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情報屋、やってます。
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目つきが変わったのは櫻井弘人だけちゃう。
倉庫の中全体がざわつきだした。
おそらく遠くにいたメンバーは俺の発言をうまく聞き取れず、前の方のメンバーに内容を聞いとるんやろう。
ざわつきはだんだん大きくなっていく。

実は、高校1年のときの相田正行と櫻井弘人は"dog"とは別のチームに所属していた。
チーム名は"bird"と言って、当時はこのあたりの頂点に君臨していた。

けど、"bird"はあることをきっかけに、あっけなく玉座から引きずりおろされた。
それが、副総長含む幹部の裏切りと"bat"の奇襲。

"bird"の解散から約2ヶ月後、相田正行と櫻井弘人を中心にほぼ元"bird"メンバーで新しく結成されたチームは、それを教訓に裏切り行為の禁止を大原則とした。
総長を主に見立て、主に絶対の忠誠を誓うという意味を込めて"dog"と名付けたらしい。
その総長が一番犬っぽいけどな。
それは置いといて、こんな背景からこのチーム、裏切りについてはいろいろ策を講じてるみたいや。
けど、奇襲についてはほぼノータッチと言ってもええ。

なぜかといえば、奇襲は防ぎようがないから。
情報をつかむことはできても、奇襲を思いとどまらせることは不可能に近い。
強制的に阻止するには、奇襲される前に奇襲を仕掛けるしかない。
ただ、そもそも奇襲の情報をつかめるのは違法手段を使える情報屋くらいで、その数はチームの数に比べて圧倒的に少ないのが現状。
せやからどこのチームもその数少ない情報屋をお抱えにしたがる。

そして"dog"は裏切りと奇襲によるチームの解散を何よりも恐れてる。
奇襲への対策に関しては、櫻井弘人もずっと頭を悩ましてきたはずや。
それを何とかするための貴重な道具が目の前に転がってんねんぞ。

はよ拾ってしまえ。

この話題はきっとこいつらにとって地雷や。
しかもむっかつく言い方してしもたし。
これに至っては俺の性格やからしゃーない。

せやけど無理矢理踏んづけて爆発させるくらいやないと、こいつは賢いから重い腰を上げへんやろ。

こっちかてそれなりにリスク背負ってんねん。
お前らも多少のリスクを負え。

俺のためにな。



櫻井弘人が俯いて息をゆっくり吐いた。




「…………………わかった」




その言葉を待ってたで。

思わず笑みが溢れた。


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あきゅろす。
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