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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第13話 『騙し合いは、より狡猾なやつが勝つ』(加筆修正版)



「・・・・・・あー、やる気出ない」

「アンタ、冒頭第一発目から何言ってんのっ!?」



早速だけど、僕が前回はやてに頼まれた事の一つはこれ。目の前に居るツンデレガンナーとの模擬戦。

だけど出来る事なら、戦いたくなかった。だって、勝率絶対低いしさ。負けるの嫌だもん。



「あいにくだけど、私はアンタとやりたかったわよ? 実力も見たかったしね。
・・・・・・最初に言っとくけど、戒め無しで来なさい。全力で潰しにいくから」

「嫌だー! 僕はダルいんだー!! お願いだから休ませてー!? てゆうか、ティアナは最強だから僕勝てないよー!!」

「だからやる気出しなさいよっ! てーか、普通に寝転がるなっ!!」





ここは、皆さんご存知六課所有の陸戦演習スペース。

今回は森林地帯をシミュレートしている。当然僕達も、森の中。

僕とティアナはバリアジャケット装着状態でここに立っている。



正直、非常に辛い。あの夢が、ある意味現実となって襲ってきたのだから。夢の中の僕。人を疑うのはいけないことだよ?

つーか、お前が決闘やらブラックメールやら言うからこんな状況になってんだよっ! どうしてくれんだこれっ!!

・・・・・・とは言っても、決まってしまったのだから仕方ない。ちなみに、今回はかなり本気でやる。



確かめておきたいたい事もあるし(Notティアナの気持ち)、気持ちの上では実戦と変わりはない。

理由は至って簡単。僕の事情は抜きにして、目の前の相手が強いからだ。

スバル、エリオ、キャロ、そしてティアナ。この四人の中で僕が一番強いと感じるのは、ティアナだよ。





「・・・・・・実力を買ってくれているのは、嬉しいんだけどさ」



若干苦笑いなのは、どうしてだろう。うーん、謎だ。



「私は射撃と幻術しか使えない凡人よ? AAAクラスの試験を受けられるアンタなら、軽く捻れるでしょ」



・・・・・・強さってのが、例えばランクや魔導師やデバイスの性能。

そして手持ちの技能の目新しさだけで決まるならそうなんだろうけどね。



「あー、そういやそうだね。あははは、ティアナの雑魚ー。オタんこナスー。そしてツナー」

「いきなり調子に乗るなっ! てゆうか、普通に最後意味分かんないしっ!!」

「いや、ティアナはツナみたいに脂っぽいねって」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





でも、そうじゃないし。つか、それなら僕は最初の時、スバルには勝ってないでしょ。

総合能力的には、エクセリオン使ってた向こうが上だったんだから。

確かにティアナは他の三人のように、限定的でも空戦能力があるわけではない。



スバルのような近接戦闘での爆発力や、エクセリオンという切り札があるわけでもない。

エリオのような、強烈なスピードがあるわけでもなんでもない。

キャロのように竜召喚や支援魔法によるブーストが出来るわけでもない。



ただし、それは当たり前のことだ。他の三人にも同じ事が言える。

三人は、ティアナのような状況に応じた的確かつ強力な射撃は使えない。

こちらのセンサーをあっさりと誤魔化せる、凶悪な幻影を発生させることなど、まず出来ない。



手持ちの技能の目新しさや派手さだけを見るなら、ティアナは確かに凡人。でも、そうじゃない。

目新しかろうがそうじゃなかろうが、その事項を徹底的に鍛え上げる。

それが出来た時、それは、あらゆる物を打ち砕く杭となる。訓練を見ていてそれを強く実感した。



ティアナ・ランスターという魔導師が持っている、射撃と幻術という杭。

それは・・・・・・充分に僕を撃ちぬくだけの力を備えている。

なお、モノローグと言ってる事が全然噛みあってないのは、気のせいだ。



そんな感じで僕達は構え合う。さて、楽しくなるといいなぁ。





『それじゃあ、二人ともいいね?』



聞こえるのは、なのはの声。いよいよ、試合開始らしい。



『・・・・・・時間無制限の一本勝負っ! 初めっ!!』





そして、ティアナは開始した途端に即攻撃。弾丸を乱射してきた。僕はそれを左に走って避けて・・・・・・距離を取る。

普通なら、ここは直進する所。でも、僕は敢えて逃げる。そう、逃げるのだ。だって、そこに逃げ道があるから。

そんなことを考えていると、背後から弾丸が三つ。木の合間をすり抜けて飛んで来た。



振り返って、その弾丸に向かってアルトを振るって斬り裂いていく。





「・・・・・・まずは、じわじわと攻撃ってとこだよね?」

≪ですね≫





さて、どうする? 突っ込んでも、こっちが疲れるだけだよね。絶対に幻影と実体の混合でやってくるし。

こうなると、まともにやったら僕は負ける。いや、大げさじゃなくてよ。さっきも言ったけど、ティアナは強いもん。

まず、幻影を斬るっていうのは、正直むちゃくちゃ疲れるの。本物だと思ったのに、そうじゃなかった時の徒労感。



あれはキツイ。アレは、ある意味精神攻撃だよ。

それに相手が出てきても、常に本物か幻影かの二択を迫られる。

この精神的疲労は、かなりキツイ。正直、キレてもいいくらい。





≪7時方向から≫



身体を動かし、飛んできた弾丸に向かって飛び込む。そして、すれ違いざまに袈裟と逆袈裟の連撃。

ただ繰り返し、僕はティアナのオレンジ色の弾丸を斬り裂く。そして、後方で爆発。



≪・・・・・・私より察知が速いって、どういう事ですか≫

「恭也さんと美由希さんの飛針や鋼糸に比べたら、まだ楽だもの。
あと、なのはの魔王モードの誘導弾とかさ」

≪それもそうですね≫



木の間を器用にすり抜けながら、またもや飛んで来た弾丸は、楽々対処。

あいにく、地上戦は・・・・・・特にこういう場は、僕の得意なシチュ。



≪ティアナさんの位置、掴みました。突撃しますか?≫

「いや。突撃しても疲れるだけだしさ、ここは逃げようか」

≪ですね≫



次々と襲いくる弾丸を斬り払いながら、アルトが掴んだティアナの位置とは逆方向に逃げる。

なんのためかって? そんなの決まっている。



≪それと背中やお尻や頭の方に、悪魔っぽい装飾品が見えますよ?≫

「なるほど、つまり今流行の小悪魔な雰囲気って事だね。分かります」

≪幻覚ですよ、それは≫










そう、ずっと考えていた、昨日からずっとだ。

それで結論が出た。いや、他にやりようがなかったんだけど。

とにかく、今日の朝、朝食のウィンナーをほうばっている時に。





神は日ごろの行いの素晴らしい僕に、天啓をもたらした。

結論から言うと、こっちがイライラしながら突撃する必要などないのだ。

イライラするお役目は、全てあのツンデレガンナーにお任せしよう。





そうすれば僕は勝つ。それは何故か? 戦いなんてのは、強い方が勝つんじゃないのよ。

何時だって、どんな時だって、ノリのいい方が勝つ。

こっちのペースに乗せて、最初からクライマックスになればいいのよ。





スバルの時みたいに、前振りなどしないで、徹底的にね。

そんなわけなので、ティアナにはこれから思う存分イライラしてもらうことにする。

・・・・・・ククククク、楽しみだね。いやぁ、きっと今日は楽しい日になるよ。





だって久々の模擬戦で、ティアナでストレス解消出来るんだもの。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第13話 『騙しあいは、より狡猾なやつが勝つ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・逃げた? どういうつもりよアイツ。そんなことしても、なんにもならないってのに。

私は木々の間に身を隠しながら、誘導弾を撃ってアイツを牽制していた。

正直、これだけで仕留められるとは思ってないけど、それでも疲弊はするはず。





性格的に、分かりにくいのは嫌いそうだもの。『さぁちあんどですとろいは素晴らしい』とか言ってさ。

悪いけど、いくら逃げても無駄よ?例え私が見失っても、クロスミラージュがアンタを逃がさない。

アンタの魔力反応をしっかり捕まえて、それを追えば・・・・・・楽勝よ。










≪Sir、相手の魔力反応、ロストしました≫

「え?」



いきなり、クロスミラージュがとんでもない事を言い出した。



「魔力反応をロストって・・・・・・どういうことっ!?」

≪魔力レベルを、最低限にまで抑え込んでいるのでしょう≫

「こちらのサーチを振り切るためってことよね?」

≪恐らくは≫





・・・・・・ナメた真似してくれるわね。そんな事してくるってことは、不意打ち狙いってとこ?

私が飛べないってのと、この見通しの悪い地形を活用して、忍び寄って一気に斬るってとこかしら?

妥当な作戦ね。妥当すぎて笑っちゃうくらい。ふん、それならいいわ。



アルトアイゼンにはもうこちらの位置を掴まれてるはずだし、すぐに来るでしょ。



来たら遠慮なく、撃ち落してあげるから。私の方が射程長いんだし、来る前に落としてやる。





≪・・・・・・Sir、10分経過しました≫



言われなくても分かってる。それでも私は、木で背中を守りつつ警戒を緩めない。



≪・・・・・・Sir、20分経過しました≫



分かっている。分かっているけど・・・・・・それでも警戒は、緩めない。



≪・・・・・・Sir、30分です≫



うん、分かってる。さすがに分かってる。くそ、持久戦に持ち込むつもり?

