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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第38話 『Don't be long』



恭文「前回のあらすじ。・・・・・・フェイトとその、もっと仲良くなりました。えへへ」

フェイト「あの・・・・・・エッチな意味だけじゃなくて、もっとコミュニケーションしようね」

恭文「そうだね。それで相互理解し合って、もっと強くフェイトと繋がりたいな」

フェイト「なら、一緒に頑張らないとだめだね。うん、私頑張るよ」

恭文「うん」

クロノ「『ハンター』とは、狩猟家、もしくは探求者という意味である』

恭文・フェイト「「え?」」





(唐突に出てきたのは、黒の艦長さん)





クロノ「昔話を紐解くと、度々熊と人間が一騎討ちをしてる場面がある。
が、熊は賢く、自分が狩られることがわかっているため、待ち伏せをする場合が多い」

フェイト「いや、あの・・・・・・クロノ?」

クロノ「よって熊に一人で挑むのは自殺行為に等しいんだ。死んだフリとかしちゃダメだぞ。
というわけで、その命、神に返しなさいっ!!」

恭文「なんか決め台詞出して終わったっ!? てか、それ違う人だからっ!!」

クロノ「・・・・・・ふぅ、こんな感じいいのかな?」

恭文「いやいや、クロノさんどうしたんですかっ!!」

クロノ「いや、妙なコウモリがいきなり来てな」

フェイト「妙なコウモリ?」

恭文「間違いなくアイツだってっ!!」





(ウェイクアップッ!!)





クロノ「『どうしても外せない用事があるから、代わりに頼む』と言われたんだ」

フェイト「どうしてそれで引き受けちゃうのっ!?」

クロノ「いや、つい」

フェイト「言葉の使い方おかしいよっ!!」

クロノ「というかだ、あのコウモリはどうも他人とは思えないんだ」

恭文「あぁそうですねっ! 中の人的にそうでしょうねっ!! でも、それは色々と違うんですよっ!?」

クロノ「あと恭文、コウモリがお前に渡してくれと言って預かっているものがある」

恭文「え?」





(そう言って、クロノ艦長が取り出すは、イクサベルトとイクサナックル。ちなみに本物)





恭文「・・・・・・まぁ、こういう事なら許しましょう」

フェイト「許すのっ!?」

恭文「というわけで、早速いくぞー」





(言いながら、早速ベルト装着。そして、例のポーズ)





イクサナックル≪レ・デ・イ≫

恭文「変身」

イクサナックル≪フィ・ス・ト・オ・ン≫

クロノ「おぉ、そうやって使うのか。すごいな」

フェイト「クロノも納得しないでー! お願いだから、この状況に疑問を持ってっ!?」

シオン「というわけで、StS・Remix始まります。あ、元ネタを拍手でくださった方、ありがとうございます」

ヒカリ「・・・・・・まぁ、いいか。傍から見てる分には面白い。これに関わりたいとは思えないが」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うちは、マジでダメ部隊長やなぁ」





