小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第37話 『切り札は、消えること無きこころのヒカリ』
恭文「前回のあらすじ。エリオとキャロが生死不明になりました。
そして、ついにクアットロが大ボス敵な感じで登場しました。まぁ、それはどうでもいい」
フェイト「どうでもいいのっ!?」
恭文「それよりも、僕はこの場を借りてある人に謝らなくちゃいけない。・・・・・・どうぞー」
渡「あの、どうも初めまして。紅渡です」
フェイト「紅・・・・・・あぁ、仮面ライダーキバっ!!」
(ピンポンピンポンピンポーン♪)
恭文「すみません、もう勝手にキバットバットV世とかタツロットとか登場させてしまって」
渡「あ、ううん。というか僕の方こそごめん。
キバットとタツロットにも、注意はしたんだけど全く聞いてくれなくて」
恭文「あぁ、そうなんですか。やっぱりそうなんですか。僕達も同じくなんですよ」
渡「どうも恭文君達のところがそうとう気に入ったらしくて、また遊びに行きたいとか相談してるんだよ。・・・・・・どうしよう」
恭文「いや、僕達の方は別にいいんですよ。ただ、渡さんにご迷惑をおかけしてないかというのが、すごく心配で」
フェイト「あの、二人ともちょっと待とうよっ! これStS・Remixだからっ!! なんでいきなりこんな雑談っ!?」
恭文「何言ってるのよ。なんだかんだでご迷惑はおかけしてるし、ちゃんと謝る必要あるじゃないのさ」
渡「あの、僕もこちらに挨拶しなきゃいけないかなと思っていたので、問題はないです」
フェイト「二人とも一体どこのお母さんなのかなっ! というか、そういうことじゃないんだよっ!? 絶対そういう事じゃないからー!!」
キバットバットV世「人へんに『夢』と書いて、『儚い』と読む」
(・・・・・・え?)
キバットバットV世「人が持つ夢はそれほど脆く、壊れやすいものなのかも知れない。
でも、だからこそどんなに小さな夢でも、自分の手で大切に育てていかなきゃいけないという意味にも捉えられる」
タツロット「そんな風に夢を大切にしていれば、いつかみんなのこころから、しゅごキャラのみなさんのような子が生まれるかも知れませんよ〜?」
恭文「またお前らやってきたっ!? てか、平然と出てくるなっ!!」
渡「キバット、タツロットもまた来て・・・・・・だめじゃないかっ! 恭文君達に迷惑がかかちゃうだろっ!?」
キバット「はぁ? 何言ってんだよ渡。やっちゃん達は俺達をすっげー歓迎してくれてるぞ?」
タツロット「そうですよ。私達、もう大親友ですし」
恭文「ふざけんじゃないよっ! そんな簡単に大親友になんて、なれないのよっ!?
てーか、なれたら普通になのはは砲撃撃ってお友達作りなんてしないってーのっ!!」
キバットバットV世「というわけで、StS・Remixいくぜー! ウェイクアップッ!!」
タツロット「フィーバァァァァァァァァァァァァァッ!!」
渡「二人とも、お願いだから僕達の話を聞いてくれないかなっ!!」
恭文「あれかっ! お前らの頭の中がフィーバーってわけっ!? でもだからって勝手に話進めるなー!!」
フェイト「というか、二人ともいきなり締めないでー! あぁもう、これどうなってるのー!?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・人間、頑張ればなんとかなるもんだね」
そう、やっと到着した。あと5分だったはずなのに、数話ループしまくってやっと到着した。
紫と白の縞々の模様の壁がとっても気色悪い、戦闘訓練スペース。
いや、苦労したねぇ。そして、ここからは思いっ切り苦労しそうだわ。
主に、視力的な意味合いで。まぁ、広さは十分なのが、救いかな?
・・・・・・とりあえず、全員得物を構える。私は、当然アメイジア。
で、シャナは二丁拳銃。ギンガちゃんは、左手のリボルバーナックル。
シャッハは、両手のヴィンデルシャフト。そして、ドンブラ粉は素手。
「・・・・・・いやいや、ちょっと待ってっ!? アンタなんで武器ないのっ!!」
「あなた、やる気ないんですかっ!? それはおかしいでしょうっ!!」
「だから、投降するつもりだったって言ったじゃんっ! 普通に私は武器ないよっ!!」
やばいな。その上、この子ってマジで地面潜ることしか出来ないんでしょ?
だったら・・・・・・あ、そうだ。あの手があるじゃないのさ。
「うし、ドンブラ粉。だったらアンタは地面にずっと潜ってなっ!!」
「ヒロリスっ!?」
「で、チャンスが来たらあのデカブツの足を引っ掛けて、コカせっ! それで、私らが全部終わらせるっ!!」
目を見ながらそう言うと、ドンブラ粉は頷いた。・・・・・・まぁ、これでいいでしょ。
それだって、相当危険な仕事になるんだしさ。でも、出来れば一気に逆転だ。
「分かったっ! それじゃあ、それまでよろしくっ!!」
そのまま、歯車形のテンプレートを発生させて、地面にダイブ。
ドンブラ粉は地面に潜っていった。・・・・・・さて、ここからだ。
「・・・・・・これだけでも、一大決戦という感じですね」
シャッハが言いながら見るのは、私らににじり寄る死神とガジェットの大群。
「だけど、負けられません。・・・・・・そうだ、絶対に負けられません」
ギンガちゃんもゆっくりと構える。構えてすぐに、足元からベルカ式の魔法陣が生まれた。
「てーか、絶対死ぬもんか。私は可愛い男の子の上で腹上死が理想なのよ」
なにやら凄まじく不謹慎なことを言っているシャナは、無視。
・・・・・・やっぱ、ボンテージ女より呼びやすいな。
≪それじゃあ、姉御≫
「あぁ。・・・・・・行くよっ!!」
私らは、前に踏み込んだ。ようやく・・・・・・ようやくここから反撃だ。
さぁて、ここからが私らのRemixの始まりだっ! 派手に行くよっ!!
魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix
とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常
第37話 『切り札は、消えること無きこころのヒカリ』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・アイゼン、大丈夫、か?」
≪問題有りません≫
とりあえず嫌がらせは出来た。出来たけど、無茶苦茶痛い。
一歩一歩踏みしめるだけで、身体から何かが零れ落ちてる感じがする。
いつもだったら、軽くひとっ飛びな距離なのに。もうすぐ目的地な距離なのに。
今はその距離が、とてつもなく遠く感じる。・・・・・・それでも、一歩ずつ進む。
例え遠く感じても、足を進めれば確実に近づいていけるから。なんでも、そうなんだよ。
「くそ、やっぱフラグ踏み過ぎてるな。バカ弟子は、そこの所上手くやってるってのに。
・・・・・・よし、今回の事が終わったら、アタシはもうちょっとなのはを放置する」
アレだ、アタシの死亡フラグ乱立は、全部アイツ絡みの発言だしよ。さっきなんて、モロだし。
・・・・・・軽く冗談でも言って、気分を上げてないとすぐに意識を持ってかれそうだわ。これ、中々辛いな。
「アイツが泣いても、もう絶対優しくしねー。空でアイツを守るなんて、もう死んでも言うか。てーか、自分の事くらい自分で守れ。
アタシは、仕事もプライベートも充実した女を目指してんだ。一度だけのアタシの時間だし、徹底的に満喫するんだ」
扉も、敷居も何もない門をアタシはくぐる。
そうして見えたのは・・・・・・赤く、禍々しささえ感じさせる色で輝く巨大な宝石。
「あのバカ絡みで死亡フラグ乱立でそれがパーなんて・・・・・・ぜってーごめんだし」
ようやく、到着した。・・・・・・これが、ゆりかごの動力炉。
アタシはそれを見据えながら、アイゼンを両手で構える。
「アイゼン、リミットブレイク・・・・・・やれるな?」
≪はい≫
「んじゃ、始めるぞ」
その声に答えるように、アイゼンが紅く輝く。輝いて、ヘッド部分が変化した。
銀色の六角形のボディに、金色のドリル。そして、後部には巨大なブースト。
グラーフアイゼンのリミットブレイク、ツェアシュテールングスフォルム。
なお、これの使い道は・・・・・・見てりゃあ分かる。
「アイゼンっ! ぶっ飛ばして」
力を込めて、ありったけで上に飛ぶ。飛んで、アタシはアイゼンを上に振りかぶる。
アイゼンの柄が、何倍にも伸びる。それに伴ってヘッド部分が、アタシの身体くらい大きくなった。
「行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
カートリッジを、1発ロード。それに呼応するように、ドリルが回転を始める。
続けてヘッドの後部のブースターが点火。それにより、アイゼンが加速する。
その加速に乗せて、唐竹に動力炉に向かってアイゼンを叩き込んだ.。
接触部から、火花が上がって・・・・・・つか、硬ぇ。予想以上に、カッチコッチだし。
そう思った次の瞬間、接触部が爆発。アタシは後ろに下がった。
「・・・・・・やったか?」
この形態は、こういうためにあるんだよ。巨大建造物の破壊を目的とした形態。
対人戦闘には、ちょっと使いにくい形態ではあるな。重いしよ。
アタシは、爆煙に視線を向け続ける。爆煙が晴れて・・・・・・動力炉が見えた。
動力炉は無傷だった。本当に傷ひとつ付いてない。
「あー、またフラグ踏んだか。しゃあねぇ、もう一発」
『動力炉内部に、侵入者の存在を感知』
攻撃を打ち込もうとした途端にビービーと音が鳴り響き、赤い照明が動力炉の部屋で点滅する。
そして周囲に、青色の四角いキューブが幾つも現れた。
『警戒レベルを1ランク引き上げ。自動迎撃システム、発動。侵入者を排除せよ』
なるほど。これがその自動迎撃システムってわけか。まぁ、そうだよな。
いくらなんでも、ここまで丸裸はおかしいか。こういうシステムがあって当然だ。
「・・・・・・上等だ」
アタシは、アイゼンをしっかりと両手で持つ。持って振りかぶって、右肩に担ぐ。
さて、気合いを入れろ。ここでぶっ倒れたら、ここまで来た意味がねぇ。
「お前ら全員、纏めてぶっ潰してやるよっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
≪・・・・・・しかし主、これからどうします?≫
俺がドゥーエとの愛の語らいの時間を壊した事に苛まれていると・・・・・・うん、壊したんだ。
ぶっ潰してしまったから、語らってたらドゥーエはお亡くなりだし。で、そんな時に普通に金剛がツッコんできた。
「どうするも何も・・・・・・左腕はバカになってるし、ドゥーエはどっか運ばないといけないだろうし」
「私なら大丈夫よ。これでも・・・・・・丈夫な方、だから」
そうして、ドゥーエがよろよろと・・・・・・あぁ、ダメだから。口から吐血しまくってるのに。
≪とにかく、まずは治療ですね。・・・・・・これは≫
「金剛、どうした?」
≪ドゥーエ女史、済みませんが確認をお願いします≫
「え?」
金剛が通信画面を開く。そこに映るのは、ナンバーズのスーツを着た女。
明るいブラウンの髪をヒロみたいに結わえて、メガネをかけている。・・・・・・あ、見覚えあるぞ。
≪現在、全チャンネルで流されている映像です。発信元は、察するにゆりかご内部。
ドゥーエ女史、この女性はあなたの仲間で間違いありませんよね≫
「えぇ。私の妹でクアットロよ。でも、それがどうしたのよ」
≪そのあなたの妹が、スカリエッティを裏切りました≫
『・・・・・・はぁっ!?』
と、とにかく俺らは通信画面に目を向けて、話を聞くことにする。
ドゥーエは特に真剣にだ。目がまたお仕事モードに突入している。
『クアットロ、なぜ・・・・・・なぜだ?』
この声は、スカリエッティ? ・・・・・・なんか状況が読み取れないんだが、どうしてこうなった?