こっちの札がカウンター寄りだって分かってるから・・・・・・中々に手堅い。



≪・・・・・・Sir、1時間経過しましたが≫

「クロスミラージュ」

≪はい≫

「正直に答えて。アイツ、攻めてくると思う?」



胸の中に感じていた苛立ちを抑えて、私は聞いた。そして、即答された。



≪ありえないでしょう。今までの彼の言動等を鑑みても、絶対に来ません≫

「そうよね。アイツ、人に笑いながら嫌がらせ出来るタイプよね」

≪その通りです≫



私は、立ち上がる。・・・・・・とにかく、ちょっと思考を変えよう。このままじゃ夕方になる。

まずは気配を消しながら、敵の位置を捜索よね。捜索して、狙い撃つ。



「クロスミラージュ、サーチお願い」

≪はい≫

『ティアナはーツナが大好きー♪ ツナツナ・ランスター♪』



動き出そうとした瞬間、調子外れな歌が聴こえてきた。なぜか、四方八方から。



『スリーサイズはー♪ 上から(うったわれるーものー)ー♪ だけど、将来は上からオール100ー♪』



とりあえず、クロスミラージュを握っている両手の力を抜くところから始めよう。普通に、普通に・・・・・・グリップギシギシ言ってるし。



『その理由はーツナ缶の油が大好きだからー♪』

「・・・・・・好きじゃないわよ、このバカがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










どうしてコイツが私のスリーサイズを知ってんのよっ! しかもすっごいぴったりっ!!





そしてこんな大きな声でうたってバラすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! アイツ、マジで一体何してるっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪あなた、よくティアナさんのスリーサイズなんて知ってましたね≫

「え、適当だけど」

≪でしょうね。知ってました≫



現在僕が使ってる術は、空気の振動を拡大して声を大きくする魔法。

もっと言うと、魔法で目に見えないスピーカーを作ってるの。スレイヤーズでもある魔法だね。



≪・・・・・・来ましたよ≫

「来たね。こっちに大量に来てるし」





僕のやったことは、二つだけ。一つはジャケットを維持できるギリギリな所まで、自分の魔力を抑え込む。

そして二つ目は、少しのんびりしてティアナをイライラさせること。

これだけ魔力を抑えれば、それ頼みで位置をサーチっていうのはかなり難しいはず。



あれですよ。身を隠すは林の如くってね。それに、ティアナは空を飛べない。

魔力弾も、僕とアルトだったら魔力無しでも問題なく斬り裂ける。

正直、バリアジャケットも解除しちゃっていいくらいなのだ。・・・・・・痛いの嫌だから、やんないだけで。



何より、僕はどっかのスプリガンみたいな真似は、基本的に少ししか出来ないのよ。





「数は、全部で20ってとこかな」

≪そうですね≫

「基本、全部同じ方向からだね」





屋外なんだしエリアを飛び出して、海を経由して背後に一発とか入れればいいのに。

・・・・・・律儀と言うかなんというか。だから、簡単に対処されちゃうんだから。

僕は、弾丸の来るほうへと走り出した。それほど時間を置かずに、目の前には大量の弾丸。



それを確認するより前に、僕の左手の平には魔力スフィアが出来上がっている。





「クレイモア」

≪ファイア≫





手の平を前にをかざすと青い魔力スフィアが小型の散弾へと変わる。

それらは、一定範囲を埋め尽くすようにして飛び散る。

それによって、オレンジ色の誘導弾の大半は撃墜。



・・・・・・クレイモア。僕が魔導師成り立てのころから使っている瞬間掃射魔法である。

形成した魔力スフィアを、瞬間的に小型の散弾へと分散掃射する魔法。

瞬間的にしっかりと圧縮された上で掃射される散弾は、立ちはだかる全てのものを撃ち貫く。



僕とアルトの使用する魔法の中で、一番最大火力効率の高い魔法。

ただ、散弾の分散範囲の関係で、どうしても射程が短い。

攻撃以外の役割は、掃射による多数の魔力弾の撃墜かな。いい感じで潰してくれるのだ。



とにかく散弾は、あの凶悪ガンナーの誘導弾を撃ち抜く。



木の陰に隠れていたことによって、クレイモアの範囲を逃れた数発も、全て僕の手で斬り払う。





「・・・・・・甘いっ!!」





背後に迫ってた一発の弾丸を時計回りに振り向き、横一文字に斬る。

見事に真っ二つになったかと思うと、目の前で爆散する弾丸。

その弾道の狙い先は、僕の後頭部。恐らく、スタンとかその辺りの属性持ち。



・・・・・・最初の20発は囮。今の一発を隠れるようにして誘導。

そうして後頭部に直撃させてノックアウト。やることエグイね。

ま、一体多数は僕の得意な状況。それは、弾丸だろうが変わらない。



そんな僕に対して、こんな手が通用するとは思わないほうがいいね。





≪さて、どうします? まだあの歌をうたいますか?≫

「うーん、さすがに怒られそうだからやめとく」



なお、ティアナにじゃない。・・・・・・まだ今まで通りに観戦している、あの連中にだよ。



「てーか、ちょっと退屈しちゃうもの。・・・・・・派手にやろうか。色々ストレス解消も込みでさ」

≪了解しました。探索はどうします?≫

「大丈夫」



僕は言いながら振り返り、5時の方向に目を向ける。



「『魔導師は、魔法なければ、ただの人』って良く言ったもんだよね」



これは、僕が作った俳句。このウィットに富んだ所が、色んな人に大好評なのよ。



≪知ってます? 俳句って季語が無くちゃいけないんですよ≫

「知ってるけど知らない。・・・・・・いくら魔法で気配を消してても、殺気や敵意は丸出し。
さっきからズーっとこっち見てる。閉鎖空間ならまだいいけど、屋外じゃあアウトコースだよ」



距離は結構遠い。でも、それでも感じる。あの歌がかなり効いてるのかも。

てゆうか、アレだよね。普通にツナがダメなのかも。よし、ツナ攻めで行こう。



≪それじゃあ≫

「うん。前進開始っと」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「クロスミラージュ、アイツさっきこっち見てなかった?」

≪見ていました。ただ方向を見ていただけではなく・・・・・・Sirを≫

「ちょっとちょっと、何よそれ。特にサーチとかされたわけじゃないんでしょ?」

≪全くありませんでした≫





とにかく・・・・・・やっと突っ込んできたわね、そうじゃなくっちゃ。

てか、私こういうの多いなぁ。待ち受けて、幻術で振り回してカウンターって。

仕方ないか。私は、アイツのクレイモアやスバルみたいに一撃必殺の技なんてないし。



どんな手を使おうと、勝ちは勝ちよ。問題ないわ。

私は、前方にシルエットを配置して、アイツを待ち構えている。

ただし、アイツの武器の射程を考えて、1体1体は多少距離を置く形で配置。



さっき、アイツが撃ってきたクレイモアの射程も含めているから、一気には撃墜出来ない。

アイツの突撃力と瞬間的な攻撃力は、スバル以上。クレイモアなんてぶっ放されたら、すぐに終わる。

・・・・・・つか、ありえないでしょっ! なんなのよあの殺る気満々の魔法っ!?



どこぞの武装隊だって、あんなの使わないわよっ! くそ、アレが古き鉄の本気ってわけっ!?

・・・・・・とにかくよ。移動しながらあんなもんぶっ放されたら、キリがない。

ここは、足を止めざるを得ない状況を作り出して・・・・・・そこを狙う。



そうこうしている間に、アイツが来た。木々の間をすり抜けながら・・・・・・・え?



なんか、戦闘中とは思えないくらいにゆっくりと歩きながら、アイツが現れた。





「・・・・・・ツナみーっけ。いやぁ、探したよツナ」



アイツは、私にニッコリ笑いかけながら・・・・・・言い切った。

私をツナだと。ツナが私だと。あははは、怒っていいわよね?



「ということでお前・・・・・・僕に、釣られてみる?」



それを聞いた瞬間、どうしてか頭が沸騰した。いや、理屈じゃなくて版権的に色々と。

とりあえずアレよ、名前間違え続ける奴には・・・・・・制裁って、必要よね?



「釣られるわけないでしょっ!? このバカっ!!」





私は意識を戦闘モードへと戻して、あいつを迎撃。

シルエットに混じって、弾丸を撃ちまくる。

誘導弾に直射弾。ありとあらゆる弾丸のパレード。



でも、アイツはそれに構わずに駆け出して、アルトアイゼンを構える。





「はぁっ!!」





勢い良く振りぬかれた青い魔力を帯びた、鉄刀の右薙ぎの一閃。

その斬撃の壁によって、弾丸が斬り払われる。だけど、それで全部じゃない。

その攻撃直後の隙を狙って、私が叩き込んだ弾丸をひょいっと避ける。



刃を返して、左から一閃。いや、その場で右足を軸に回転した。



そうして、後ろから迫ってきた誘導弾の全てを撃墜。





≪Stinger Snipe≫





アイツの左手の人差し指の先で、螺旋を描く光が生まれる。

それは放たれると、木々を縫うように素早く飛びかい、私の幻影達を貫く。

それも一体じゃない。木々の合間をジグザグに飛び交う姿は、まさしく雷光。



蒼く輝く雷光は、幻影を複数体、高速で貫く。それもほんの数瞬で。

木々に生い茂る葉のせいで、少しだけ薄暗い空間を一条の光が走り抜ける。

その光は、クレイモアや剣撃だけではどうにもならない距離の幻影を、全て撃墜。



・・・・・・って、誘導弾っ!? なんでこんなの使えるのよっ!!