サリエルさんからの提案を、うちは結局受け入れた。現状でマジで手が回らんのは事実。

事実やから、普通に苦い顔で部隊指揮なんてしとるわけや。

事実やから、本来やったらアジト崩落阻止しようとしたフェイトちゃん達を呼び寄せた。



事実やから、うちは今なおゆりかごの外で、部隊指揮なんてしとる。

あの中で行方断ってるんは、うちの部隊の人間で・・・・・・大事な仲間やっちゅうに。

あははは、マジでダメやなぁ。こりゃ、ヒロリスさんの言うようにうちらは信じるに値いせんよ。



だってうちら、自分の面倒すら見切れてないんやから。





『それを言えば、僕はダメ部隊長補佐ですよ。
本来なら無関係のサリエルさん達まで、巻き込んでる』

「その上、自信持って『うちらで全部助けます』言えんのが情けないわ」



あとはアレや、恭文の『なりたい自分』にまで戦わせてもうてる。

ぶっちゃけ妖精の類やで? そんなのまで担ぎ出してしまって、マジ反省やし。



「とにかくグリフィス君、そっちはシャーリー共々任せたで。
・・・・・・誰か、部隊指揮すぐに変わってっ!!」



うちは焦りをかき消すように、声を大きく上げる。なんにしても、すぐ動かんとあかん。

フェイトちゃんと恭文と、妖精だけに任せるわけにはいかんやろ。うち、部隊長やし。



「うちはすぐに中に」

『八神部隊長っ! 突然の通信割り込み失礼しますっ!!』



うちが気持ち構えてる間に、通信画面がもう一つ増えた。それは・・・・・・アルトやった。



『シグナム副隊長からの指示でちょっと寄り道して・・・・・・今、そちらに向かっていますっ!!
部隊長、申し訳ありませんがゆりかご内部への突入、もうちょっとだけ待ってくださいっ!!』

「あかんよ。中のスターズの二人の事もあるし」

『リインが来るって、言ってもですか?』



アルトの映る画面の下から、ひょこっと顔を出したのはうちの末っ子。

ちゅうか・・・・・・あぁ、そうか。シグナムの方は、無事に片付いたからこれか。



「リイン、アンタのケンカはどうなったんや?」

『大丈夫なのです。ピザは届けましたし、恭文さんの言いたかった事は伝えました』

「そうか。で、シグナムは?」

『中将や向こうの融合騎と騎士ゼストとお話中です。
それから空に上がって、ガジェットを叩きます』



なら、レジアス中将は色々と認めたんやな。それはよかった。

しかしうち、会わせろって言うた覚えないんやけど・・・・・・まぁ、えぇか。



『あとは、あの人達の時間なのです。基本リイン達が邪魔しちゃだめなのですよ』

「そうか。なら、もうちょっとだけ待つ。でも、急がんと置いてくよ?」

『はいです♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



はやてとリインがそんな会話をしている間に、僕達は早速ゆりかご内部に突入。転送魔法って、素晴らしいよね。





だけど・・・・・・なんですか、これ。早速AMFで、魔力使い辛いし。










「内装の趣味はいいけど、環境は劣悪だね。なんつうアンバランスな」

「ヤスフミ、やっぱりそこっ!? あぁ、絶対センス直そうねっ! 大丈夫、ヤスフミが望めば絶対出来るからっ!!」



フェイトが、言いながら僕の両肩を掴んでぶんぶんと前後に振り回す。



「やめてー! 目が回るー!!」



少しして、ようやくフェイトが離してくれた。

・・・・・・なんでフェイト、泣きそうになってるの? 僕、悪いこと言ってないよね?



「とにかくヤスフミ、これは場合によっては本当にもう一度ヒカリ達の力、借りた方がいいかも」



涙目で、周りを見渡しながらフェイトがそう言う。

で、僕の両隣に浮いてる二人も見る。二人も全く同意見だから、力強く頷いた。



「これだとやはり、何時スカリエッティのアジトの時のように、魔力を完全キャンセル化されるか分かりません」

「まぁ、その・・・・・・色々あるとは思うの。でも、ヤスフミのキャラなりは、さっきのアレでも証明されたように充分切り札だし」

「分かってるよ。でも・・・・・・うん、極力使わない」



だって、やっぱり女装は辛いのー! 今だってシリアスモード継続だから耐えてるだけなのー!!

油断したら一気に崩れ落ちるよっ!? 戦闘中でも僕は崩れ落ちるんだからっ!!



