない声に疑問を浮かべていると、ボクの頬に手を滑るように触れられる。
頬から伝わる熱にどぎまぎしてしまう。

な、何だろう?
何かほっぺについてたとか?それにしてはずっと触ったまんまだし。


ワケも分からない状況と、唐突に感じたハルさんの手の感触に体温のせいか緊張を誘われる。


「あ、の…」

「…だから簡単に笑顔を向けちゃダメだよ?じゃないと……」


戸惑っているボクをお構いなしに顔を近づけてきた。
いきなりのことに反射的に目を固く瞑ってしまう。
それにより視界が機能しなくなり不意に恐怖心に襲われる。

なんで顔を近づけるの?なんで触るの?
一体なにをする気なの?

理解できない行動に頭の中で巡るなんでの嵐。
そして無意識に恐怖心からか体が震え出してしまう。
すると急に添えらていた手に力が入り上を向かされ、驚きのあまりまぶたを上げてしまった。
その瞬間…

チュッ…

とリップ音が耳に届き唇付近に柔らかな感触を感じた。


「ぁ…」

「…じゃないと、俺みたいな悪いオオカミに食べられちゃうよ。分かった?」


舌嘗めずり、イタズラめいた笑顔を見せられ、停止していた脳が急速に回転し始める。

今キスされ…た?うんキス…キス!?

そう理解した瞬間ボンッと音をたてるんじゃないかと思うくらい一気に顔が熱くなる。そして無意識に首を激しく縦に振っていた。

ドッドッと速まる鼓動に全て体の動力を使われているような感じで頭の中が上手くまとまらない。

キス…なんでキス?
だって日本のキスはそういう愛情表現だってママが言ってた。
え?じゃあハルさんはボクを…?
でも、今出会ったばかりなのに?
いやボクも会ったばかりのハルさんを好きだとは思うけど。
でもでも、そういう好きかは分からないし。
それにハルさんの言葉からだとただの忠告みたいな気もする。
でもでもでも!そんなことでキスだなんて…。

一人で混乱している最中ハルさんを見ても平然としているものだから更に混乱が増す。
そんなことがあってから、数十分後に混乱とドキドキを抑えられないままハルさんに見送られて教室に向かう。

だけど、どうやって戻ったかはあまり覚えていなく教室についてすぐにギョッとした表情の猫田くんが駆けよってきた。
そして「今までどこにいってたのか」「何をしていたのか」など聞かれたが今のボクに上手く説明できる訳もなく。
ボクの様子を見て猫田くんは何かを察したように早退するように促してきた。

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