いや、考えるまでも無い。コイツ、やっぱ手札を色々隠し持ってたんだ。





「どうしたのっ!? そんなに狙いが甘かったら、釣れる魚も釣れないよっ!!」





軽口言える余裕まであるってどういうことっ!? あー、ムカつくっ!!

そうこうしている間に、私へと魔力弾が迫る。木々の合間をすり抜け、上から打ち下ろすように。

それに向かって、クロスミラージュの銃口を向ける。そして撃つ。



私が放った魔力弾は、狙い通りにアイツの弾丸とぶつかり合い、爆発した。



その間に、アイツがこちらに向かって駆け出してきた。





「鉄輝っ!!」



上段からアルトアイゼンを振り下ろす。刀身には、蒼に輝く魔力。



「一閃っ!!」





ダガーモードでも、あれは捌ききれない。受け止めた瞬間に私まで一緒に斬られる。

そう思った私は左へと跳んで、アイツの斬撃を回避。

それと同時に飛びながら、クロスミラージュを構えてアイツを狙う。



でも、撃つまでには至らなかった。アイツが、振り下ろした刀を少し持ち上げる。



すると、私の居る方向へと突っ込みつつ、横薙ぎに斬りつけてきた。





「クロスミラージュっ!!」

≪Dagger Mode≫





クロスミラージュが変形して、魔力刃が形成されて、私の両手に刀身が生まれる。

ダガーモード。私が今みたいな近接戦闘を強いられた時に用いる補助用の形態。

それで、迫り来る鉄の刃を受け止める。襲いくるのは、意識を持ってかれるんじゃないかと思うような衝撃。



蒼とオレンジが混じり合う火花が、辺りにまき散らされる。

そして、私はそのまま斬られはしなかった。うん、しなかった。

だって・・・・・・アイツの腹部に、魔力スフィアが形成されていたから。





「・・・・・・とりあえず、合格かな」





その瞬間、散弾が私に向かって零距離で飛んで来た。私は、左に跳んで避けていた。

本当にギリギリのタイミング。・・・・・・てか、痛い。数発、右手と右足を貫いてる。

非殺傷設定だし、物理干渉はしないから大丈夫だけど、それでも手傷は手傷。



私は距離を取ると・・・・・・アイツは、楽しげに笑っていた。





「・・・・・・へぇ、やるじゃん。あのタイミングで避けるんだ」

「よく、言うわよ」





左手でクロスミラージュを構える。右手と右足・・・・・・くそ、動きが鈍い。

あぁもう、事件での反省が全く出来てないし。とにかく、後退りしながら私は距離を取る。

いいや、言いながらも弾丸を連射。アイツは右に走って避ける。



そして私に迫る。その間に左手のクロスミラージュを9時の方向に向ける。

向けて、魔力アンカーを発射。オレンジ色のワイヤーが射出されて、10数メートル先の木にくっつく。

ワイヤーの先にはミッド式魔法陣。私は痛む右足も頑張らせつつ跳んだ。



ワイヤーは引き戻され、その力で私の身体は急激に引っ張られていく。

私の目の前に迫っていたアイツは、私に向かって右薙に刃を打ち込んでくる。

私はスレスレでそれを避ける。刃は私の右腕を僅かに掠った。



避けつつも、魔力弾を数発生成。それをアイツに向かって掃射する。

だけど、アイツはそれを全て斬り払った。魔力はもう解除されてるのに。

銀色の斬撃はまるで網の目のように盾となる。そうして私の弾丸を全て爆散させる。



・・・・・・くそ、普通に魔力弾真っ二つに出来るってどんだけよ。シグナム副隊長だってそこまでじゃないのに。





「普通に発射するタイミング、遅らせたわよね。私が避けられるくらいには」

「へぇ、それも気づいてたんだ」



距離を取って、アイツは一歩一歩歩いてくる。ジワジワと・・・・・・じっくりと。

楽しげに笑っているのは、アイツが私を獲物として認識しているせいかも知れない。



「なんでそんな事するのよ」

「簡単だよ。下手に直撃させると、良識派が色々うるさいのよ」



・・・・・・一瞬でなのはさんやフェイトさん達の顔が浮かんだのは、これまでの時間のせいだと思う。

あと、スバルもか。確かにアレは・・・・・・事故もありえるから、『良識派』は止めるのが道理よね。



「・・・・・・とりあえずツナ」

「ティアナよっ!!」

「大丈夫、幼児体型でも需要があるから。ほら、貧乳はステータスで稀少価値なのよ?」

「いきなり何の話っ!? てゆうか、普通に私は胸あるわよっ! アンタ、普通に私のスリーサイズ・・・・・・あぁ、そうよっ!!」



よくよく考えて思い出した。だから、アイツに向かって弾丸を掃射。



「アンタ、普通にどこで私のスリーサイズ知ったっ!?」



アイツは木々を盾にしながら森の中を走り抜ける。誘導弾で追いかけるけど・・・・・・追いつけない。

アイツの動きを見ながら確信した。コイツ、普通にこういうシチュでの戦闘に無茶苦茶慣れてる。



『何言ってるのっ! あの夜実地で教えてくれたじゃないのさっ!!』



何か妙な魔法を発動させて、大声で喋りながらアイツはジグザグに走る。

走って・・・・・・私は操作をミスして弾丸を木に接触させる。当然弾丸は木々を撃ち抜いて爆発。



「ふざけんなっ! いつそうなったっ!? 普通に無いでしょうがっ!!」



それでも私は弾丸の速度を上げて追いつく。追いついて・・・・・・アイツを捉えた。

でも、アイツの後ろに小型のスフィア。というか、弾丸。



『大丈夫、これから』

≪Stinger Ray≫



アイツが走りながら、背中から例の魔力弾を数発連続で撃つ。

木々を掠りながらも私の弾丸を全て撃ち貫く。



『そうなるんだからっ! この勝負に勝ったら、確かめさせてくれるんでしょっ!?
もう心を偽る服なんて脱ぎ捨てて、生まれたままのティアナを生でっ!!』



どうやらあの魔法は貫通力に優れているらしい。だから、簡単に私の弾丸を貫く。

それから私の方へと走ってくる。グルリと反時計回りに動きながら、少しずつ。



「いつ誰がそんな約束したっ!? ふざけんじゃないわよっ!!」



言いながらも私は、迎撃のために魔力スフィアを形成。数は12。

・・・・・・あぁもう、冷静になれ。てゆうか、普通に逃げられないのが辛い。



『ふざけてないよっ! 真剣だよっ!!』





そんな事を抜かすアイツに向かって、一気に弾丸を掃射。

弾丸はまたまた木々の合間をくぐり抜けながら迫る。

・・・・・・そう、私は逃げられない。まず右足を潰された。普通に移動は無理。



アレよ、パチンコ球が5発ほど太ももとか膝とかすねとか撃ち抜いたと想像して?

もうここまで言えばわかると思うけど、今がそれよ。スタン攻撃らしくて、マジで無理なの。

そしてアイツはどういうわけかサーチを使わずに私の位置が分かる。





「尚の事、性質が悪いわよっ! てーか、大声出すのやめなさいっ!!」





当然のように木々をすり抜けながら私の弾丸はアイツに迫る。くそ、何よコレ。

アイツ、今のところ大した魔法使ってないのよ? それなのに足が速い。

とりあえず私は、遠方に隠していた弾丸を一つ動かす。それは今は丁度アイツの真後ろにある。



誘導なんて細かい事は考えない。ただひたすらに・・・・・・速度を上げて撃ち抜く。

木々の合間、僅かにあった射線軸を狙って、弾丸が急スピードで迫る。

それは木々をジグザグにすり抜け、盾にするようにしながらも走るアイツへと迫る。



射出スピードも狙いもバッチリ。アイツが射線軸に入った時には、弾丸はもう零距離。

だから命中するハズだった。でもアイツはそれを・・・・・・斬った。

右から迫っていたそれを、身体を回転させてアルトアイゼンの刃を左薙に叩き込む。



弾丸はアイツに迫る直前で真っ二つにされて爆散。私は咄嗟に、弾丸を一発放つ。

攻撃で足が止まった所を狙って弾丸を撃ったけど・・・・・・だめ、捉えられない。

弾丸をコントロールして、アイツの背中に向かって速度を上げる。



アイツは跳んだ。跳んで左の木を足で蹴って、弾丸を回避する。





『往生際が悪いね』

≪Stinger Ray≫



構えもせずに発射された弾丸は、的確に私の弾丸を撃ち抜く。・・・・・・やっぱりだめだ。

見たところ弾丸を複数・同時展開は出来ないみたいけど、その分貫通力と速度はあっちが上。



『いいじゃんっ!!』

≪Stinger Ray≫



アイツは私の方へと真っ直ぐに走りながら弾丸を連射。私は当然のように迎撃する。

誘導弾じゃないから、まだ撃墜は楽。そして威力はどっこいどっこいなのか、何とか相殺出来る。



『普通にこんな声で(うったわれるーものー♪)とか言うよりはマシでしょっ!!』

「・・・・・・ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




とにかく私はアイツと距離を取る。取って、弾丸を追加で生成。

数発掃射してまたまたワイヤーを射出。とにかくアイツの視界外から消えた。

距離にして20メートル程取ってる。というか、右手も動かして連続で一気に逃げる。



・・・・・・いや。そのハズなのに、アイツはすぐに私を追いかけてくる。それも迷いもなく。





「クロスミラージュ、サーチは」



アイツは飛び上がって、近くの木の太めな枝に乗る。そして枝から枝へとジャンプしながら、私を追いかけてくる。

・・・・・・って、どこの忍者よアレ。前にちょこっと読んだ漫画で、あんなのあったわよ?