「フェイト、恭文はとりあえず大丈夫だ」

「頭は抱えていても、切り替えは知っての通りちゃんとしますから。
それで、私達は王の間でしたね? そこに、高町教導官達が居るはず」

「そうだよ。ヴィータの方ははやてが向かうから、私達はこっちだね」

≪あとは、あの人達がスプラッタ状態になってない事を祈るだけですか≫

「・・・・・・うん」










とにかく、僕達は飛ぶ。飛んで、真っ直ぐに王の間に向かう。





心の中で、なのはや師匠がスプラッタになってない事を、祈りつつ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第38話 『Don't be long』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なによ、これ」





どうなってるの? 何故、Fの遺産とサンプルH-1がここに来てるのよ。

なぜ、あの中から脱出出来たのよ。いえ、原因ならもう分かってる。

なんなの。デスキーパーUを瞬殺したあの魔法とは違う力は。



そう、魔法と違うのは分かってる。だって、あのエリアでは魔法が全く使えなかったんだから。

あんなの見たことないけど・・・・・・レアスキル? く、色々と甘く見ていたようね。

まさかサンプルH-1が魔法に頼ることなく、あれだけの火力を出すスキルを持っていたなんて。



ただのゴミ屑だと思ってたのに、まさか『すばらしい世界』で生きる資格を有しているなんて。



でも、それでも私の有利は揺らがないわ。私とジェイル・スカリエッティが神になる瞬間は、もうすぐそこ。





「そう、無理なのよ。たかだか人間が神に楯突くなんて、無理で無意味で無謀なだけなんだから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・やっぱ、複雑だわ。この身体に感謝するってのは、色々とさ。