『なぜ? ・・・・・・ふふふふ、あはははははははははははっ! まさか、本当に気づいてないと思ってたのっ!?
あなたが考えていたことなんて、ぜーんぶ私はお見通しっ! あなたも結局、出来損ないのお人形だったっ!!』
髪を解く。それからソイツは、メガネを外す。下ろされた髪が、画面の中で靡く。
・・・・・・あ、悪女だ。間違いなく悪女モードだ。もう見たまんまだし。てーか、毒々しい妹だな、おい。
『というわけで、ポチっと♪』
女は、何かのスイッチを押したらしい。・・・・・・特に、変化はないよな。
『・・・・・・なんか揺れ出したっ!? てゆうか、障壁出てるっ!!』
『これ、通路が閉じられてるのっ!? ううん、それだけじゃないっ! また魔力が完全キャンセル化されてるっ!!』
あ、やっさんとフェイトちゃんの声だ。てーことは、スカリエッティと一緒に居る?
『こらヘタレドクター! これどういうことっ!? てーか、おのれがヘタレだからいきなりこれなわけですかっ!!』
『ヘタレと言うのはやめてもらえないかっ!? というより、恐らくだがそれは関係ないっ!!』
『いいや、関係あるでしょっ! おのれがヘタレだから、この状況に違いないっ!!』
『君はなぜそこまで言い切れるっ!? そして、フェイト・テスタロッサもそんな厳しい視線はやめてくれっ! 私は本当に何も知らんっ!!』
おいおい、なんか仲良さそうだなっ! 普通に漫才してるんじゃねぇよっ!! お前らは軽く因縁の敵同士だろっ!?
それでスカリエッティってこんなキャラなのかっ!? 俺、色々ガラガラ崩れてるんだけどっ!!
『ドクター、ヘタレ・・・・・・いいえ、屑なあなたは、もう用無し。
だから、そのまま欠陥品共と一緒に、死んじゃってねー♪』
『クア・・・・・・トロ、お前、ドクターを・・・・・・裏切る、のか』
「・・・・・・ドゥーエ、これは誰の声? なんかズタボロな感じがしてるんだけど」
「私のすぐ下の妹よ。でも、なによこれ」
さぁな。てーか、そこは俺が聞きたい。主に、スカリエッティのキャラがおかしいことについてとかさ。
もしかして俺ら全員、一種の外キャラでコイツを見てたとか? あぁ、それならありえそうだわ。
『裏切る? もう、トーレ姉様のお・ば・か・さ・ん♪ 私達を裏切っていたのは、ドクターでしょ?
私達の存在意義を、夢をあっさりと捨てて、くだらない屑どもの世界に迎合しようとしたんだから』
とりあえず俺はドゥーエも見る。相当に困惑顔。綺麗な顔が、色んな意味で台無しだった。
「クアットロ、何故なの? あの子がドクターを殺そうとするはずがない。いえ、殺してはダメなのに」
「どういうことだよ」
「ドクターは元々私達の中に、自身のクローンを仕込んでいたわ。サリエル、あなたなら分かるわよね」
「・・・・・・あぁ、分かったわ」
古代ベルカ時代の王族は、身近な女性にそういうものを仕込んでた。
で、本人が死んだら、本人の記憶を引き継ぐ形で、そのクローンが出産される。
そのクローンは、1年以内に死んだ当時の姿になる。つまり、スカリエッティも同じってことか。
そういう保険を、万が一のために仕込んでた。生態技術に強いって言うし、ここは当然か。
「でもドクターの意向で、そのクローンは全部処分されたの。もちろん、私に仕込んでいたのも含めて」
「つまり、今アジトでやっさんと楽しく漫才やってるスカリエッティ本人が死んだら」
「そう、そのまま死亡よ。だから、こんなことをするはずが」
だけど、ドゥーエの疑問は無意味だった。遠慮なく、爆弾が投げられたから。
『あぁそれと・・・・・・そこのドクターのなり損ないはもういらないから、あなた達にあげるわ。
ふふふ・・・・・・もう、それはドクターじゃないから、いらないの。だってドクターは』
ドゥーエの妹の悪女はいとおしそうに、本当に愛情を持った顔で自分のお腹を擦る。
それを見て、俺は寒気が走った。ドゥーエも同じなのか、顔が青くなった。
『ここに、居るんですもの』
ま、まさか・・・・・・! コイツだけ、クローンを仕込んでるのかっ!?
だから、本物のスカリエッティを見捨てても全く問題がないっ!!
い、いやいやっ! それなら記憶の引継ぎはっ!?
死亡直前の記憶データが、こういう処置の場合胎児に送られるはずだっ!!
『あ、不必要な記憶の引継ぎはしないから、ご心配なくー♪』
俺の淡い期待は、あっさり砕かれた。そう、なるよな。
そうしなかったら、ヘタレドクターが生まれることになるしな。
『私から産まれてくる子は、今度こそ『ジェイル・スカリエッティ』になる』
どうやらこのクアットロという女からすると、今ここに居るスカリエッティは偽物らしい。
というか、失敗作か? ・・・・・・なんつうか、自業自得とは言え哀れだな。
『ジェイル・スカリエッティは、決してあなたのように自分の役目も果たせない欠陥品じゃない。
あなたは・・・・・・もういらないのよ。分かるぅ? ドクターの偽者ちゃん♪』
う、うわぁ・・・・・・またキツイボール投げるな。何かが崩れ落ちた音がしたし。
『あなたは結局なり損ない。ジェイル・スカリエッティになれなかった。じゃあねぇ、ドクターの偽者。
それと・・・・・・欠陥品共。神の母と最後に会話出来た事、光栄に思いなさい』
通信が切れた。なんというか重い。空気が重い。
普通にドゥーエがフルフルと拳を握り締めてる。なお、すっごい怖い。
「・・・・・・殺す」
「あぁ、ドゥーエ落ち着けっ! 確かに色々と問題だが、とりあえず落ち着けー!!」
ボロボロの身体で、拳を握り締めてたので、必死に止める。
俺もボロボロだが、それでもドゥーエよりマシだ。
「あれほど言っておいたのに。『ドクターは夢を育て、私達はドクターを育てるのよ』と。それなのに」
「お前は一体どこのマイメロママだよっ! それ以前に、育て方違くねっ!?
お願いだから、もうちょっと真っ直ぐに育てろよっ! 選りにも選って、なんでこの道進ませたっ!!」
「気にしたら負けよ」
んなニコ動のタグみたいな事言うなよっ! ここを気にしない人間は、絶対居ないからなっ!?
居たら、ぜひお目にかかりたいしっ! ほら、読者だって『うんうん』って頷いてるだろっ!!