≪されていません≫

「あー、そうすると間違いないか」

≪はい。彼は魔法無しでSirの攻撃や位置を察知出来ます。それも相当な範囲≫



そういうレアスキル? いや、なんか違う。私だって見えない所の攻撃の察知くらい出来るし。

でも、そんな明確に分かるわけじゃない。ならアイツのこれは・・・・・・そうか。私よりそういう能力に長けてるんだ。



「普通に逃げて、幻影作って対処は」

≪無理でしょうね。下手をすれば、幻影と本物を見分ける事も可能かと≫

「あぁそうよね。全く、なんなのよアレ」



だったら・・・・・・一か八か。ぶっちゃけ、アイツが私より上なのは分かった。

だから私は逃げる足を止めた。止めて、魔力弾を20発ほど生成。



「クロスファイアッ!!」



踵を返し、アイツを見据える。見据えて・・・・・・全部を掃射。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」





弾丸はアイツに向かって迫る。それに対処しつつも、アイツは私に向かってくる。

私の放った弾丸は・・・・・・木々にぶつかり、アイツに斬られ、逸れて、その全てが外れる。

でもこれでいい。これはアイツの速度を少しでも落とすためなんだから。



アイツが私の目の前に来る。距離はもう5メートルもない。右手の刃には、蒼い魔力。





「・・・・・・鉄輝」





アイツが両手でアルトアイゼンの柄を持つ。持って、更に踏み込む。

私は意識を集中させる。これは痛んだ右手も動かなさいと意味がないから。

一瞬。一瞬でいい。アイツより速く動ければ、一瞬止められればそれでいい。



アイツの両手が僅かにブレた。というより、上に動いた。・・・・・・今っ!!





「一閃っ!!」

≪Dagger Mode≫





唐竹に打ち込まれた刃を、私は両手のクロスミラージュで受け止める。

なお、ダガーモードに変形させた上で。オレンジ色と蒼の刃がぶつかって火花を散らす。

私は斬撃の衝撃に圧されるように、一気に後ろに跳んだ。跳びながら、もう2アクション。



アイツは斬撃を私の前で振り抜き、すぐに追撃をかける。そう、ここは分かってる。

アイツからすると、この状況で私を逃がしたりはしたくないはず。

だって逃がしたらまた幻影を使われるもの。だから、さっきから必死で追いかけてきてる。



そこが分かってるから、私はクロスミラージュのカートリッジを4発ロード。

そして弾丸を一気に30発ほど生成。それはアイツの周囲に生まれた。

アイツを覆うようにして、弾丸達はその動きを止める。アイツの目が少し見開いた。



そう、そうよ。これが狙いよ。これだけ近距離なら、こういう手も使えるから。

なお、当然のように私はその包囲網の外。後はトリガーを引くだけ。

アイツを・・・・・・私のスリーサイズをバラしてくれたバカを、撃ち抜けと。



マジで許さないっ! 挑発のためとは言え乙女の秘密を・・・・・・地獄へ落ちろっ!!





「ファイアッ!!」





弾丸はアイツに向かって殺到する。殺到して、アイツは伏せる。

でも、それで逃げられるわけがない。アイツは弾丸の雨に晒され、爆発に飲まれた。

私は着地の体勢を取れずに、転がるようにして地面に倒れる。



そうしながら距離を取って、目の前の爆煙を見据える。・・・・・・うし、借りは返した。





≪Sir、お見事です。全弾しっかりと命中しました≫

「でしょ? あはは、我ながらこれは相当いい出来だと」

≪Struggle Bind≫





聴こえた声は私のよく知る声。咄嗟に体が立ち上がろうと動く。

だけどそれじゃあ遅かった。私の身体は、青い魔力の縄で縛り付けられていた。

というか、なんでっ!? 肉体強化の魔法だってかけてるのに、全く力が出ないっ!!



あれ、強化魔法・・・・・・無効化されてるっ!? つか、これまさか・・・・・・!!





「・・・・・・力で引きちぎろうとしても無駄だよ」



そう言って爆煙の中から私に飛んで来るものがあった。それはワイヤー。

細いワイヤーは私の首元に何重にも巻きついて、絞め上げる。・・・・・・く、苦しい。



「ストラグルバインド。強化魔法等を強制的に解除・無効化する特殊バインドだよ」

「・・・・・・ぐ」

「さて、ティアナ」



その瞬間、爆煙の中から一つの影が出てくる。それは私の首を絞め上げてる張本人。

アイツの左手が少し引かれるだけで、息苦しさが増す。・・・・・・マジで窒息させるつもりらしい。



「選択して。このまま窒息する? それとも、斬られる方がお好みかな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・辺りに舞うのは爆煙。それは僕を撃ち貫こうとした弾丸によるもの。

それを見ながら勝利の確信などと、あのツインテールはしていたのだろう。

残念無念また来週ってやつだね。ま、来週やるかどうかわからないけど。





足を潰され、腕も動かない。その状況でティアナが狙ってくるのは何?

簡単だ。一撃必殺のカウンター攻撃。それがさっきのアレ。

そんなのはこっちに決意の表情で踵を返した時点で読み取れた。僕だってそうする。





ティアナは確実にこちらを倒せるだけの手はずを踏んだ上で、攻撃を仕掛けてくる。

そこまでは読めていた。まさか魔力弾で囲んで、駄目押しで一発ぶち込んでくるとは思わなかったけど。

それでも来ると分かっているものに対処するのは、すっごく簡単。





でも、やっぱこの子は面白い。色々言ってはいるけど、スバル達の中では1番だね。

このカウンターだって、立派なティアナの持ち味だもの。

だからこそ分かっててもヒヤっとしちゃったしね。やっぱ強いわ、うん。





でも残念。・・・・・・大量の弾丸掃射で爆煙発生というシチュで安堵するのは、ブッチギリの負けフラグなのよ。










≪そんなバカな。全弾命中したはず。何故、Sirの攻撃が≫



両手に持たれたクロスミラージュが、疑問と驚愕の声をあげる。だから見せてやった。

ティアナの首を絞め上げながら、地面を操作して杭を作る。それをティアナに突き立てる。



「こういう事だよ」



なお、杭はティアナの顔の前で止まった。結構距離はあるので、前のめりに倒れても刺さったりはしない。



≪・・・・・・物質操作系の魔法≫

「そうだよ。咄嗟に障壁を作って攻撃を防いだ」



その形状は僕を包み込むドーム状。僕の特殊能力のおかげで、一瞬でそれを形成。

弾丸は全てその障壁に激突したのよ。で、全部命中したのを確認した上で、これ。



≪この人の得意技の一つですよ。あの程度じゃあヒビ一つ入りはしませんね≫

≪そんな馬鹿な。Sirの弾丸をあれだけ喰らって耐えられる物質障壁を一瞬で?
あなたは・・・・・・何者ですか。そんな事、普通の魔導師は出来ない≫

「魔導師だよ。ただし、お前らよりはその称号の本分を理解してるってだけの話さ」





僕が使ったのは、ブレイクハウトという魔法。地面・・・・・・ううん、魔法で物質へと干渉。

構成物質の理解と分解と再構築を行う事で、色々と効果を起こす物質変換魔法。

なので今のように地面を隆起させるという使い方も出来る。ただし、これはあくまでも使い道の一つ。



例えばある一定範囲内に魔力を送り込んで、爆発を起こす事も出来る。

あとは隆起で大地の波を起こして、それで相手を吹っ飛ばすとかね。

僕が魔導師になってすぐの頃、スレイヤーズの魔法なんかを参考に組んだ魔法。



干渉出来る物質さえあれば、この魔法はいつでも使える。もちろん材質も関係ない。

足元がヌメヌメの泥だろうが、鉄やコンクリ、木だろうが、魔力付与で強度に補正をかければあら不思議。

どこでだって使えるし、魔力付与込みでも瞬間的にフルパフォーマンスで発動出来る。



ティアナの誤算は、僕が防御魔法以外に攻撃を防ぐ手段を色々構築しているのを知らなかった事。

非殺傷設定の魔法は直撃すれば、魔力が削られる。そうしてその魔力ダメージで相手をノックアウトするもの。

だから魔法能力のない人間が魔力弾なんて喰らえば、あっという間に倒れる。それは魔力量の少ない僕も同じ。



防御魔法で防御すればいいという話でもない。防御魔法にも、欠点があるの。

防御魔法が破壊されれば、その分魔力を丸々無駄に消費させられてしまうのだ。

なのでそれ対策に、防御魔法よりも燃費重視でこういう術を構築した。



もちろん防御性能や利点欠点の把握も込みの実験もした上で。うん、当然だね。

ふ、伊達にリナ・インバースを尊敬しているわけじゃないのよ。

てーか僕はスレイヤーズみたいな魔法使いたくて、魔導師してるとこあるし。





「・・・・・・魔導師の本分と本質は、お前のマスターやフェイトやなのは達も忘れがちだけど、戦闘者なんかじゃない。
魔導という学問を通じてその可能性を突き詰め、物事の真理に迫る科学者。それが本来の魔導師のあるべき姿だ」





あと、左手から出してるのは鋼糸。恭也さんや美由希さんが使う剣術、『御神流』で使用する暗器。

色々あって使い方を教えてもらってる。用途は今みたいに絞め上げるのが一つ。

一瞬で敵を拘束というのもあるし、一種のワイヤーアクションも鋼糸の太さがあれば出来る。



つーわけで、もうちょい絞め上げようか。苦しそうにしてるけど、僕は気にしない。





「科学者として魔法プログラムという学問を突き詰めれば、これくらいの事は可能なのよ。
だからこそあえて言おう。・・・・・・テメェら三流と僕とを一緒にするな。格そのものがダンチなのよ」