胸元貫かれて、大暴れして、それでも死なないってのは、まぁありがたいさ。

ただ、なんつうか・・・・・・なぁ。あぁもう、ここはいいか。





アタシは、痛む身体を引きずりつつ、ゆっくり・・・・・・立ち上がる。





目の前に光るのは、ダイヤ型のバカでかい宝石。なお、全長は10メートル近くある。










「・・・・・・アイゼン、アタシどれくらい寝てた?」

≪10分程、意識を失ってました≫



宝石の内部で、スゴイ量のエネルギーが渦巻いているのが見える。

これが・・・・・・ゆりかごの動力炉。アタシが破壊するべき存在。



「防衛システムは、発動無しか?」

≪しませんでした≫

「だよな。てか、してたらアタシは死んでるか。なら・・・・・・打ち止めだな」



両手に持ったアイゼンは、もうボロボロ。あっちこっちヒビが入ってるし、カートリッジも残り僅か。

あははは、さすがに無茶させすぎだな。こりゃ、シャーリーにどやされるかも。



「アイゼン」

≪はい≫

「中途半端に余力残して、砕けると思うか?」



アイゼンは数秒黙った。黙って・・・・・・こう答えた。



≪砕けると言いたいところですが、恐らく無理です≫

「だよなー」



アタシの予想通りの答えが帰ってきた。ようするにだ、何発も何発も叩き込んでも、意味がないってことだ。

万全の状態ならともかく、色々不覚取ってボロボロになってる。動力炉壊す前に、アタシの身体がぶっ壊れるよ。



「なら、全部ぶっちぎって」





アタシは、左手でアイゼンのカートリッジを全部入れる。

・・・・・・残り魔力やカートリッジを考えると、これが最後の一撃にはならない。

もう何発かは撃てる。アイゼンも、まだやれる。ただ、アイゼンはそれでは砕けないと言った。



だからこれで最後にする。これが、アタシの最後の一撃だ。





「一発勝負なら、どうだ」



アイゼンは、今度は即答した。アタシの予想通りに。



≪後で、たっぷりとお叱りを受けることになりますね≫



アイゼンのカートリッジ、装弾完了。ヘッド近くの弾倉が、また収納される。

アタシは、ゆっくりと飛び上がる。6メートルほど飛び上がって、足元にベルカ式魔法陣を展開。



「だよなー」



アイゼンは、軽く言い切った。それなら『後』に・・・・・・未来に続くと。

そう、アタシは壊せる。今あるありったけを賭ければ、コイツを砕ける。



「なら、これで最後だ」



ゆっくりと、アイゼンを振りかぶる。アイゼンのヘッドと柄が、またまた巨大化する。

意識を集中させろ。じいちゃんだって言ってたじゃねぇか。斬ろうと思って斬れないものなんて、ねぇって。



「全部・・・・・・全部賭けるぞ」





だから、アタシもアタシのありったけで想いを貫く。

アタシとアイゼンが、壊そうと思って壊せないものなんて、どこにもない。

コイツを壊さなくちゃ、みんなが困る。てゆうか、アタシが困る。



仕事もプライベートもパーペキな女になんて、アタシが何気に目指してるかっこいい女になんて、一生なれない。

バカ弟子がアタシに勝つ未来なんて、フェイトとリインとの三人体制に頭を抱える時間なんて、絶対に来ない。

はやてのギガうまな飯をたらふく食ってお腹を壊したり、シャマルのバカにツッコんだりする今なんて、簡単に消えちまう。



そうだ。ここで立ち上がるのは、力を振るうのは、みんなのためなんかじゃねぇ。全部アタシのためだ。

アタシが、今の時間を好きだからだ。今の時間が大切で・・・・・・守りたいからだ。

そんな時間が消える? そんなの、絶対嫌だ。その時間の全部が、アタシになるんだから。



・・・・・・口元が、少しだけ自嘲の笑いで歪む。結局最後は利己主義に走るんだからよ。



でも、これでいい。アタシの中で1番力を出せる理由は・・・・・・やっぱ、こういうのなんだ。





≪了解≫



だから真っ直ぐに、赤く輝く動力炉を見据える。見据えて、数回深呼吸。

深呼吸して・・・・・・意識を集中させる。そして、力を溜めに溜め込んで、一気に爆発させた。



「・・・・・・ぶち」



カートリッジが、1発ロードされる。それにより、アイゼンのブースター部分に火が灯る。

ドリル部分も、再び回転を始める。そのまま、アタシは唐竹にアイゼンを打ち込んだ。



「抜けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





赤い宝石と、アイゼンが接触し大きく火花を上げる。確かに硬い。確かに強い。確かに・・・・・・大きい。

でも砕く。コイツ程アタシの時間は大きくもねぇし強くもねぇし、硬くもねぇ。

ちっぽけで、大切にしなかったら簡単に消えて、流れていっちまう。



そうだ、今上がり続けてる火花みたいにだ。だから、心の中で強く念じ続ける。

壊したいと、アタシの時間を守りたいと、何度も・・・・・・何度も。

まるで何かの呪文のように唱え続ける。それと同時に、アイゼンのカートリッジをもう1発ロード。



ブースターの勢いが強まり、ドリルの回転も早まる。接触点から上がる火花が、より大きくなった。

腹から、身体のあっちこっちから血が流れていく。身体から力が抜けていく感じがする。

それでもアタシは、またカートリッジを1発ロード。鉄の伯爵は、更に力を増して突撃する。



アイゼンに新しい亀裂が入ろうと、傷口から血が溢れようと、絶対に止まらない。

まだだ。まだ、全部じゃない。アタシはどこかで、まだ守りに入ってる。それじゃあ、ダメなんだ。

搾り出せ。アタシの中にあるありったけの想いを。それが、コイツを砕く力になる。



守りになんて入るな。アタシの目の前の『敵』は、そんな事で砕ける程ヤワじゃねぇ。

アタシが望むべきは、振るうべきは破壊。認められない今も、未来も、悲しみも、全部をぶち壊す破壊。

アタシは、ただ一点に自分の全てを注ぎ込み、叩き込む。・・・・・・最後のカートリッジを、ロード。





「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





想いを吐き出すように、アタシは叫ぶ。

腕に力を込めながら、アイゼンをひたすらに打ち込み続ける。

アイゼンは、ヒビだらけになってもアタシの想いに応えてくれる。



ブースターから上がる炎が、この空間の温度さえ上げる。

アイゼンのドリル部分が、摩擦熱で赤熱化する。

アタシの身体中に刻まれた傷口から、血と命が流れ落ちる。



それでもアタシは、止まらない。・・・・・・いらねぇ。

今は、いらねぇ。温かな時間も、大事な仲間も、何もいらねぇ。

いらねぇから・・・・・・! コイツをぶち壊せる力をくれっ!!



