[携帯モード] [URL送信]

ハニーキャット
13
シンとした空間に鼻をすする音だけが響く。

うぅ…思わず泣いたり抱きついたり、恥ずかしい姿を見せてしまった。
怖くて混乱していたとはいえ、さすがに見ず知らずの人にあんなことされて困ったり引かれてないかな。


自分の醜態に恥ずかしさを覚えながら、引かれていないかと表情をうかがうために目線を上げる。
すると…


「え…と」

「あ、す…すいません!」


目が合い思わず顔が熱くなると同時に恥ずかしさから身を後退させる。

ひぃ〜…まさかこっち見るなんて思わなかった。
どうしよう変に思われてないかな。
でも、また目が合って同じ行動しちゃいそうだし。

目が合ったことに動揺しどうしたらと固まってしまう。


「あー…もう大丈夫?」


ごちゃごちゃと考えている僕に静かに聞いてきて、反応しなくてはと思い咄嗟に首を縦に振った。


「そりゃ良かった」

僕の返事に微笑みを見せながら言われ更に顔に熱が集まる気がした。

やっぱりこの人の笑った顔好きだ安心する。
それに助けてくれたし、シャツも貸してくれて優しいし…あ、ちゃんとお礼言ってないよね。言わなきゃ。
えーと……そういえば名前は?

名前を知らないことに今さらながら気づき、意識する間もなく口が動いていた。


「ぁ…の……」

「ん?なに?」


思ったより声量が出ずに焦ったが、ちゃんと相手の耳に届いていてホッとする。


「ぁ…お名前、を…」

「え、名前…って俺の?」


そう聞き返されコクンコクンと数回、頭を縦に振った。
名前を聞くだけなのに緊張して上手く声が出そうになかったので動きで返事をする。

名前聞いちゃっても大丈夫だよね?迷惑とかじゃないよね。
彼の様子をうかがいながら、そわそわ反応を待つ。


「んー…ハル」

「ハル、さん…?」

「そっ、ココではそれで通ってる」


彼の言葉に小首を傾げるが、それよりも知れた嬉しさが勝る。
忘れない為に小さな声でハルさんハルさんと名前を復唱する。
端から見たら奇妙な行動だろうが、今のボクにはそんなことを考える余裕はない。

ハルさんっていうのか…温かそうなキレイな名前。よく似合っている。

そんなことを思いながら頭に刻み込んだ名前を意を決して口にする。


「ハルさん…!」


顔を上げてハルさんを見ると驚いた表情をしていた。

[*前へ][次へ#]

13/26ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!