「・・・・・・アンタ」



苦しげに搾り出すように、ティアナが僕に向かって声を出す。



「これで、勝ちの・・・・・・つもり?」

「嫌だなぁ。そのつもりならとっくに帰ってるよ。もしくは、とっくに斬ってる。
だから・・・・・・選択させてあげてるんじゃない」



そう、僕はティアナに選択権をあげてるだけだ。ニッコリと笑って、言葉を続ける。



「ティアナに、自分が負けるって選択をしてもらおうかなと。今のティアナは、釣られたまな板の上の鯉だもの。
だったらそれらしく、僕に捌かれる覚悟を決めるのが定めじゃない? それに、僕的にもそっちの方が楽しいし♪」

「ほんと・・・・・・性悪」

「よく言われるよ。あぁ、それと一応警告ね。
誘導弾でどうこうってのはやめたほうがいいよ? 例えば・・・・・・そこに隠してるやつとか」



その瞬間、ティアナの表情が変わる。・・・・・・やっぱりか。

試しにハッタリかましてみたんだけど、ホントにやってたとは。恐ろしいツインテールである。



≪・・・・・・よく分かりましたね≫

「当たり前じゃん。ティアナの目、全然諦めてないし。
殺したり意識を落としてない以上、普通に反撃を警戒するのは基本でしょ」



ハッタリだったとは顔に出しません。えぇ、それが駆け引きってやつですよ。



「・・・・・・あぁもう、分かった」

「何が?」

「負け・・・・・・たわよ。とりあえず、今回・・・・・・だけ」



ストラグルバインドに縛られながら、鋼糸で首を絞め上げられながら、苦しげにティアナは声を出す。

普通に『やめて』とか言わない辺りが、また好感が持てるよ。だから僕は鋼糸を外した。



「げほ・・・・・・げほげほっ! かはっ!!」



ティアナの首は開放される。首には、赤い痕が刻まれている。なお、傷はついてない。

だって、普通に一番太いのでぐるぐる巻きにしたし。細いやつなら皮膚切れてるだろうけど、これは大丈夫。



「・・・・・・あー、悔しいっ! これじゃあ、完全に私の負けじゃないのよっ!!」



そして次にストラグルバインドを解除。ティアナは、崩れ落ちて右手で喉元を押さえる。

なお、クロスミラージュは待機状態に戻したのか、両手から消えた。



「悪いね。これでも経験だけは豊富なのよ。これで負けたら、うちの優秀な師匠達にどつきまわされるし」

「だからってなんで首絞め上げんのよ。アンタなら普通に、斬って終わらせるのも出来たでしょ」

「いやぁ、本当はそうしたかったのよ。たださ」



あははは、苦笑いしか出来ないって悲しいよね。でも、ここでティアナに気絶されると多分困っちゃうしなぁ。

なんて言うか、アレだよね。自力で逃げて欲しかったんだ。多分、とんでもない事になるだろうから。



「ただ、なによ」

「気絶させちゃうと、普通にティアナが動けないところで大怪我しちゃうかもしれないから」

「はぁ? 何よそれ」



よく分からないと言った顔のティアナだけど、その理由はすぐに分かる事になる。

だって、僕達の居る方・・・・・・というか、僕に向かって強烈な怒気がぶつけられたんだから。



「な、何よ。なんかこう・・・・・・すごいの感じたんだけど」

「・・・・・・ティアナ、それ正解」



僕はその方角を見る。それは丁度、僕の真後ろ。そこからゆっくりと歩み寄ってくる存在が居る。



「・・・・・・蒼凪、随分楽しそうだな」



ピンク色の髪をポニーテールにして、白を基調としたバリアジャケットを着た女の人が来た。

右手には炎の魔剣。てゆうか、普通にカートリッジなんて1発ロードしちゃうところが、すっごくお茶目。



「シ、シグナム副隊長っ!?」

「お前、バカだバカだとは思っていたが・・・・・・本当にバカだったかっ! なんなんだコレはっ!?
1時間も待ちぼうけさせ、大声でセクハラして・・・・・・特に前者が許せんっ!!」

「え、私がセクハラされたアレコレは、一切無視っ!?」

「貴様、そこに頭を垂れろっ! レヴァンティンの錆にしてくれるっ!!」



あー、やっぱこうなったか。ティアナが怯え気味だけど、僕はここ予測してたの。

だから気絶させなかったんだし。というわけで、僕はティアナの方を向いてこう言う。



「ティアナ、早く逃げて。てゆうか、逃げないと死ぬから」

「いきなり何よそれっ! てーか、私右手と右足がスタン状態なんだけどっ!!」

「飛竜・・・・・・!!」





げ、ヤバい。なんかレヴァンティンが蛇腹剣になってる。てーか、炎出てるし。

今レヴァンティンが取っている形態は、シュランゲフォルム。形状は、もち蛇腹剣。

近距離オンリーなシグナムさんとレヴァンティンの、中距離戦闘用の形態がコレ。



どこまでも伸びる蛇腹剣は、襲い来る敵を薙ぎ払い、広範囲に及ぶ攻撃を可能とする。

それだけじゃなくて、防御にも最適。大量の誘導弾などを、アレで全て斬り払ったりも出来る。

そんな形態を取り、炎を纏ったレヴァンティンをシグナムさんは周囲にうねらせる。



それらが自分の周りの木々を全て斬り裂く。てーか、燃やしながらへし折る。

シグナムさんが右手を上げる。その手は、当然レヴァンティンの柄を持った手。

シグナムさんはその右手を振り下ろしながら、声をあげる。





「一閃っ!!」





レヴァンティンはその声に応えるように、僕とティアナの居る方へと迫る。

切っ先は木々を吹き飛ばしながら、真っ直ぐにこちらへ・・・・・・って、あの人バカっ!?

普通にティアナが逃げてないのに普通にぶっ放してきたしっ! ・・・・・・あぁもうっ!!



僕はジガンのカートリッジを3発ロード。そうして刃に魔力を纏わせる。

ただし纏わせるのは、今までのような普通の魔力じゃない。それは凍結魔力。

全てを凍てつかせる凍れる息吹。それを薄く鋭く砥ぎ、一振りの刃を打ち上げる。



それから両手でアルトをしっかりと持って、僕は踏み出した。狙うはレヴァンティンの切っ先。



レヴァンティンの爆炎に包まれた切っ先が僕に迫る。だから僕は・・・・・・アルトを振り上げる。





「氷花」



凍れる刃の名は、それまでの鉄輝一閃とは名前が違う。というか、そういう風に僕が付けた。

その刃を袈裟に叩き込んで、襲い来る炎の飛竜を正面から叩き斬る。



「一閃っ!!」





生まれた斬撃は蒼く、冷たい息吹を撒き散らしながらも飛竜を叩き斬る。

その瞬間に起こるのは爆発。相反する属性の魔力が、正面からぶつかり合った事によるもの。

僕はそれに吹き飛ばされ、少し後ろに下がるけど無傷。シグナムさんは・・・・・・当然無傷。



気配で分かるよ。また正面から僕に向かってゆっくりと歩み寄って来てる。



なお、ティアナは何故か目を見開いて、僕達を怯えた目で見ている。





≪ティアナさん、アンカーでもなんでも使ってすぐに逃げた方がいいですよ? ここ、火の海になりますし≫



飛竜一閃のせいで、木々が燃え始めてる。・・・・・・マジであの人、キレてるなぁ。

こんなとこで炎の魔法使ったら、どうなるかなんて明白なのに。



「言われなくてもそうするわよっ! あぁもうっ!! なんでこんなことにっ!?」

≪彼のせいですね≫

「クロスミラージュ正解っ! てーか、納得したわっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・その後のことを話さないといけないわよね。

私が必死になって逃げると、演習場は当然火の海になっていた。

原因は、シグナム副隊長の炎熱魔法。てゆうか、こうなるのは当然よ。





森林のエリアで、アレだけ派手にぶっ放し続けるんだから。

そうしてよく目を凝らすとと、笑顔だけど目が全く笑っていないシグナム副隊長が剣を振るっていた。

『いくらなんでもやりすぎだ。そして見ていてイライラした』と、擬戦形式でアイツに修正を加えていた。





ヴィータ副隊長曰く、『実戦演習』だそうだ。なお、1時間膠着状態が続いてる時、相当イライラしてたとか。

・・・・・・マジで私に対してのアレこれはついでらしい。私、たまにあの人と居るのが凄く嫌になる時があるんだけど。

いや、前に殴られたどうこうというのは抜きにしてよ? こう、行動が直進し過ぎてあんまり・・・・・・ねぇ?