「私としては、ぜひとも志々雄やディオみたいな一流の悪党になって欲しくて厳しくしてたんだけど」
きゃー! そっちの方向性かっ!! でも、それは色んな意味で間違ってないかっ!?
「・・・・・・はぁ」
「そんな『仕方ないなぁ』的なため息吐くのやめてくんないっ!?
あぁもう、どっからツッコめばいいんだよっ! これっ!!」
・・・・・・もういい。きっとこれはアレだ、『どうしてこうなった』だ。そして、『ツッコんだら負け』だ。
しかし、アレはなんつう性悪女だ。アルトアイゼン、超えてるんじゃないのか?
≪それと主、問題が≫
「なんだよ、今度はなんなんだ? それは今の俺でも解決出来ることか?
ついでに言うと、ツッコミはもう無理だぞ? 今日はもう疲れ切ってんだ」
≪残念ながら無理です。そして、更に残念な事にツッコミが必要な事態です≫
疲れがドッと増したのが、分かった。てーか、普通に辛いんですけど。
なぁ神様、俺がなんかやったか? 特に何もしてないと思うんですけど。
≪六課関係者への全体通信を傍受しました。
ゆりかご内部に突入した高町教導官とヴィータ教導官と、連絡が取れなくなったそうです≫
「はぁっ!?」
それに、俺とドゥーエは顔を見合わせる。・・・・・・待て待て、ありえなくない?
「それもクアットロの仕業かしら。なお、私はゆりかご内部の戦力に関してはノータッチよ?」
≪納得しました。・・・・・・現状では、そこまでは分かりません。
ゆりかご内部の戦力は、やはり相当数のはずでしょうから。ただ、これだけは言えます。彼女は≫
「今日が始まるずっと前から、ジェイル・スカリエッティを見限るつもりだった」
だから、処分命令が出ていたはずのコピーも仕込んでるし、アジトを自爆させようとしてる。
で、最悪なのはドゥーエの怒りの対象であるクアットロが、ゆりかご内部に居るってことだ。
そう、あのチートな船の中は、まさしくあの女とスカコピを守るゆりかご状態。
・・・・・・ゆりかごが軌道ポイントに到達したら、マジで手の出しようがないぞ。
あのタイプは、躊躇いなく地表に精密爆撃を行う。それも、笑いながらだ。
「・・・・・・やっぱり殺すわ。というか、教育係としてしっかりと仕置きしなくちゃ。あれほどドクターを育てていけと」
「だから、拳握り締めるのはやめてくれっ! 普通に俺は怖いんだよっ!!
あと、色々な事情を鑑みても、育て方違うからなっ!? 妹殺す前に、まずそこを反省してくれよっ!!」
ドゥーエは俺の言葉にため息を吐いて、視線を落とし気味にあらぬ方向を見つめ始めた。
「サリエル、知ってる? いい女は、過去に囚われないものなのよ」
「あぁそれは良いことだなっ! でも、今は囚われていいんだよっ!!
今だけは、過去に囚われても振り返ってもいいんだからなっ!?」
≪・・・・・・それで主、どうしましょうか≫
「そしてお前は冷静だなっ! ツッコんでいい所だと思うぞっ!? ここはっ!!」
どうするっつったって・・・・・・俺は左腕コレだろ? 普通に戦闘は無理だよ。
だったら、俺が出来る事をやるしかないか。とりあえず・・・・・・よし。
「金剛、やっさんとフェイトちゃんと八神部隊長とアコース査察官に連絡。通信をすぐに繋いでくれ。
あと、アースラに居るシャーリーちゃんにもだな。ドゥーエ、少し手伝ってもらうぞ」
「手伝うって・・・・・・サリエル、あなた一体何をする気?」
「お前の上司を助けるんだよ。デートの前の追加残業、俺が手伝ってやるよ」
なんつうか甘いよな。結果的に、スカリエッティを助けようってんだから。
まぁいいか。誰かを助けるのに論理的思考はいらないって、名探偵コナンも言ってたしよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・つーわけだ。やっさんとフェイトちゃんは、すぐに救援に向かってくれ。
アジトの崩壊は、ここから俺主導で止める。というか、もうハッキングしてる」
通信はなんとか繋がった。で、なんでこんな事になったかも聞きつつ、俺のやることを説明する。
俺は、元々こういうのが得意なんだ。だから、ここからでも遠慮なくやれる。
『でもサリさん、これ以上あなたのお力をお借りするわけにはいきません。
端末のコントロールをこちらに渡してください』
「渡して、どうする」
『アジトの崩壊は私とシャーリー、アコース査察官で必ず止めてみせます。ですから』
フェイトちゃんが、それはダメだと言いたげな顔で俺を見る。
・・・・・・まぁしゃあないか。俺はロートルだしよ。だけど、今回は引けない。
「いいから行け。てーか、引退組とかなんとか言ってる場合じゃない。
ゆりかごの方、八神部隊長に確認したら、かなりやばいらしい」
とりあえず、有無を言わさずに現状を吐かせた。・・・・・・まず、部隊長はゆりかご外の部隊の指揮のために動けない。
ようやく到着して内部に入った本局の突入隊も、二人を発見出来ない。というか、ガジェット達に足止めされまくってる。
で、シグナム二尉は地上本部付近でリインちゃんと忙しそうで、廃棄都市部も怪獣大決戦。
ようするにこの状況でようやくフリーになったのは、マジでやっさんとフェイトちゃんだけなんだよ。
その二人がここで足止めを食らってたら、中の二人がどうなるか分かったもんじゃない。
『そっちにはヤスフミを向かわせます』
「バカ。アンタら、閉じ込められてるんだろうが。まさかやっさん一人で、障壁ブチ壊しながら進めと?
いくらゼロタロスがあるからって、外に出る頃にはやっさんの魔力と体力がエンプティになるぞ」
確かに、俺とヒロで相当鍛えたさ。それにより、今までに輪をかけて相当しぶとくなった。
でも、それだって限度ってもんがある。それやった後でゆりかご突入は、キツ過ぎるだろ。
『大丈夫です。・・・・・・一つ、切り札がありますから。
誰でもない、ヤスフミ達だから切れる最強の切り札が』
「へ?」
なお、この時点で俺はキャラなりやらしゅごキャラの事をさほど知らなかった事は、留意してもらいたい。
つーか、分かるわけないだろっ!? いくらなんでも無茶苦茶過ぎるっつーのっ!!
『それに危ない状況になってる理由も、推測がつきます。・・・・・・ヴィヴィオ、なんです』
高町教導官の保護児童の名前が、いきなり出てきた。待て待て、それってどういうことだ?
『スカリエッティからヤスフミが聞き出したんです。・・・・・・どうも、意気投合してるみたいで』
あぁ、だろうな。なんか通信ですっげー漫才してたし。俺、聞いてビックリしたし
『なんだか、電王の映画を一緒に見る約束までしてます。スカリエッティ、ファンらしくて』
そこまでかよっ! てーか、スカリエッティって電王ファンなのっ!?
あぁ、マジで外キャラだったんだっ! 俺の中のスカリエッティ像が崩れるー!!
『とにかく話を戻しますね。・・・・・・ヴィヴィオには学習能力があったそうなんです。
そして、そんなヴィヴィオにレリックを埋め込んで操ってる』
「そのコントロールは、あの性悪女か?」
『はい』
あれ、なんだろう。凄まじく嫌な予感がしてきたんだが。
『そしてこうも言ってました。ヴィヴィオは、玉座でなのは達と戦闘に突入している可能性があると』
「ゼスト・グランガイツやルーテシア・アルピーノのように、ウェポン化してるってことか。
というかちょっと待て。フェイトちゃん、学習能力ってなんだ?」
『周囲に居る人間の魔力データや、魔法技能を無意識に学習する能力です。
それでヴィヴィオは私やなのはにリイン、それに・・・・・・ヤスフミの近くに居ました』
「・・・・・・なるほど、そういう事か。つまり、やっさんの能力を学習していると」
てーか、それはマジでヤバいだろ。高町教導官やフェイトちゃんはまだいいさ。
だた、やっさんの先天能力は資質の問題で能力を100%活かしきれてないだけで、それ自体はチートだ。
瞬間詠唱・処理能力に、魔力のコントロール技術。これだけでも脅威。
というか、普通にやっさんはオーバーS用に高火力攻撃ばかりを揃えてる。
そんなのをマトモに相手取ったら・・・・・・あぁ、確かに反応も消えるわ。
『そうなった場合、同じ能力を持ったヤスフミなら対抗出来るかも知れないんです。
ヤスフミの今の能力は、私よりサリさんの方がご存知のはずです。だから、大丈夫です』
≪・・・・・・それでは意味がありません。というより、危険過ぎます。
まさかあなたは本気で、蒼凪氏に一人で暴走ヴィヴィオ女史と戦えと言うのですか?≫
金剛の言葉に、フェイトちゃんが息を詰まらせた。一応、そこは分かってるらしい。
・・・・・・フォン・レイメイの事があったんだから、この人だって分かるはずだ。
今のヴィヴィオちゃんの状態が、どんだけ危険かをな。
それでやっさんだけ向かわせても、ぶっちゃけ焼け石に水。それでどうにかしろなんて、無茶振りだろ。
てーか、ハッキリ言えば悪手打ちだ。俺がもし同じことを言われたら、遠慮なく両手を上げる。
「・・・・・・戦略レベルの戦場においては、ストライカーやエースなんて存在しない。アンタなら分かるだろ」
そう、一騎当千のエースも、希望であるストライカーも、この状況では全く意味を成さない。
いや、本来ならそんなもの、戦場には存在しない。するはずがないんだ。
やっさんは、確かにエースレベルではあると思う。でも、それで一人向かって全部助けろ?