それが出来なきゃ・・・・・・何にも、何にも守れねぇんだっ!!





「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





アタシは、アイゼンを振り抜いた。拮抗は、本当に唐突に終わった。

それは、動力炉が砕けたからじゃない。アイゼンのヘッドが、粉々に砕けた。

アタシは柄だけを持って、振り抜いた勢いにバランスを崩してそのまま・・・・・・落ちた。



もう、何にも残ってねぇ。魔力も、体力も・・・・・・なんも。やっぱ『いらねぇ』なんて言うもんじゃねぇな。

自分の中が空っぽになってるのが分かる。多分、アタシはこのまま死ぬ。

そして、もう復活なんて出来ない。アタシ達守護騎士の緊急リカバリーシステム、バカになってるしよ。



・・・・・・くそ、強過ぎるし。アレで傷がついてないって、どういうことだよ。

下手するとコイツ、なのはより強いかも。でも、情けねぇなぁ。

じいちゃんだったらきっと、アッサリぶった斬るんだろうしよ。なんか、ダメだな。



アタシは・・・・・・バカ弟子の師匠、失格だわ。





「そんなこと、あらへんよ」





足場に墜落しかけたアタシを、優しく抱きとめる腕がある。

というか、アタシは白い光に包まれた。それに閉じていた目を見開く。

すると、そこに居たのは、クリーム色の髪に青い瞳をした・・・・・・はやて?



ユニゾン、してるのか。ということは、リインも・・・・・・居るんだな。





【ヴィータちゃん、ヴィータちゃんが恭文さんの師匠失格だなんて、嘘ですよ】

「そうや。あのチビスケの『壊す』を絶対無敵の呪文にしたのは、アンタやんか。・・・・・・大丈夫や」



はやてが、アタシから視線を外してある箇所を見る。アタシはその視線を追いかける。

痛む身体や、薄れかけている意識を必死に揺り起こして、そうして見たのは・・・・・・動力炉。



「古き鉄・蒼凪恭文の師匠で、鉄槌の騎士であるアンタと、鉄の伯爵・グラーフアイゼンがこんだけ頑張ったんやで?」





それで気づいた。僅かに・・・・・・本当に僅かにだけど、動力炉に亀裂が入ってる。

それはアタシがさっきまで、アイゼンのドリル部分の先を叩き込んでいたところ。

そこに小さな亀裂が生まれていた。というか、アイゼンのドリル部分の先っちょが埋まってる。



亀裂は、そこから一気に全体に広がっていく。多分、中のエネルギーのせいだ。

本来ならあの硬い外殻の中でしっかり守られてるエネルギーが、亀裂から溢れ出そうとしてる。

アタシが壊せたのは、きっとほんのちょっと。でも、そのほんのちょっとだけで、充分だったらしい。





「それで壊せないものなんて、どこにもあるわけない」










亀裂がまるで、網の目のように動力炉全体に渡った。





その瞬間、動力炉は爆発した。轟音と炎をまき散らしながら、砕けた。





それを見ながらアタシは・・・・・・安堵の息を、少しだけ吐いた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・ロングアーチ、聞こえるか?』

「はい、聞こえます。それで八神部隊長」

『スターズ02は、発見・保護。で、動力炉も潰せたわ』



私は忙しくキーボードを打ちながら、グリフィスと八神部隊長の会話に耳を傾ける。

正直、参加してる余裕は全く無い。というか・・・・・・どうなってるの、これ。



『とりあえずヴィータ副隊長は重症で、もう動かせん。
うちは今からフェイト隊長達を追いかける。それでゆりかご、そっちから見てどうや?』

「進行スピードは、多少落ちたようですが・・・・・・ダメです。
今算出しましたが、それでもゆりかごの到着が早いのは変わらずです」

『時間にして、どれくらいや?』

「約4分と言った所です」



・・・・・・あぁもうっ! どうなってるのこれっ!? もう完全にお手上げだしっ!!