そしてアイツはというと、当然のようにそれを受け入れるわけがない。だって性格悪いし。

普通に勝ちにいこうとして、無茶苦茶白熱してるし。つか、シグナムさんが段々楽しそうにしている。

それで途中からアイツの目つきが変わった。というか、空気が変わった。そこからアイツの動きが鋭くなった。





まるで・・・・・・相手を本当に真っ二つにしようかと言わんばかりの気迫で、一撃を打ち込んでいる。

なにあれ、いつものアイツじゃない。なんかのスイッチ入ってるし。シグナムさん圧され始めた。

とにかくそれを遠めで見ながら私は、スバル達に『大丈夫?』と心配され通しだった。





いや、撃墜されたわけじゃないし。ただ首には痕が残ってるから、ちょっとスカーフ巻いて誤魔化してる。

そこになのはさんとリイン曹長にヴィータ副隊長が来て、今回のことはあまり気にしないでほしいと言われた。

・・・・・・別に気にしてないんだけど。セクハラ以外ね? うん、そこはアレよ。マジで殴ってやる。





ただ、アイツの能力は本物だと思ったから。なんていうかさ、散々振り回されたのは確か。

だけど、特に気にならないのよね。・・・・・・あぁもう、マジで悔しいな。

手札隠されてたってのを抜きにしても、相性で言えば私の方が上なのに。





とにかくその後、アイツはシグナム副隊長からの修正を受けた。というか、死闘を繰り広げた。1時間ほど。

途中から私の模擬戦なんて関係なくなっていたのは、気のせいじゃない。

だって、二人して楽しそうだったし。ヴィータ副隊長がすごく疲れた表情をして、小さく呟いた。





『うちのバトルマニアどもは本当に』・・・・・・と。その言葉が、やけに耳に残った。

で、その後なんやかんやとあった。今アイツは、ボロボロになりながら食堂のテーブルに突っ伏している。

時刻はすでに夕方。夕飯時だから、私はスバル達と一緒にやってきた。





スバル達に断って、アイツと二人で話すことにした。まぁ、アレよ。

変に距離出来てもあれだし、私の気持ちは、ちゃんと伝えないとね。

そしてゆっくりとテーブルに近づいていく。でも、反応がない。





・・・・・・ここまで来て気付かないって、本当に疲れてるみたい。




だってよくよく考えたら模擬戦の時だけじゃなくて、あの医務室の前とかでも気づかれてたのに。










「・・・・・・情けないわね。私に勝っておいて、なんでそんなボロ雑巾みたいになってんのよ?」

「ほっといて」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



模擬戦が終わった後・・・・・・訂正、ティアナが逃げた後だね。





シグナムさんに『実戦演習』を受けた。いや、あれはもう・・・・・・ねぇ。





楽しかったなぁ。シグナムさんと久々にガチで斬り合ったから、いい感じでストレス解消ですよ。










「シグナムさん、もういい加減納得してもらえませんか?
そろそろ僕も限界なんで。そして演習場も限界なんで」

「ふ、ふふふ・・・・・・まだだ。まだだ蒼凪。強くなったとは思った。
だが、まさかここまでとは思わなかった。足りん、まだ足りん」



そんな事を言うのはこの部隊の分隊の副隊長で、ベテラン局員のシグナムさん。

目を血走らせながら言うのはとっても怖いのでやめて欲しいとか、思ったりもする。



「もっと確かめなくては意味がないだろ」





だぁぁぁぁぁぁっ! なんだよこのバトルマニアっ!? どんだけガチンコ大好きなんだよっ!!

つか、周りを見てっ!? 火の海だしっ! 僕達はジャケットボロボロだしっ!!

それになによりっ! フィールドやジャケットの上からでもちょこっと熱いってどういうことさっ!!



くそ、マジでふざけんなー! さすがにこれ以上はヤバいかなとかちょっと思ってるんだからっ!!





「蒼凪、とにかくもっと来い。お前とサシでやるのも久し振りだからな。というより・・・・・・やりたいだろ?」



シグナムさんが、本当に楽しそうに言ってきた。つか、見抜かれてたか。



「よく分かりましたね」

「当然だ。・・・・・・久々に見たぞ。眠っていた修羅が目覚めたか」

「そうですね。ぶっちゃけ楽しくて楽しくて、ここで終わると泣いちゃうかも知れないですね」



ぶっちゃけていい? 僕、もうちょい戦いたいのよ。いや、ようやく吹き飛んできた。

抱えてたつまんないもの、ここで一気に放出出来る。いや、きっとシグナムさんはそのつもりだ。



「シグナムさん、まさかとは思いますけど」

「何、これは修正だ。それがたまたま長引いている。それだけでいいだろ?」



・・・・・・軽く笑ってそう言うあの人に、心の中でお礼を言う。きっと色々心配してくれてたんだと思うから。

それで自分に溜まっている膿を、全部ぶつけろと言ってくれてる。うん、凄く伝わったよ。



「そうですね。僕は悪い奴ですし、徹底的に修正されないと」

「そういう事だ」



だから僕もこのままやりたい。だってシグナムさんは強い。

そして僕達は戦うのが好き。これで盛り上がらないはずがない。



「シグナムさん」

「なんだ?」

「一つ確認です。・・・・・・僕は勝って、いいんですよね」

「当たり前だ。まさかお前は、私相手に仕置きされるつもりで戦うのか?」

「いやだなぁ。そんなつもりがないから聞いてるんじゃないですか」



ただ、勝って空気読んでないとか文句つけられるなんて嫌だもの。



「・・・・・・ふ、言ってくれるな。安心しろ、皆には私から言っておく」



そりゃよかった。めんどいのはごめんだし。話の分かる人で、よかったよ。



「あと、カートリッジ補充するなら行って来ていいですよ? 僕はほとんど使ってないですし」

「問題は無い。ここに来る前に大量補充してきたからな。まだ半分も使っていない。お前の方こそどうだ?」

「問題無いです。こういこともあろうかと、いつもの5倍くらいの数を持ってきてますから。つまり・・・・・・もうしばらくは楽しめるってことです」

「そうか。それは素晴らしいことだな」





そうして僕はアルトを、シグナムさんはレヴァンティンを構える。

互いに笑いながら、得物を右に引いて横に構えた。

もう模擬戦のことなんて関係ない。うん、ぶっちぎってるね。



ただ・・・・・・互いの敵と戦いたいだけ。力をぶつけ合いたいだけ。



部隊員や隊長としては、アウトだろうね。でも、仕方ないでしょ。楽しいんだから。





「・・・・・・ぶった斬る」



心の中を戒める鎖を、噛み砕く。そうして開放されるのは、普段は押さえ込んでいる獣。

まだ中途半端だった。だからここからは全開。ありったけで・・・・・・目の前の敵と斬り合う。



「両断する」



そうして僕達は駆け出す。僕は古き鉄を、シグナムさんは炎の魔剣を両手に携える。

互いに相棒を袈裟に打ち込む。斬撃は空気を、目の前の敵を斬り裂くために振り下ろされた。



「そこまでです」



聴こえたのは一人の女性の声。厳しく、なにかを押さえ込むような声。

その声に、僕達は同時に剣を止める。・・・・・・あぁ、嫌な予感がする。というか、怒ってる?



「・・・・・・ヤスフミ」



その声の方向に、僕達は揃って顔を向ける。

首を動かす時、油の切れた機械みたいな音が聞こえたのは気のせいじゃない。



「私、やりすぎないようにねって言ったよね? なのに、どうして・・・・・・あんな風に戦ったのかな」



そうして声の方を向いて見えたのは、陸士制服を身につけた一人の女性。

金色の髪に、ルビー色の瞳。そこから見えるのは・・・・・・怒りの視線と表情。



「ちゃんと教えて欲しいかなっ! というか、これはなにっ!? シグナム、あなたまで何してるんですかっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・えっと、そこからまた1時間かな? いやぁ、普通にフェイトがお説教モード入ったからなぁ。

シグナムさんの炎熱魔法のせいで、炎の海になりかけてた演習場の上で説教くらいました。

というか、シグナムさんも怒られました。だって目的忘れてるんだもの。演習場火の海なんだもの。





そして、その後に僕はスバルからも少し怒られた。というか、汚いと。嘘ついてたと。

・・・・・・いや、だから嘘じゃないってのにっ! やっぱアイツ、絶対バカだしっ!!

なんで隠し手出して、嘘つき呼ばわりされなきゃいけないんだよっ!!





あれかっ! スバル相手だとバインドもクレイモアもスティンガーレイも使ってなかったからかっ!!

仕方ないじゃんっ! スバルとはガチで殴り合いしてる方が、楽しめると思ったんだからっ!!

クレイモアやバインドなんて使っても、楽しくなかったんだよっ! なのにどうしてっ!?





相手をバカにしてるとは言うことなかれ。戦いは楽しくなければいけないのだ。

楽しく暴れられない戦いなど、僕は嫌だ。うぅ、だからつまんないよ。

あぁもう、フェイトのKY。せっかくシグナムさんと楽しくなってきた所だったのに。





というわけで、もう・・・・・・無理。お願いだから休ませて欲しい。










「というわけで、みなさんさようなら。先生さようなら。あははは、おやすみなさい」

「いや、どういうわけっ!? ・・・・・・まぁ、アレよ。
みんなアンタの事を思ってやってくれてるわけだし、甘んじて受けなさい」

「嫌だ。だってアイツらKYだし」

「なんで即行で否定っ!? そしてそれはむしろアンタよっ!!」





でもアレだ。とくにアレだ。『実戦演習』が悔しい。フェイトのおかげで決着、つけられなかった。

すごく楽しくなってきたのに。久々に僕の修羅が騒いだのに。いえいえだったのに。

うー、つまんないよつまんないよ。せっかくシグナムさんが、色々気遣ってくれたのに。



あー、でも後でお礼しなくちゃ。気持ちは、ちゃんと受け取ってるわけだしさ。





「アンタ、全然反省なしってどういうことよ。つか、アレが楽しいって」

「シグナムさんとやるときは、いつもあんな感じだよ? なんていうかね、あの人ってすごい楽しいよね。
途中からすごく楽しくなってきて、時間も忘れて斬り合える人間なんてそうそう居ないよ」

「・・・・・・うん、わかった。アンタがバトルマニアだってのはよくわかった」



なぜだろう? シグナムさんとやる時のことを思い出して、つい嬉しそうにしてしまっただけなのに。

それなのに、僕を見るティアナの表情が、微妙だ。こう、作画崩れじゃないかって言いたくなるくらいに。



「ティアナ、お願いだからそんな理解出来ない何かを見るような目で僕を見ないで?」

≪いや、実際理解出来ないんでしょう≫

「ごめん、真面目な話あれは理解出来ないわ。ま、それはいいわよ。さて」



ティアナが、右手を振り上げて思いっ切り殴ってきた。



「昼間のお返しよ。言っとくけど、模擬戦のことじゃないから。いや、ある意味それか」



ゲンコツですよゲンコツ。あの、なんで?