何度も言うが、今のフェイトちゃんの判断は無茶振りもいいところ。本当に焼け石に水なんだ。
『それは・・・・・・その』
それが内心分かってたから、フェイトちゃんだって戸惑いをようやく見せた。
まぁ、一人より二人ってことだ。二人なら、手だって倍伸ばせるしな。
「だから行け。やっさんが極力消耗せずに外に出られる切り札あるって言うなら、なおさらアンタも一緒の方がいい」
だから、俺はここまで言う。これ以上こんなバカなことで誰かが死ぬとか、馬鹿馬鹿しい。
クアットロってのは、マジで人を手ごま程度にしか思っていないようだ。普通にやらかしてくれてる。
これは・・・・・・あぁ、やっぱり俺のためだな。あぁいうタイプの邪魔は、本能的にやりたくなる。
向こうから見えない位置に居るドゥーエを、横目で見る。ドゥーエは、決意した顔で頷いた。
・・・・・・そう、ドゥーエにも手伝ってもらう。クアットロの教育係だったらしいから、やり口は分かるはずだ。
で、アコース査察官が説得したおかげて、ナンバーズの1番も手伝ってくれるらしい。
これだけ居れば大丈夫だろ。てーか、絶対に大丈夫にさせる。
あんな奴の思い通りなんて、気持ち悪いことこの上ない。絶対に勝手させるか。
「・・・・・・確実に誰も死なせたくないと思うなら、俺を徹底的に利用しろ。
大丈夫、気に病む必要はない。アンタには今に限り、その権利がある」
『え?』
「俺は、大事なダチの家族で、仲間で、彼女のアンタだったら、徹底的に利用されてやるよ。
てーかよ、仮にもパパとママその2なんだろ? だったら助けてやれ。あの子は、お前らの娘なんだから」
なお、執務官で局員のフェイトちゃんだったら、ここまで言わないのであしからず。
・・・・・・そこまで言って、ようやく画面の中のフェイトちゃんは、決意した表情で頷いてくれた。
『・・・・・・分かりました。それじゃあ、私達はすぐに向かいます。サリさん、すみません』
「いいさ別に。・・・・・・あ、やっさんのことよろしく頼むぞ? ちゃんとフォローしてやってくれ」
『はい、必ず』
『ちょっとっ!? 僕は子どもじゃないんですけどっ!!』
そして、やっさん達との通信を終える。・・・・・・さて、始めますか。
時間は、多分そんなにない。全力全開で止めなかったら、ドゥーエの上司はそのままお陀仏だ。
「シャーリーちゃん、アコース査察官、お待たせ。話は纏まった」
『はい、大丈夫です。いつでもいけますよー』
『こちらも、問題ありません』
「うし、それじゃあ早速・・・・・・ぶっ飛ばしていくぞっ!!」
・・・・・・俺の戦いは、ここからが本番だな。なお、打ち切り最終回のフレーズでもなんでもない。
左腕の分は、ドゥーエに補ってもらう。ドゥーエは、右腕がダメだが左腕が動く。ちょうどいいんだよ。
さて、内部にはヒロやシスター・シャッハも乗り込んでるって言うし、気合い入れていくぞ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・まさか、君まで手伝ってくれるとはね」
「勘違いしないでください。決して、あなた達管理局組のためではありません。・・・・・・ドクターのためです」
僕はウーノの束縛を解いた。崩壊を止めるためには、彼女の力も必要だから。
彼女はスカリエッティのもう一つの頭脳だもの。当然、このアジトの事についても熟知してる。
「でも、彼は君達を騙していたんだよ?」
「それでもドクターが私達の創造主で、親であることは変わりません。
そして私はドクターの力になると、夢を叶える手助けをすると、決めています」
両手を広げて、鍵盤型の空間キーボードを出す。どうやら、これがここの端末へのアクセス器らしい。
「というより、あなたは一つ勘違いをしているようですね」
「勘違い?」
「ドクターは私達を騙してなどいません。もちろん裏切ってもいない。
ただ・・・・・・夢の形が変わっただけ。そう、ドクターは進化なさったんです」
どこか、誇らしげに彼女はそう語る。語りながら、指を動かしていく。
「そして思いがけない進化について、一人で思い悩んでいただけ。
私はそう思っています。もちろんしっかりとお仕置きはしますが」
「いや、それはやっぱり怒ってるよね?」
「違います。・・・・・・私はドクターの娘で、長女で、妹達の姉ですから」
指を動かしながら、躊躇いもなくそう言い切った。・・・・・・それを聞いて少し思った。
もしかしたら彼女達は僕達が思っていたよりもずっと、機械的ではないのかも知れない。
現状はまぁ・・・・・・問題だとするよ? というか、大問題だよね。ただ、それでもなんだよ。
彼女が今、スカリエッティや各地で暴れていたナンバーズのみんなを指して、家族だと言った事。
それが言葉だけのものとは、どうしても僕には思えなかった。きっと、彼女達の中にもあるんだ。
家族を思い、その幸せを願う心が。ただきっと・・・・・・少しだけやり方を間違えただけ。
というかさ、僕達はこれに対しては何も言う権利がないよ。
だってこれ、管理局上層部がきっかけで起きた事件なんだしさ。
だから僕は反省した。今の自分の考えが、とても上から目線の物だと感じたから。
どっちもどっち・・・・・・でいいよね。ほら、ケンカ両成敗って言うしさ。
「そう。・・・・・・とにかくウーノ、よろしく頼むよ? 崩壊を止めるためには、君の力が絶対に必要だから」
「言われるまでもありません」
フェイト執務官と恭文は、もう外に移動を開始している。というか、どうやって出るつもりだろ。
とにかく、出られたら外で待機していた騎士に転送魔法が使えるスタッフが居るから、それで一気に跳ぶ。
まさかこんなに早く、スカリエッティの戦闘機人と共闘する形になるとはね。まぁ、いいかな。
これはこれで、楽しいから。うん、これはきっと、これから仲良くなっていけるフラグだね。
誤解の無いように言っておくと、ウーノと僕がじゃない。・・・・・・僕達、みんなでだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
サリさんやヴェロッサさんに後を任せて、僕達は外を目指す事になった。
なお、ギンガさんとシャッハさんは大丈夫らしい。色々修羅場らしいけど。
そして、僕は・・・・・・頭を抱えていた。正直、やりたくないから。
でも、魔力を消耗せずに外に出るためには、これしか方法が無い。この能力は、魔法のそれとは違うんだから。
それで、脱出には迅速にという条件が付く。この場合、ゼロタロスや555ジャケットを装備してたとしても、アウトだ。
ここから出口までイチイチ幾つあるかも分からない障壁破りながら走ってたんじゃ、真面目に時間がかかる。
その間に、師匠もなのはもスプラッタな状況になってるかも知れない。
それじゃあ助けに行っても意味がない。それなら、脱出は無しの方がいいって。
ここで崩落止めてるか、別ルート探してる方がよっぽど効率が良い。
だから、『最短ルートで一気に脱出』するつもりなら、覚悟をもう決めるしかない。
「シオン、ヒカリ、転送魔法みたいな能力は」
「以前試した通りだ。シオンもそうだが、私も現時点では使えない。
つまり、この趣味の悪い障壁を破壊しながら進むしかない」
「そしてそれを可能とする手段は一つ。お姉様とのキャラなりです」
その言葉を聞きながら、僕は見る。僕達が来た道を塞ぐ緑色の障壁を。
網の目のように張り巡らされたそれは、趣味のいい色合いの鉄格子のようにも見える。
「ヤスフミ、あのけばけばしい蛍光色は趣味良くないよっ!?