『それで、他は?』

「はい。廃棄都市部では、向こうの召喚獣とヴォルテールがまだ殴り合いを続けています。
・・・・・・それとライトニング03と召喚獣一体を、シャマル医務官とザフィーラで保護しました」

『はい? いやいや、召喚獣はともかくエリオまで保護ってどういう事や』

「重症なんです。相当派手にやり合ったようだとか。
なお、ライトニング03は命には別状はありませんが、戦線復帰は無理と」



それで、04・・・・・・キャロは向こうの召喚師の捜索中。

だけど、ヴォルテールと向こうの召喚獣が大暴れし過ぎて、全く発見出来ないらしい。



『そっか。・・・・・・あん子も、よう頑張ったんやな。それで、スカリエッティのアジトの方は』

「はい、それなんですが・・・・・・シャーリー」


グリフィスにそう言われて、私は手を止めずに画面とにらめっこしながら答える。



「すみません、全くだめなんです。自爆プログラムは見つけたんですけど、最後のウォールがどうやっても突破出来無くて」



アコース査察官にサリエルさんに、向こうの戦闘機人まで手伝ってくれてるのに、これはありえない。

というか、どうして突破出来ないの? ・・・・・・こうなると、変化球を考えないとだめかも知れない。



『フェイト隊長達を脱出させておいて、良かったかも知れんな。
少なくともそれで一緒にお亡くなりコースは避けられる。ただ』

「現場には、シスター・シャッハとギンガ陸曹も居ます。
そして、スカリエッティの実験台にされた被験体の人々も」

『最悪、動ける人員だけは全員脱出させる方向も、考えんとダメかも知れんな』





スカリエッティのアジトには、人体実験用に眠らされている人達も大勢居るらしい。

当然、その人達全てをこの状況で助けるなんて無理。

自爆プログラムをなんとか出来なきゃ、見捨てる事になる。



だから、私達は必死に頭と手を動かす。直接戦闘出来ない分、私の仕事はここにあるから。





『シャーリー、こうなったらアンタやアコース査察官達だけが頼りや。大変やろうけど、ちょお頑張ってな』

「はい」










でもこの場合どうなる? 最後のウォールには、侵入すら出来ないのが問題なんだよね。

・・・・・・あれ、ちょっと待って。侵入? 侵入・・・・・・ハッキングって、基本的に何?

ようするに入り口を作るって事。正規じゃない入り口を作って、中のデータに触れること。





ということは、その入り口を作る場所の中には当然のように目的の物が・・・・・・あぁっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「このウォールには、侵入出来ないっ!?」



自爆プログラム解除に向けて、最後のウォールを突破しようと、俺らは全員四苦八苦。

そんな時、シャーリーちゃんから緊急連絡が来た。そうして慌て気味に言ってきた言葉は・・・・・・これ。



『はいっ! あくまでも可能性の一つですけど、私達が侵入しようとしてたウォールはダミーかも知れませんっ!!
外部から別の媒体を使って本当のウォールを形成していて、それからアクセスしないと絶対にハッキング出来ない仕様じゃないかとっ!!』

『・・・・・・なるほど。だから、僕達やウーノの能力を使っても突破出来ないと。
ウーノ、君はクアットロという女性についてはよく知っているよね? こういうの、有り得るのかな』