「とにかく、あんなセクハラ紛いのことを女の子に言うんじゃないわよっ! てーか、私のスリーサイズをバラすなっ!!」

「セクハラ? いやだなぁ。僕がそんなことするわけないじゃないのさ。僕は紳士という名の変態だよ?」

「あぁ、なるほ・・・・・・納得出来るわけないでしょうがっ! なによそれっ!? 自分で変態だって認めてるんじゃないわよっ!!」

「なに言ってるのっ! いいっ!? 男はすべからく変態なんだよっ! 大事なのは、それを認めるか否かっ!!
そこで、男の価値は天と地ほども変わってくるっ!!、うちの近所の前原さんだって、そう言ってるよっ!?」

「知らないわよそんなのっ! つか、誰よ前原さんってっ!!」



前原さんと言うのは、うちの近所に住んでるおじさん。ちょくちょく遊びに行って、色々語り合う仲なのだ。



「てゆうか、僕はティアナのスリーサイズなんてバラしてないじゃん」

「バラしたでしょっ!? それも、思いっ切り正確なのっ!!」

「・・・・・・え? いやいや、そんなワケないでしょ。だってあれ、全部デタラメだし」



なお、オール100じゃない。普通に規制音がかかったところだよ。



「・・・・・・アレ、正解だから」

「え?」

「アンタはデタラメだったろうけど、アレ全部正確だから」



・・・・・・とりあえず、僕は思った。うん、ここは絶対だね。



「ごめん」

「あ、なんか素直ね」

「いや、まさか命中するとは思ってなくて。・・・・・・よし、解決したね」

「そして全く反省してないでしょっ! アンタ、マジで信じられないしっ!!」

「ティアナ、お願いだからそんな怖い顔はやめてほしいな? ほら、綺麗な顔が台無しだよ。
確かにツンデレかも知れないけど、そんなツンツンしてばっかは正直色々問題が」





あれ、なんかまた表情が険しくなった。・・・・・・どうして?

あ、ひょっとしてツンデレって言われるのに何かトラウマがあるとか。いや、違うか。

ツンデレだからこそ、ツンデレって言われると怒るんだよね。




ツンデレって、そういう生態だしね。うん、僕は納得したぞ。





「うっさいバカっ! つか、あいにく私は怒っても綺麗なのよっ!!」

「ティアナ、自意識過剰って今度辞書で引いてみなよ。
・・・・・・ごめんなさい。お願いですから襟首掴むのやめてください」

「まぁアレよ。マジでアレが適当だったのは、理解した。
ただアンタ、本気でああいうのはやめなさい。人間関係壊すだけよ?」

「・・・・・・ティアナ、知ってる? 戦いってのは、何時だって空しい結果しか残さないんだよ。
それはなぜか? 簡単だよ。戦うってことはね・・・・・・壊すことなんだ」



そう、戦いはいつだって空しい結果しか残さないのだ。戦いの後には、壊れたものがいつだって存在しているから。

僕は窓の外の夕暮れ時の空を見て思う。きっと、これからも人は戦いを繰り返す。そして・・・・・・ぐはっ!!



「なんでいきなり殴るっ!?」



右拳遠慮なく叩きつけてきたしっ! くそ、暴力的過ぎるぞっ!!



「かっこいいこと言ってどうにかなると思ってんじゃないわよ、このバカっ! どうして『やりすぎた』の一言も言えないのよっ!!」



そう言って、ティアナはコブラツイストをかけてきた。なお、すっごく痛い。



「痛い痛いっ! ほんとに痛いからやめてっ!!」

「うっさいっ! アンタが謝るまではこうしてるわよっ!! 模擬戦はいいわよ模擬戦はっ!!
でもね、あんなセクハラを周りでかまされたら、私が迷惑なのよっ!!」

「なんだそれっ!? じゃあ・・・・・・謝らないっ!!」

「はぁっ!?」

「こんな暴力に屈してたまるかっ! 正義は何者に」



・・・・・・いや、真面目に痛いからっ! 痛い痛い痛いー!!



「だぁぁぁれが正義よっ! 明らかに悪党でしょうがっ!! つーかエロガキよエロガキっ!!」

「こ、今度は海老剃り固めっ!?」



あ、ひょっとしてあの夢ってこれの予知夢っ!? なんちゅう前振りがめんどくさい夢だよっ!!

気付くのに、1話とか2話とか使っちゃったじゃないのさっ!!



「失礼なこと言うなっ! 僕のどこが悪党だとっ!? あと、エロいのは男として当然だっ!!」

≪そうですね。この人エロいですよ。偶数日とか。もっと言うと昨日とか。
具体的に何処がエロくなったというと、今あなたが丁度目にしてる≫

「中途半端な開き直りするなこのバカっ! アルトアイゼンも認めんじゃないわよっ!!
つーか、そんな思考してる時点で、完全無欠に悪党でしょうがっ!!」

「何を言うかっ! 正義っていうのは僕のために存在してるんだよっ!!」



すなわち、僕が正義だっ! 僕がガンダムで、僕達がガンダムなんだっ!!



「どの口がそんなこと言うのっ! その口? その口なのねっ!!
海老反りしてなければ、広げてイジり倒してやるとこよっ!!」

「弄り・・・・・・ティアナいやらしい。男を弄るなんて。ティアナだって、エロいじゃないのさ」

「アンタねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



ティアナが更に力を加えてくる。いや、真面目にこれは痛い。だけど・・・・・・言いたいことがある。



「だってホントのことでしょうが。僕の友達が言っていた。
『男も女も、全てはエロの一言で片付けられる』と。あ、フェイト以外ね」

「片付けられるわけないでしょっ! なんなのよあんたの友達っ!?
つーか、アンタの周りの人間おかしい奴ばかりじゃないのよっ!!」

「なるほど。じゃあ六課もおかしいのか。そしてティアナもおかしいんだね。分かります」

「分かってんじゃないわよ、このバカっ! あと、フェイトさんは別ってどういうことよっ!?
つーか、女の子にそういうこと言うんじゃないっ!!」



・・・・・・そうだね、確かにそうかも知れない。だから、僕は素直に謝る。



「ごめん。今のは・・・・・・言い過ぎた」

「な、なんかいきなり素直ね。・・・・・・てか、いいわよ別に。
そんなに素直に謝れるんだったら、昼間のもそうしなさいよ」

「それは嫌だ」



・・・・・・あれ、なんで場の空気が凍る?



「ティアナ? ・・・・・・痛い痛いっ! 足首捻るのはやめてっ!? そんなにやったら折れちゃうからっ!!」

「・・・・・・ぶっ飛ばすっ!!」

「なぜにそんな不穏な宣言をかますっ!?」

「アンタが反省してないからでしょうがっ! どーしてさっきのは謝って、昼間のは謝れないのよっ!!」



謝る必要ないでしょうがっ! 戦いに置いては、アレくらい当たり前だよっ!?

どっかの映画とか見なよっ! 普通にそういう事言いながら戦うんだからっ!!



「つか、ツンデレの何処がセクハラっ!? 立派な文化じゃないのさっ!!」

「そこじゃないわよっ! アンタ、まだ現状をちゃんと認識してなかったのっ!?」

「気にするなっ! いいっ!? 勝負っていうのは基本勝つためにするんだよ!!
勝つためには、ありとあらゆる努力をするのは当然でしょっ!!」



なお、そう言いながらも足にどんどん力が加わってる。痛いけど、僕は抵抗を止めない。

いや、まぁ・・・・・・特に友達じゃないし、普通にこれでもいいかなって。



「努力の方向性が間違ってるわよっ!」

「気のせいだっ!!」

「気のせいじゃないわよっ! つか、ちょっとは気にしなさいよっ!!」

「とりあえず、僕は気にしないからいいんだよっ!!」

「ダメだよ、なぎ君。そういうのは気にしないと、女の子には嫌われちゃうよ?」





・・・・・・よし、幻聴だ。絶対幻聴だ。間違いなく幻聴だ。そうだ、そうに違いない。

こんな状況でこんな場所であのお方が、いらっしゃるはずがないじゃないですか。

あははははは、僕も耄碌したのかな? ・・・・・・お願いだから誰か嘘だと言って。



僕の妄想だといってお願いだからお願いだからお願いだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





≪あなた、どうしたんですか≫

「うん、なぎ君に会いに来たんだ。あ、二人とも今日の模擬戦お疲れ様」





そう言いながら、僕とティアナの方に来たのは、ギンガさん。

そう、スバルの姉で108部隊所属のギンガ・ナカジマ姉さんだった。

本来ならギンガさんがこんなとこにいるはずはない。だって、部隊が違うんだもの。



そして僕はさすがに背筋が寒くなってる。だってフェイト達はともかく、ギンガさんは予測してなかったもの。





「あ、今日の模擬戦での行動について、後で色々と話があります。その時に、用件は伝えるね」

「ちょ、ちょっと待ってっ! 僕は特に変な行動はしてないよっ!?」

「なぎ君、私の目を真っ直ぐに見て、そう言える?」

「うん」



体勢が体勢なので、ちょっと辛いけど僕はギンガさんの方を見た。見て、言いながら頷いた。

何故だろう、ギンガさんが固まった。というか、普通にティアナが震え出したんだけど。



「・・・・・・ティア、もうちょっと強めにやっていいよ? なぎ君は相当やらないと懲りないし」

「どうしてー!?」

≪諦めた方がいいですって。さすがにもうゲームオーバーですよ≫










そんなことを思いながら、それから1時間。妙にニコニコなギンガさんの表情に、僕はずっと怯えていた。

そんな生きた心地のしない恐怖を感じたまま、ティアナにお説教を食らいつつ、ご飯を食べた。

その直後に取調室へと連行され、ギンガさんと『お話』タイムとなった。





なぜだかティアナとフェイトも同席して。・・・・・・僕が勝ったのに。





僕が勝利者のはずなのに・・・・・・この扱いはあんまりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うーん」