・・・・・・あぁ、やっぱりセンスが。センスがダメなんだ。よし、ここは修正しないと」
「失礼な。僕は普通にハイセンスだよ」
僕は、立ち上がって右拳をギュッと握り締める。
「てゆうかさ、フェイト。なんか僕達、余裕あるよね」
「そうだね。きっと、一人じゃないからかな」
言いながら、フェイトが場違いに笑う。それを見て、僕も釣られたように笑ってしまった。
だからかな。ちょっとだけ迷ってた気持ちが、固まった。
「そうだね、一人じゃない。だから・・・・・・鍵を、開けられる」
僕は、両手を胸元に持っていく。そして、手を開いた。
「ヒカリ、行くよ」
「あぁ」
この状況で求められるのは、スピードと遠距離まで届く破壊力。この場合、シオンではなくてヒカリだ。
シオンとのキャラなりは、どっちかって言うと個人戦主体の能力だから。
「僕のこころ」
両手を動かし、僕は鍵を開けた。自分から生まれる可能性を信じる事で、鍵は開かれる。
開かれた世界から溢れるようにして飛び出した輝きが、僕を包み込む。
「アンロックッ!!」
その瞬間、僕の身体が黒い光に包まれる。ジャケットは、全て一旦解除。
ヒカリはそれに反応するように、スターライトのたまごに包まれる。
左手を伸ばし、手の平の上に星の光のたまごを乗せ、胸元に持っていく。
すると、たまごは吸い込まれるように、僕と一体化した。それから、僕の姿が変わっていく。
両手には、黒の指出しグローブ。上半身に、黒に黄色のラインが入ったインナーを装備。
リインのジャケットのそれに似ているものは・・・・・・というか、基本そのまま。腰のフードまである。
色だけが違うインナーを装備すると、右足にハイソックスを装着。両足には、黒のブーツ。
上から、黒色の半袖のジャケットを羽織る。それから、髪にも変化が現れる。
髪は銀色になり、腰まで伸びる。そして、ゆっくりと瞳を開ける。
瞳は、つや消しの赤。そのまま、ゆっくりと微笑みながら、左手を左薙に振るう。
背中に、黒い4枚の翼が生まれる。左右の上下に二枚ずつで、上の羽が大きい。
その翼が勢い良く開くと、見を包んでいた黒い光は弾け、まるで雪のように降りしきる。
黒い羽も、同じように僕達の周りを舞う。その様子に、スカリエッティ達がビックリしたようにこちらを見る。
【「・・・・・・キャラなり」】
口から出てきた声は、僕の声ともう一つ。ただ、今身体を動かしてるのは、僕じゃない。
僕とキャラなりして、一体化したはずのヒカリ。うん、身体を乗っ取られてるの。
ついでに、なぜか胸元まで膨らんでいる。パッドの類だけど、それでも。
てーか、やっぱりなんか大きいんですけどっ!? シオンだってそこまでじゃないのにっ!!
【「ライトガードナー」】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・な、なんだそれは」
AMFによる魔力の完全キャンセル化でも使えるということは、あのベルトと同じものか?
いや、違う。それとは何かが違うと、私の心が告げている。・・・・・・心?
「そうか、お前達には私は見えてなかったな。だが、すまない」
それは、蒼凪恭文の声ではなかった。そしてその声を上げた男は、女性の格好のまま左手をかざした。
目の前に、黒色の光が集束されていく。あれは・・・・・・まさか、砲撃用のスフィア? バカな、魔力は完全に使えないんだぞ?
「お前達に説明する時間は、無いんだ。事情は大体察してくれ」
その声が無茶な事を言っている間にも、砲弾はどんどん大きくなり、人の胴程の大きさになった。
「更にすまないが・・・・・・捨ておく」
黒い姿の蒼凪恭文は、左手を右に振りかぶり、強く行く手を遮る障壁を見据える。
「レディアント」
そして、砲弾が更に大きくなり、彼の身体程の大きさになった。
その間、十数秒。どこまで大きくなるかと思っていたら、彼は鋭くその手の平を前にかざした。
「スマッシャー!!」
その声と動作に反応するように、巨大な砲撃は放たれた。それは、真っ直ぐに障壁に向かう。
いや、障壁と行く手を遮っていたガジェットV型の残骸にだ。黒い砲撃は、それらに着弾。
「フルブラストッ!!」
本来なら、アレは防衛用の障壁。そのために作られている以上、生半可な攻撃では砕けない。
ガジェットV型が通路を占拠しているのも、その強度に拍車をかけている。
だが、それらが黒い砲撃を遮ったのは、ほんの数瞬。
私が一度呼吸し、次の呼吸を始める頃に、その拮抗は崩れた。
奔流は目の前の障害を砕き、撃ち抜き、更にその後に続いていた障壁すらも数枚砕く。
轟音とガジェットの爆発音が響き渡り、それに耳を痛くしていると、彼とフェイト・テスタロッサが動いた。
「フェイト、いくぞ」
彼は手を引き、隣りにいたフェイト・テスタロッサを後ろから抱える。抱えて、そのまま飛び上がった。
『跳んだ』ではなく、飛んだ。背中の翼を羽ばたかせ、奔流と同じ色の羽を散らしながらも、身体が宙に浮いた。
「うん、お願い」
そのまま、高速で前へと飛び立った。そうして、障壁が再生するまでにその中を突っ切る。
もう、私達からは彼らの姿は見えない。私達は、振動し続けるアジトの中に取り残された。
「・・・・・・あとは救助待ちか。ふふふ、やはり彼らは面白い。
あれは実に興味深い。よし、あとで彼から教えてもらう・・・・・・いや、やめておこう」
何かが告げている。私の中にも、アレと同じ力を使えると。
例え使えなくても、確実に同じものが存在していると。それに気づけたからだろうか。
クアットロに見限られた事など、陳腐なものに思えてくる。
むしろ誇らしいくらいだ。だから私は、縛られながらも天井を笑いながら見上げていた。
「・・・・・・ドク、ター」
近くから声がかかる。視線を向けるまでもなく、それが誰の声か分かった。それは、トーレの声だ。
「なんなのですか、奴は。理解、出来ない。私には・・・・・・理解、出来ない。
私達が奴などに負けた理由も、あなたが奴を認めている理由も、理解・・・・・出来、ない」
認めている? ・・・・・・そうだ、私は彼を認めているのかも知れない。
彼と話したのは少しだけだが、何かが壊れていくのを感じた。
そして気づいた。壊れた先にあるもの、それが私の求めていた答えの一つだと。
・・・・・・だから、私はまた笑った。トーレの言葉を、嘲笑うように。
「なら、その答えをこれから私達全員で探す必要がある。
トーレ、セッテ、喜ぼうじゃないか。これで私達は、更に進化する」
誰かの人形には出来ない可能性を、引き出せる。きっとそれは、今の私達からすれば進化だ。
その結果紡ぐ未来が、彼らの都合のいいものかどうかは、正直保証出来ない。
「もう私達は、人形の時間を終わりにしなければならない。終わりにして、私達自身を始めなくてはいけない。
それが出来なければ・・・・・・何度戦っても、彼やフェイト・テスタロッサには勝てないさ。今日は、良い日だ」
「ドク、ター」
「そう、良い日だ。君達を振り回したのは本当に申し訳なく思うが、それでもそう思う。
・・・・・・やっと、私は私の時間を、始められるかも知れない」
だが、保証する必要もないな。私達の望む進化は、まだ白紙のページと同じなのだから。
もしここで生き残る事が出来たなら、ここから探していけばいい。その可能性は、私達の中にある。
だから、私は笑う。痛む身体も、縛られてる息苦しさも、全く気にならなかった。
・・・・・・ただし、この後で姉妹達にドツキ回される可能性に関しては、気にしまくっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
”・・・・・・お兄様”
”なに、シオン?”
現在、普通にキャラなりで身体をヒカリに任せてる。フェイトとハグ状態なのに、任せてる。
そんな時、僕の身体の肩口に隠れているシオンから、テレパシーが入る。
”ジェイル・スカリエッティは、本当に迷い子でしたね”
”そうだね”
でも、それで全部許されるわけがない。というか、絶対に許しちゃいけない。
アイツのやってきたことも、今回やらかしたことも、結局泣くのは、アイツ以外の人間なんだから。
”とは言え、最高評議会のあれこれを含めても、決して許されません。
救いなど求めることそのものが、愚かで傲慢とも言えます。ですが”
”ですが?”
”それでも、省みたこと。自分の意思で誰かに『止めて欲しい』と声を上げたこと。
それは評価するべきではないでしょうか。本当に・・・・・・本当に、少しだけ”
シオンは、そう思うわけですか。むむ、これは以外だ。何気にスパイシーキャラだと思ってたのに。
”てーか、随分甘いね。全力全開でぶった斬ると思ってたのに”
”あら、これでも私はシスターですよ? 容赦はないですが、慈悲は深いんです。慈悲は、全ての人間に与えられるべきです。
ただ・・・・・・その形が、その人にとって都合のいいものかどうかの保証は出来ませんし、それを拒否するかどうかも、個人の自由ですけど”
”・・・・・・左様で”
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
フェイトを抱えながら、私はアジト内部を飛行する。ガジェット・・・・・・出て来ていないのが幸いだ。
そして、恭文とシオンがやたらと静かだ。コイツら、何気に雑談してるな。
なんとなしだが分かってしまった。私達に全部任せて、のん気に話してる。まぁ、ここはいい。
今は目の前の状況だ。例の障壁は一定間隔の距離で発生している。
どうやらあのクアットロと言う女は、本気でスカリエッティを見限ったらしい。
何というか、完全にアレは中ボスの立ち位置じゃないか。ある意味では非常に不憫だ。
とにかくそれを撃ち抜くために私は、力を振るい続ける。
「ショート」
前方に砲弾を形成。それを即射していく。
先程の最大出力のそれとは違う、スピードと燃費重視の砲撃。
「スマッシャー!!」
黒い砲撃は、趣味の悪い色合いの障壁に穴を開ける。丁度、私達が余裕で入れるくらいの大きさ。
その中をすり抜けて、どんどん前に進んで行く。足を止めている余裕は、全く無い。
「スマッシャー! スマッシャー!!」
足を止めている時間はない。ガジェットや防衛設備による奇襲・・・・・・おっと。
「ヒカリっ!?」
右斜め上から、青い熱光線が飛んできた。私はその下を潜るように飛んで、それを回避。
床すれすれを飛ぶ事になったが、それでも無事。
「大丈夫だっ! スマッシャー!!」
回避しながらも砲撃を撃って、前進し続ける。フェイトに傷をつけないように、飛行軌道を慎重に選ぶ。
「スマッシャースマッシャースマッシャースマッシャースマッシャースマッシャースマッシャー!!」
飛びながらも、度々撃たれる熱光線を上に下にと避ける。
避けながら、ひたすらにショートスマッシャーを撃ち続ける。
続けて、私達は出口までもうすぐの所に来ていた。
ここまでは、なんとか無事に来た。あと・・・・・・少し。
「うぅ、ヒカリごめんね。私も飛べたりあの火力で攻撃出来たらいいんだけど」
もう、障壁がほとんどなくなっていた。自動迎撃システムによる攻撃も、無くなった。
油断はせずに私は真っ直ぐに飛ぶ。飛んでいる所に、フェイトがそう言って来た。
「この状況では仕方ないだろう。というより、これだけの数を相手にしていたら、出る前にエンプティだぞ?」
「ヒカリは大丈夫なの?」
「さすがに、出たら少し休ませてもらう必要があるな。・・・・・・フェイト、一ついいか?」
「何かな」
周りを警戒しつつ、飛行速度を緩めることなく私は・・・・・・フェイトの方を見ずに、一つの質問をしてみた。
「私のキャラなりを見た時にも驚いていたが、そんなに私はそのリインフォースにそっくりなのか?」
「・・・・・・うん。声や口調にしゅごキャラの時の姿も同じ。あ、体型は違うかな」
当然だ。しゅごキャラ時は、普通に体型がミニマムサイズだ。それは、キャラなりしている今も同じ。
身体は恭文のものだから、身長はそのままなんだ。そして、キャラなり時の胸はパットだ。
「でも、その姿も戦闘時のあの人そのままだから。というか、能力もだね。
遠距離攻撃や広範囲攻撃が得意なところも、本当にそっくり」
「そうか」
恭文がどういう意図でこの姿をイメージしたのかは、私にはやっぱりよく分からない。
だが、実際に会った事もないのに戦闘技能までそのままとは、どういう事だ?
