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情報屋、やってます。
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目の前の櫻井弘人が呆れ顔でため息を吐いた。

「………とーやくんが最っ低なのは前々から噂で聞いてたし、今更驚きもしないけどね…今の話のどこが"dog"を裏切らないって証明になるのさ」

「今のとこ、ここらへんのチームで俺にとって魅力的なのは"dog"だけや。そもそも大きいチームは"dog"と"bat"の2つだけやしな」

昔に比べたらだいぶ減った。
しかも大きいと言っても相対的な話で、"bat"のメンバーはせいぜい20人かそこら。

俺が高1の時は、メンバー50人以上のチームが5、6個あって、割りと勢力も均衡してた。
今はそれが"dog"だけで、ほとんど抗争してないとはいえ、実質このあたりの高校生チーム1位。

「"bat"に移りたくなる可能性もなくはないでしょ」

「それはないな。俺が"dog"に入りたいのは、その"bat"を潰したいからや」

「潰したい…?」

「俺あそこのチーム目障りやしせこい奴しかおらんし、大っ嫌いやねん」

「だから、次の"bat"の標的になりそうな俺らを利用して潰そうって?」

「……そういうこと」

相田正行はなるほどと呟きながら頷いている。が、

「そんな簡単に利用されてやるわけないだろ」

櫻井弘人がそうバッサリ切り捨てた瞬間、ぴたりと動きを止めてから、今度は首を傾げだした。
なるほどとか言っときながら絶対わかってなかったやろ。

「もし俺らを利用して"bat"を潰したとして、その後とーやくんの標的が"dog"に移る可能性だって十分ある」

「……」

俯いて考え込むふりをする。

櫻井弘人は頭がいい。
先に潜む危険もちゃんと考慮してる。

だからこそ読みやすいねん。

考え付く危険なんてだいたい1個か2個程度。
俺はその数少ない危険への打開策を考えれば済む話。

櫻井弘人は恐らく「俺を"dog"に入れた後」の危険に気を取られて、「今」の危険に気づけてへん。

まあその危険なんてのは、実際"dog"の害にはなり得ないけどな。

俺、ほんまに"dog"つぶす気あれへんし。今は。

たっぷり時間をおいてから、ふー、とため息をつく。

「ほな、"dog"に入れてもらうのは、"bat"が潰れるまででえーわ」

「…」

「"bat"を潰した後に俺が今度は"dog"を潰したがるのを怖がってるんやろ?だったら、その前に俺が"dog"を抜ければ問題ないんとちゃうか」

「……それは、あくまでとーやくんが嘘をつかずに"bat"をまず潰したいと思ってるっていうのが前提じゃん。そもそもが嘘で"dog"を初めから潰したがってるんだって可能性が捨てきれない内は、やっぱり入れるわけにはいかない」

「疑り深いなぁ…」

こんな疑いも、予想の範囲内やけどな。

「毒盛られて殺されかけたやつらと、それをほとんど何の見返りもなく助けてくれたやつら、どっちを潰したいかなんて、考えなくても明らかやで」

「…………」

今度は櫻井弘人が考え込む番。
考えろ考えろ。

考えるほど、俺を入れるって選択肢しかなくなるやろ?

「"bat"の奇襲情報、俺ならすぐ仕入れたるよ」

「…奇襲されても勝つ自信があるって言われたら?」

「……ふぅん?」

挑発的に疑問符で返してやれば、櫻井弘人の眉が不機嫌そうに寄った。

「なにさ」



「一回潰されてるのに、その自信はどっからくるんやろなぁ思って」



今度は機嫌が悪いじゃ済まされへんような、人を射殺すような目つきに変わった。

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