オフィスの机の上、今日の模擬戦の様子を見ながら、私は唸っていた。



「なのは、どうした?」



するとヴィータちゃんがこちらを覗き込んでくる。

そして私の前に展開されている画面を見て、納得した顔をした。



「あぁ、今日の模擬戦か」

「うん。恭文君、ちょっと変だったよね」

「だな」





まぁハッキリ言っちゃえば・・・・・・あんな挑発しなくても、恭文君は勝てた。

だって恭文君は空戦魔導師だけど、実は今日みたいな陸戦の方が得意なの。

お兄ちゃん達とそこの辺りの方向でかなり訓練してたから。



あとはブレイクハウトだね。あの術のおかげで陸戦適性はかなり高い。

普通に1時間も膠着状態になんてしなくていいし、あんな挑発もしなくていい。

なんだろ、何か引っかかるな。まるで恭文君は、こう・・・・・・うーん。





「アイツ、ティアナやアタシらの反応を見てる感じがしたよな」

「あ、それそれ。私もそれ考えてた」



実際、みんなブーイングが凄かったしなぁ。汚いとか卑怯とか最低とか。

あとは鋼糸での首絞め? アレでフェイトちゃんやスバルが、酷くご機嫌斜めなんだもの。



「ま、それでも今日のティアナは良くやった方だよな。ブチキレてもおかしくないのに、ギリギリで踏み止まった」

「そうだね。途中まで思いっ切り恭文の口八丁に乗ってたけど」










でも恭文君、どうしたんだろ。普通にあんなことしなくても勝てるよ?

もちろんティアナが弱いんじゃない。恭文君の方が経験と戦闘センスがあるから。

それは今回のアレコレで、確実に立証されてると思う。現に詰み手は普通だもの。





一応確認した方がいいのかな。でも、なんか隠してるなら簡単には話してくれないだろうし・・・・・・うーん。




















(第14話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、今回はここも新録です。元のあとがきは、改定前のバージョンに載っております。
そちらをご欄になりたい場合は、そちらへどうぞ。・・・・・・本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「えっと、しゅごキャラクロスではお世話になってます。日奈森あむです。
・・・・・・てゆうか恭文、アンタまた派手にやらかしたね」

恭文「あははは、テンポよく一気にやる方向で考えた結果、こうなったよ。
それで、戦闘シーンはDTBのBGM聴きながらやったら、こんな感じに」

あむ「あぁ、それであんな感じなんだ。ここは改訂して大きく変わったとこだね。でも、それならあのセクハラ描写必要ないんじゃ」

恭文「いや、ここは譲れなかった。てーか、パワーアップさせたかった。だってこの話は某所に掲載当初鬼」





(うったわれるーものー♪)





あむ「・・・・・・恭文、アンタまた・・・・・・ぶっちゃけるね」

恭文「いいのよ。色々恨み辛みが溜まってるから。でさ、あむ」

あむ「何?」

恭文「しゅごキャラ、11巻が出て、本編は完結したじゃない?」

あむ「あー、そうだね」





(そう、原作は既に完結したのだ。ただ、番外編的な『アンコール!』が連載開始したけど)





あむ「ただ、アンコールも次の12巻で全部収まるとかなんとからしいし、一応しゅごキャラとしてはこれで終わったんだよね」

恭文「そうだね。それで最新巻を作者は手にしたのよ」

あむ「あ、発売されてるしね」

恭文「・・・・・・ね、アレはどう小説にすればいいの? 大事なとこがすっごい抽象的なんだけど。作者、頭抱えてるんだけど」

あむ「え、えっと・・・・・・どうしようか」

恭文「まぁ、そこはおいおい考えるか。
あ、それでは今回新登場した魔法の紹介ですね。解説は大事です」










分散掃射魔法・クレイモア



何回も名前が出ているにも関わらず、今回何気に『本編では』初登場な魔法。

手元に形成した魔力スフィアを、瞬間的にパチンコ球サイズの魔力弾へと分散・掃射する荒業。

その性質のため、掃射範囲内に敵が居る場合、これだけで決められるほどの威力がある。

ただし、基本的には近接用。撃ったら撃ちっ放し。遠距離まで散弾を誘導・・・などという真似もできない。

なお、劇中で使用したように、散弾の盾として用いることで、相手方の魔力弾を一斉撃墜することも出来る。

今回使用した魔力弾バージョン以外に、鉄球を用いた実体弾バージョンも存在する。ただし、対人戦では色々アウトなため、使用はしない。





射撃魔法・スティンガースナイプ



クロノ直伝の誘導弾。一発のみではあるが、速度と貫通力重視の魔力弾『ステインガ―』を操作する魔法。





射撃魔法・スティンガーレイ



速度と貫通力を重視した射撃魔法。クロノからの直伝。

魔力消費量もそれほどではないため、牽制などに多用する。高い貫通力のために、対魔導師戦には向いている魔法。




物理操作魔法・ブレイクハウト



詳細は劇中の通り。主に地面などを操作する。コンクリートなどの壁も可能。

ただ、術の効果は様々。操作で壁にしたり、爆発を含めた大隆起を起こしたり。

あくまでも、総称としての術の名前。





拘束魔法・ストラグルバインド



これまた『本編では』、初登場の魔法。

『拘束した者にかかっている強化魔法等の効果を、強制的に解除・無効化する』という副次効果をが最大の特徴の拘束魔法。

その分、詠唱速度・発動スピード・射程・バインドの強度に劣る部分があるので、使いどころの難しい魔法ではある。

だが、それを差し引いても副次効果は魅力的なので、恭文が好んで使う魔法の一つになっている。

なお、詠唱速度と発動スピードは、恭文の能力により、解消済み。瞬間的な発動による捕縛が可能となっている。










あむ「アンタ、何気に手札多いんだよね」

恭文「それによる状況への対応が、僕の強さの一つだから。
特にブレイクハウトは大きい。これが陸戦適性を上げてるから」

あむ「あー、でもあの術は確かに便利そう。かまくらとかも楽々作れるしさ」

恭文「でしょ? ・・・・・・というわけで、本日はここまです。さて、次回は14話。改訂版も一区切りだよ」

あむ「楽しみだねー。それでは、本日のお相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。それでは、またー!!」










(そうして、画面はフェードアウトする。二人は、またまた仲良さげに手を振る。
本日のED:日奈森あむ(CV:伊藤かな恵)『はんぶんこのハート』)




















???(翌日)「・・・・・・すまんな。マジで泥被らせてしもうて」

???「いいよ、別に。で、これがレポートね。二人にも同じ内容のを渡してるから」

???「お、悪いな。てか、また仕事速いやんか。で、アンタの感触としてはどないな感じや?」

???「まぁティアナに関してはいいんじゃないの? ちょっと乗り過ぎかとも思ったけど。
ただ後がダメだね。一般部隊員もそうだけど、特にフェイトとスバル、あとは部隊の外だけどギンガさん」

???「・・・・・・思いっ切り良識派な人間ばかりやないか。てか、ギンガは単純にアンタのアレコレ知ってるせいやろ」

???「それもそうだね。アレだよ、鋼糸使ったのがよっぽどアウトだったみたい。フェイトにも怒られたしなぁ。
でも、あえてみんなが見てる前で使って正解だったよ。スバルに『あんな質量兵器使っちゃだめ』とかって散々言われたし」

???「いやいや、鋼糸が質量兵器って・・・・・・まぁ、しゃあないか。
次元世界の人間は、魔法頼らん武器にめっちゃアレルギー持ちやし」

???「昔が昔だから、そうなるんだよね。とにかく一度再勉強って言うか、そういうのは必要かも。
はやての考え、間違っては無いと思うな。・・・・・・ただ、やっぱり余裕無いんだよね?」

???「以前話した通りにな。あー、マジでここは対策考えんと。
出来ればうちは、アンタみたいな『魔導師だから』で言い訳せんのにそこをお願いしたいんよ」

???「でも、そんなの局の中では圧倒的に少ないよ? 大抵の連中は勘違いをずーっとしてる。
魔導師は戦闘能力を持った科学者であって、戦闘者じゃないのにさ。教導官のなのはでさえそれだもの」

???「あとなのはちゃんの場合、単純に運動オンチやしなぁ。・・・・・・で、アンタの準備もあるんよな」

???「あるね。・・・・・・うぅ、嫌だなぁ。すっごく嫌だなぁ」

???「ゴメンなぁ。マジで他に出来そうな奴居ないらしいんよ。まぁ、頑張ってくれると助かるわ」

???「うん、分かった。僕・・・・・・頑張るよ」










(おしまい)





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あきゅろす。
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