「だけど」
「だけど?」
思わずフェイトの方を見そうになってしまったが、当然のようにそれは出来ない。
ただ、フェイトの声が今までより優しいものになったのを、私は感じた。
「最初はビックリしたけど、ヒカリが見えるようになってちょっとだけお話したりして、気づいた。
初代リインフォースとは当然だけど随分違うところも多いなって、シグナムと話したりしたの」
「そう、なのか?」
「うん。さり気なくツッコミが厳しいところ。好奇心旺盛なところ。
落ち着いてるように見えて、意外とそうじゃないところ。というか、何気に弱気な所がある」
何気に心に突き刺さる。色々と覚えがあり過ぎて、つい手の力が緩みそうになった。
「あ、悪い意味じゃないよ? それに気づいて、私達二人反省したの。
いちいちリインフォースの事を持ち出して、あなたに嫌な思いさせたかなって」
「いや、大丈夫だ。ただ、私の元になっているとしたら、どんな人か興味があってな」
「・・・・・・優しい人だよ。あ、そこもヒカリと似てるね。優しくて、強い人」
「そうか。なら、嬉しい」
やはり、会えないのは少し残念だ。どのような人物か、興味があったのに。
「それと、ヒカリ」
「なんだ?」
「出来れば手は、ちょっとズラしてくれると嬉しいかな。あの・・・・・・思いっ切り掴まれてるの」
どこか恥ずかしそうに言うフェイトの言葉に、私は首を傾げる。そして、傾げて今更気づいた。
私の右手が、フェイトの大きく柔らかで、温かい乳房を鷲掴みにしていることに。
「す、すまないっ! その、全く気付かなかったっ!!」
「う、ううん。大丈夫だから。ヒカリは女の子のキャラなんだし」
【大丈夫じゃないよっ! ヒカリ、何僕を差し置いて・・・・・・って、身体は僕だったー!!
でも、なんの感触も伝わらないんですけどっ!? これなんの責め苦だよっ!!】
「あぁ、怒るな怒るなっ! キャラなりが解けるだろうがっ!!」
あわてふためきながらも飛んで、私は気づいた。前方に、大きな影があることに。
というより、いきなり現れた。どうやら、恭文とフェイトに謝る前に、やるべきことがあるようだ。
「・・・・・・恭文、フェイトも安心しろ。すぐに手は離すことになる」
【「え?」】
600メートル程前に出てきたのは、巨大な死神。体長にして、4メートルと言った所か。
色合いは青銅。両手には鎌。またやたら生物的で趣味の悪いデザインの・・・・・・ガジェット?
「ヒカリ、あれもしかしてっ!!」
「間違いないな。くそ、やはりもう一体居たのか」
「予測してたのっ!?」
「色違いやバージョン違いによる同種の機体は、基本だ。ガジェットだってそうだろう?」
「・・・・・・納得したよ」
アレはやはり、下のギンガやシスター・シャッハ達が交戦しているというやつの同型か?
キャラなりする前にアコース査察官が教えてくれたものと、デザインの意匠が似ている。
【くそ、厄介な所に・・・・・・でも、かっこいい】
「そうですね。敵ながら中々のセンスです」
思わず、地面に滑り落ちそうになったのは気のせいだ。
というか、フェイトもきっと苦い顔をしているに違いない。
「よし、恭文とシオンの声は無視でいい」
「もちろんだよ」
さっきまでの会話のせいだろうか。私達は妙に息が合ってしまった。
だから、二人同時にそれがおかしくて、声を漏らして少し笑ってしまう。
【どうしてー!?】
「お姉様もフェイトさんも、ひどいです。私達が一体何をしたと言うんですか?」
「当たり前だっ! いきなり口を開いたと思えばそれだぞっ!?」
「ヤスフミもシオンも、落ち着こうよっ! あれは絶対センス良くないからっ!! むしろ趣味が悪いよっ!?」
お前はどれだけセンス無いんだっ! いや、それ以前にシオン、お前までかっ!?
・・・・・・あぁもういいっ! この二人のセンスの無さに関しては、後だ後っ!!
「フェイト、さっき言った通り一旦離すぞ。私が離したらファイズエッジを装備して、そのまま前方にダッシュだ」
「ヒカリ、まさか・・・・・・アレを倒すつもり?」
「止まってる余裕はないし、あの脇を通り過ぎるのも恐らく無理だ。やるしかないだろう。
だが、気をつけてくれよ? お前にケガをさせては、私の名折れだ」
私は、守りたいものを守る魔法使い。守りたいと思うものを守れなくては、それは成せない。
そんな私の言葉に、フェイトは笑いかけながら頷いてくれた。だから安心して私は・・・・・・手を、離した。
「恭文、行くぞ」
少し低めに飛んでいたので、高度はそれほど高くない。だからフェイトはしっかりと着地して、前に走り出す。
フェイトの右手には、当然ファイズエッジ。私はその前を先行しながら、左手を強く握り締める。
【うぃさっ! フェイトの胸を触ったのに実感が持てない恨み・・・・・・アイツにぶつけてやるっ!!】
「お前はやっぱり締まらない奴だなっ!!」
死神の瞳から、青い閃光が放たれた。それを避けながら私は、右手をかざす。
「ライトダガー」
生成するのは、黒い短剣。数は12。私はそれを、直進しながら掃射した。
「ファイアッ!!」
黒い短剣は、光の軌跡を描きながら死神へと飛ぶ。死神はその短剣に向かって、青い熱光線を数発放つ。
短剣はそれをかい潜るようにしながら、死神へと迫る。だから死神は、右手の鎌を横薙ぎに振るった。
そうして、全て払いのけるつもりだったのだろう。死神の鎌は、そのまま振り抜けられ右の壁を砕いた。
砕いた壁の破片が、その金属製のボディを叩く。だが、短剣は斬り払えなかった。
上下左右に3本ずつに別れて、それを回避した。そこから、また短剣は動く。
それらは同時に、時計回りに動く。動きながら描く黒い軌跡が、形を成す。
それが一つの円になった時、その輪が縮まって死神の動きを封じた。
死神は当然動かそうとするが、無駄だ。それはただ縛ってるだけじゃない。
見えはしないが、輪を中心に一種の閉鎖空間を形成している。
ただ、あの巨体とあのパワーでは、すぐにそれは壊される。だから私は、左手を開いた。
【「ディアボリック」】
左手の平に生まれるのは、黒い球体。その中に、幾何学模様の力が渦巻いている。
私はスピードを上げて、一気に死神に接近。私目がけて放たれる熱光線を、右に避けながら距離を零にする。
そうして、青銅の胸元にそれを叩きつけた。分厚いはずの装甲は、それにより球体の形にヘコむ。
死神を戒める縄に、ヒビが入る。縄が砕ける前に私は離れて、左手を再び前にかざす。
右手を左の手首に当てて、そのままワードで力を開放する。
【「エミッションッ!!」】
黒い球体が、私の言葉に呼応するように巨大化。死神の胴体を包み込む。
ゆっくりと、開いた左手を握り締める。その指の動きをトレースするように、球体が元の大きさに戻ろうとする。
「コンプレーション・・・・・・!!」
その収束で、胴体が圧迫されていく。青銅の装甲は鈍く音を立てながら歪み、潰れていく。
両手と両足もそれに引き摺られるように動き、床を踏みしめていた足が宙に浮いた。
指が拳になる寸前まで握り締められた時、胴体の全ては元の大きさになった球体の中にあった。
それでも腕を動かし、頭を動かし、私と私の後ろに居るフェイトを攻撃しようとする。だから、最後の一押しを叩き込む。
「フラクチャー!!」
左拳を、言葉と共に完全に握り締める。その瞬間、球体は更に縮み、黒い点になった。
それを始点に、爆発が起こる。圧縮された胴体に腕と両足を巻き込んで、炎が燃え上がる。
私は着地してフェイトの前に立ち、右手でベルカ式魔法陣型のシールドを展開。
黒色のシールドによって、爆風や飛んでくる破片を遮る。
何度かの爆発音が収まった時、そこにあったのは・・・・・・燃え盛る死神の破片だけだった。
【・・・・・・ヒカリ、何気にやり口がエグいよ。胴体圧縮して爆発させるって、どこの厨二攻撃さ。
アレでしょ、エターナルフォースブリザードとか使いたい口でしょ? 『当たれば死ぬ』とか言ってさ】
「お姉様、外道ですね。きっとお姉様は、14歳の病気に苛まれているんですね。それも一生」
「よし、お前達はとりあえず黙れ。そして、それは少なくともお前達には絶対に言われたくはない」
我が宿主と妹は、ひたすらに自由だ。そして厨二と言うな。いいじゃないか、かっこいいんだから。
というか、エターナルフォースブリザードとはなんだっ!? すまん、こいつらの会話が今ひとつ分からないんだがっ!!
「フェイト、大丈夫か?」
そんなアホな二人はさて置いて、私は後ろを振り向く。そこは、当然フェイトが居た。
「うん、ヒカリが守ってくれたから。・・・・・・ありがと」
警戒しながらシールドを展開しつつ、そう聞いてきた私に、フェイトは優しく笑いかけてくれた。
・・・・・・恭文がずっと好きなのも、分かる気がする。女性である私から見ても、この微笑みは魅力的だ。
「なに、問題はない。だが、すまない」
私はキャラなりを解除。恭文は元のゼロフォーム姿に戻った。そして、ビックリした顔で私を見る。
私は、荒く息を吐きながら恭文の右隣に浮いていた。当然、しゅごキャラの状態でだ。
「ヒカリっ!?」
「さすがに、限界だ」
≪ぶっ飛ばしてましたしね。あなた、汗だらけですけど大丈夫ですか?≫
「大丈夫だ。我が宿主と同じく、私も何気にしぶといのでな」
最初の砲撃にショートスマッシャーの連発。ついでにライトダガーでのフィールド形成。
とどめに一気に仕留めるために、虎の子の大技を使ったしな。もうこれ以上は、少し休まないと無理だ。
「恭文、そういうわけで私は」
「ううん、充分だよ。・・・・・・ヒカリ、ありがと」
「問題ない。シオン、私は休んで体力を回復させる」
私とのキャラなりの利点は、空を飛べる事が一つ上げられる。
あとは、広範囲攻撃や複数の弾丸の同時生成や遠距離攻撃に長けている事などもある。
飛行に関しては、今のようにフェイト一人くらいなら、抱えても十二分に飛行は可能だ。
だから、またAMFによる魔力の完全キャンセル化状態に備える必要がある。
これから乗り込むゆりかご内部で、同じことをされない保証はない。
そうなった場合、飛べるという利点がかなりの意味を持つのは、今のあれこれで証明された。
ゆりかごからの安全な帰還のためにも、私は休憩タイムだ。
それを言わずとも納得しているから、恭文もフェイトもシオンも、私の言葉に頷いてくれる。
「キャラなりを使用して戦闘する場合は、ここからはお前に全部任せる。いいな?」
「分かっています。さぁ、先を急ぎましょう。出口は、もうすぐです」
「あぁ」
恭文とフェイトは、炎が比較的薄い所を狙って、一気に瓦礫を超えた。
そこから、今度は走り出す。もう障壁もなければ、死神も居ない。
だから、私達の目の前に出口という名の光が見えた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
僕達は走る。ひたすらに走る。勝利の喜びに浸る暇もなく、全力で。
だけど、それももうすぐ終わる。だって、入り口が見えてきたから。
「・・・・・・ヤスフミ」
「うん、なに?」
フェイトが、走りながら声をかけてくる。左のツインテールが、少しだけ短くなっていた。
だから、揺れてるのを見るとちょっとアンバランス。・・・・・・綺麗な髪なのに、もったいない。
「あっさり、終わっちゃったね」
「・・・・・・そうだね。フェイト的には、拍子抜け?」
スカリエッティの逮捕に関してなのは、言うまでもない。
で、フェイトは走りながらも僕の言葉に、静かに頷いた。
「もっとね、手こずると思ってた。向こうは本当にお話なんて出来なくて、言葉なんて通用しなくて。でも、違った」
「・・・・・・うん」
「スカリエッティは、許されない事をしたというだけで、そこまで救いの無い存在じゃなかった。ただの、バカな人間だった」
・・・・・・そうだね、アレは単純にバカな人間だったのよ。バカだったから、止まろうとしても止まれなかった。
誰かに自分を止めてもらうことを、否定してもらうことを期待するという、そんな愚かな選択しか取ることが出来なかった。
「言葉が通じて、間違えて、狭い世界で自分の望みすら分からなくなっていた・・・・・・バカな、人間だった」
「そうだね、僕もそう思う」
「でも、私達と同じように『変わりたい』と願った」
その言葉に、少し驚いた。フェイトは、スカリエッティと自分や僕達を同じだと言ったから。
その驚きが顔に出ていたのか、フェイトは僕を見ながら少し苦笑いしつつ頷いた。
「うん、同じだった。迷って、悩んで、苦しんでいた。やっぱりこれは・・・・・・救い、なのかも知れないね。
私達は人だから、どこまで行ってもやっぱり人で。だから、悪魔にも神様にもなれない」
「だと、いいんだけど。・・・・・・たださ」
思い出すのは、あの全てを見下したような悪女キャラをした女。
ナンバーズの4番で、名前はクアットロ。スカリエッティから聞き出した。
「あの女は多分、その限りじゃない。・・・・・・フェイト、やるよ。
あのバカのシナリオを、徹底的に改ざんしまくって、嫌がらせしてやる」
「・・・・・・うん。ヤスフミ、ちょっとストップ」
「え?」
フェイトに言われて、足を止める。それで、フェイトの方を振り向くと・・・・・・顔、真っ赤になってた。
「右手、ジガンの装着を解除して素手にして?」
「どうして?」
「いいから」
僕は、言われた通り右手の時間の装着を解除。解除して、グローブも何もない素手の状態にした。
フェイトはそれを少し震える手で取って・・・・・・そのまま、自分の左の胸に当てた。
「フェイトっ!?」
「あの、その・・・・・・さっき、触られたから。でも、ヤスフミは何も感じてなかったみたいだし、だからその」
「いや、あの、えっと・・・・・・い、いいの?」
「うん。というか、どうかな」
少しだけ、指を動かして揉んでみる。フェイトの胸は、バリアジャケットの上からでも柔らかい。
フェイトが、ちょこっとだけ目を細めて震えてるのも可愛い。
「あの、えっと・・・・・・すごく柔らかい。というか、大きい。それで・・・・・・安心する。
フェイトに触ってると、繋がってる感じがするから・・・・・・あの、安心して、力が湧いてくる」
「なら、よかった。・・・・・・その、初めて触られたのにヤスフミがそれを実感してないなんて、嫌だったから」
「そ、そうなんだ。あの、ありがと」
「そんなにビクビクしなくても大丈夫だよ。私もそう言ってくれて嬉しいから」
なんて言いつつ、右手の指が動いちゃうのは僕がきっと男の子だからだ。
・・・・・・というか、本当に柔らかい。これ、直接素肌で触ったら、どうなるんだろ。
「ね、フェイト」
「何かな」
「・・・・・・また、触ってもいい?」
手を離しながら、僕がそう聞くとフェイトは少し驚いたように目を見開いた。
「エッチな事するからとかじゃなくて、フェイトに触れて、もっと仲良くなりたいなって。
うん、胸だけの話じゃないの。頬とか、髪とか・・・・・・いっぱい、触ってみたい」
「・・・・・・そっか。あの、いいよ。でも、一つだけ条件。私もヤスフミに一杯触っていいかな?
ヤスフミともっと仲良くなって、恋人として強く繋がりたいんだ」
「うん。その・・・・・・僕も、フェイトに一杯触って欲しい」
「なら嬉しい」
「あの、お前達?」
左横から声がかかった。そちらをフェイトと二人で見ると、シオンとヒカリが居た。
「「なに?」」
「本当に疑問顔で聞くなっ! 状況を忘れたのかっ!? 普通に甘ったるい結界を出してる場合じゃないだろっ!!」
「というより、それは死亡フラグですよ。最終決戦中に事後の約束なんて、ぶっちぎりです」
「大丈夫だよ。・・・・・・ヒカリもシオンも、アルトもフェイトも、バルディッシュも居る。
てゆうか、僕の命は僕だけのものじゃないもの。そんなもん、へし折りまくる」
そう力強く言うと、二人は納得したのか呆れたのか、同時にため息を吐いて首を横に振った。
・・・・・・うん、僕の命は、僕だけのものじゃない。僕が死んだら、二人だってお亡くなりコースだもの。
「とにかくフェイト、もう一度シリアスモードに切り替えて」
「うん、ぶっ飛ばしていこう?」
そうしてフェイトと笑い合って、また全速力でダッシュ。僕達はようやく外に出た。
少しだけ久しぶりな青空に、安心したように二人揃って息を吐く。
「フェイト執務官っ! それに蒼凪君も・・・・・・ご無事でなによりですっ!!」
声をかけて来たのは、聖王教会の騎士の一人。なお、女の人。紫色の長い髪を、三つ編みにしている。
それで、灰色のローブを羽織って右手には槍型のデバイス。なお、シャッハさん経由で僕とは顔見知り。
「はい、なんとか」
「中への突入は、やはり無理でしょうか。こっちの体勢は整ったのですが」
「・・・・・・今は無理です。あっちこっちに障壁が張ってあって。
私達も、それを何とかかい潜って出てきましたから。それですみません、すぐに」
「大丈夫です。アコース査察官から連絡はいただいていますので、すぐに転送します」
「助かります」
・・・・・・足元に、ベルカ式の魔法陣が広がる。広がった魔法陣は、転送魔法の術式。
これからフェイトと二人でゆりかご付近まで跳んで、またドンパチである。で、これがマジで決戦。
なお、基地内に残っているスカリエッティ達は、教会騎士のみなさんが迅速に救出する。
ただし、サリさんとヴェロッサさん達が崩壊を止められればだね。そうじゃなかったら、無理だ。
「ヤスフミ」
フェイトが、右手を伸ばしてそっと僕の手を握ってくれる。
そして微笑んでくれる。この状況でも、いつもと同じように・・・・・・らしく。
「頑張ろうね。あと・・・・・・少しだから」
「うん、頑張ろう? それで、早くフェイトの髪をセットしちゃわないと」
「・・・・・・うぅ、そうだよね。これ、長さ合わせるだけで足りるかなぁ。もう全体的に透かないと、だめかも」
「勿体ないよね。すごく綺麗な髪なのに。ツヤツヤで綺麗で触り心地のいい髪なのに・・・・・・うぅ」
「あの、泣かないでっ!? 大丈夫だよっ! 髪はちゃんと伸びるんだからっ!!」
そして、僕達はゆりかごに乗り込んだ。相当な修羅場になっている戦いの場へ踏み込む。
あの性悪女に関しては・・・・・・うし、とールガンで撃ち抜こう。てーか、半殺しにしてやる。
あぁ、それとあのピンク髪は、後で一発ぶん殴ってやろう。今は時間ないから無理だけど。
え、理由がない? あははは、バカだなぁ。理由ならあるじゃないのさ。
・・・・・・フェイトの髪を傷つけた罪を、数えさせるのよっ! あのピンク髪、必ずここに戻ってきて絶対シバキ上げてやるっ!!
「・・・・・・お姉様」
「なんだ、シオン」
「私、この甘さだけはついていけません」
「奇遇だな、私もだ。あの甘さとお前と恭文のセンスには、全くついていけない」
(第38話へ続く)
あとがき
あむ「えー、そんなわけでキャラなり・ライトガードナーの初登場です」
恭文「なお、ぶっちぎりで初代リインフォースそのままにしてみました。
本日のあとがきは、蒼凪恭文と」
あむ「日奈森あむです。いや、ようやく37話だよ」
恭文「そうだね。というわけで、いやぁ全編に渡ってシリアスだったねぇ」
あむ「どこがっ!? 一部おかしいとこあったじゃんっ! もっと言うとバストタッチとかっ!!」
恭文「いやいや、シリアスだったじゃないのさ」
あむ「シリアスじゃないからっ! あのシーンいらなくないっ!?」
恭文「でも、フェイトは嬉しそうだったよ? ほら、RemixはIFフェイトルートでもあるから」
(『そ、その・・・・・・うん、私がとまとのメインヒロインなんだから。あむやティアには負けないよ?』)
あむ「だめだ。マジでこの二人だめだ。てゆうか、なんでこんな甘くなるの?
もしかして、あたし達が認識していないだけで隠しフラグEXとかなのかな」
(現・魔法少女、頭を抱えて悩み続ける。それを見て蒼い古き鉄は疑問顔)
あむ「だからこれなの? 隠しでもフラグEXだから、それがくっつくと甘くなるとか」
(『あの、だったら頑張るよ? その・・・・・・ヤスフミと一緒に幸せになりたいし』)
あむ「ええい、ナレーションちょっと黙ってっ!? てゆうか、もうすっごい嬉しそうな声で言うのやめてー!!」
恭文「・・・・・・でもそれだと『僕×IFヒロイン+リイン+フェイト』という恐ろしい図式になるんだよね。
嬉しいけど・・・・・・ごめん、無理かも知れない。僕の許容量が天元突破しまくるかも」
あむ「あ、流石にそこは危機感持つんだ」
恭文「だって、三人体制だけでも限界なんだもの。あー、でもフラグEXだったら覚悟決めるしかないのかなぁ」
あむ「もうすっごい嬉しそうな顔して言うのやめないっ!? アンタ、絶対キャラ変わってるからっ!!
・・・・・・とにかく、本編の話だよ。ライトガードナー、ようやく初登場したよね」
(今回の目玉の一つは、ヒカリとのキャラなりです)
恭文「色々考えたんだけど、もうそのまんまを貫く感じがいいかなーと。
ほら、セイントブレイカーやアルカイックブレードとの差異にもなるし」
あむ「あー、空飛べるとか、遠距離攻撃に長けてるところとかだね。どっちも、基本近接戦闘主体のキャラなりだしね」
恭文「アルカイックブレードは飛べるけど、それでもだよ。なお、技とかまでそっくりな感じなのはちゃんと理由があるのですよ」
あむ「あ、そうなんだ」
恭文「うん。まぁ、アレだね。PS・・・・・・ホニャララ事件だよ」
あむ「・・・・・・納得した。アレならアンタが関わってもいいくらいだしね。
その時のアレコレで、そういうのがガチに固まったわけか」
恭文「そうそう。まぁ、そこはまた幕間とかでだね」
あむ「とりあえず、最後に現状整理しておこうか」
(よーくかんがえよー♪ 現状整理は大事だよー♪)
あむ「恭文とフェイトさんは脱出して、ゆりかごに突入。ヴィータさんは、動力炉室内部で奮戦。
なのはさんも、同じ感じ。廃棄都市部の方は、ヴォルテールと白天王が殴り合い中」
恭文「それで、サリさんとシャーリーにヴェロッサさんにウーノのチームでアジト崩落の阻止。
で、下は下でデスキーパーと戦闘に突入。だけど、セインは武装を一切持ってない」
あむ「そう言えばさ、テレビでも同じだったよね」
恭文「うん、同じだったね。やっぱり能力が能力だから、戦闘向きじゃないのかも。
というわけで、次回はそんな続きからです。果たしてあむはいつミッドに降臨するのか」
あむ「しないからっ!! ・・・・・・というわけで、本日はここまで。お相手は日奈森あむと」
恭文「蒼凪恭文でした。それじゃあみんな、またこのチャンネルで・・・・・・ボンジャー」
あむ「なんでそこでしゅごボンバーっ!? アンタ、熱入りすぎだからっ!!」
(それはきっと、キャラクターソングミニアルバムの第三弾が発売されたからに違いない。
本日のED:日奈森あむ(CV:伊藤かな恵)『夢追いRACER』)
ミキ「あむちゃん、デンライナーに乗ればボク達も出れるんじゃないかな」
あむ「アンタ、唐突に出てきてそういう事言うのやめてくんないっ!? てか、時系列の問題っ!!」
ラン「大丈夫だよー。ほらほら、ご都合主義ってあるし」
スゥ「というかというか、スゥとキャラなりですぅっ! 今度こそ今度こそ、レンゲルシロップになるんですぅっ!!」
ダイヤ「いいえ、ここはギャレンカラットよ。『Finger on the Trigger』を流しながら戦うの。
・・・・・・闇が増殖するこの街でー♪ 月よゴールドに輝けー♪」
ラン「だめー! ここは私とブレイブカリスになるんだからっ!!」
ミキ「もう、みんな何言ってるの? ここは当然、ボクとのキャラなりでアルカイックブレードに決まってるじゃないのさ」
スゥ「レンゲルシロップですぅっ!!」
ダイヤ「ギャレンカラットよ。・・・・・・何があったってーこの先にー♪ 気にしないように輝けー♪」
ラン「ブレイブカリスッ!!」
ミキ「いや、だからアルカイックブレードだって」
あむ「あぁもう、アンタら落ち着けー! あたし達はStS・Remixには出ないのっ!!
てゆうか、アンタ達はあたしのしゅごキャラなんですけどっ!? なんでそんな恭文押しっ!!」
ミキ「だって、アルカイックブレード楽しいし」
スゥ「レンゲルシロップになりたいんですぅ」
ラン「なんて言うか、恭文とのキャラなりって楽しそうだから」
ダイヤ「出番が欲しいわ。そして、ダイヤ教の信者を増やさないと。
・・・・・・あむちゃん、納得してくれたかしら?」
あむ「出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 特に最後っ!! 最後は思いっ切り私欲なんですけどっ!?」
はやて「あむちゃん、頑張るんやで? それは誰もが通る道や」
シグナム「私も主はやても、同じ道を通った。だから・・・・・・耐えるんだ」(涙)
(おしまい)
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