『充分可能性はあります』





俺もドゥーエを見る。ドゥーエは力強く頷いた。つまり、シャーリーちゃんの推論はアリだ。

だが、そうなると・・・・・・どうする? まず、自爆プログラム自体はモノホンだ。

そこは間違いないんだ。これから、アジト全体に色々な影響が与えられてる。



つまり、このウォールさえ突破すれば俺らは勝てる。





≪主、まずはこのウォールを展開している媒体を、何とかして見つけ出す所からでしょう。
その媒体の破壊、もしくは媒体自体へのハッキングで対処出来る可能性があります≫

『では、まずはその捜索ですね』










それから超高速で俺らはその媒体を捜索した。そして、発見した。





でもまさかそれが・・・・・・アレだとは夢にも思っていなかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・えぇい、魔法が使えなくなるってどういうことさっ!!」

「予測はしていましたが・・・・・・やり辛いですねっ!!」



言いながら、シャッハと二人前に突っ込んで相棒を打ち込みまくる。

ガジェットT型10数体を蹴散らし、道を切り開く。



≪てゆうかアンタ、何普通に魔法無しで戦闘してるっ!?≫

「シスターの嗜みです」

≪納得出来るかよっ!!≫



だから私らの脇を、ギンガちゃんが抜ける。ブリッツキャリバーで、全速力で前へと走る。

撃ち込まれる熱光線やアームベルトでの攻撃をかい潜るようにして走り、距離を零へと詰めていく。



「・・・・・そこっ!!」



ギンガちゃんは瞳を金色に染めて、リボルバーナックルのタービンを回転させる。

左拳を振りかぶり、青い髪を靡かせながら三型の一体に向かって、拳を叩きつけた。



「はぁぁぁぁぁっ!!」





ギンガちゃんは戦闘機人。だから、この状況でも普通に能力が使える。

だから、V型の前面に巨大なヘコみが出来る。

ギンガちゃんが拳を引いて後ろに飛ぶと同時に、爆発を起こした。



そんなギンガちゃんのバックを取った1型が居る。



1型の触手・・・・・・つーかワイヤーが、ギンガちゃんに迫る。





「くそ、マジでキリがないしっ!!」



なんて言いながらギンガちゃんの後ろから迫りよってきていたワイヤーを全て斬り払うのは、シャナ。

咄嗟にバックに回って、銃身が刃になっている二丁の銃を振るう。振るって、銃口を前に向けた。



「どうすんのよっ! 魔法使えなきゃ」



言いながら、シャナは引き金を引く。それを見て私とシャッハはその射線軸からすぐに退避。

互いに左右に別れて跳ぶと、シャナの銃から銃弾乱射された。それにより、ガジェット1型が蜂の巣になる。



「アンタ達、普通に無力化じゃないのっ! 頼りになるの、このお姉さんだけよっ!?」

「あの、ありがと」

「・・・・・・礼なんていいから集中してっ! 来るわよっ!!」





そうして、今度はギンガちゃんとシャナが左右に跳ぶ。その理由は簡単。

死神が熱光線を放ってきたから。地面を斬り裂きながら、二人に迫っていた。

それが私らが今まで居た空間に、一筋の線を刻み込む。



それだけじゃない。早足で走り寄って、両手の鎌を振るう。

その攻撃対象は・・・・・・シャナ。シャナは、後ろに跳びながらその鎌を避ける。

でも、追いかけながらも連続で上から打ち込んで来るので、数度跳んで避ける。




鎌の切っ先が何度か床を砕いた時、シャナは思いっ切り5時の方向に飛んだ。

左の鎌がシャナを横から襲って来てたけど、スレスレで回避。

シャナは転がるようにして更に距離を取った。死神は・・・・・・気色悪く、こっちを見ている。



ガジェットは今のであらかた片付いた。あとは、アイツを止めれば私らのRemixの第一歩は踏める。





『ヒロ、聞こえるかっ!!』



通信画面から聞こえる声に、少し安心してしまうのは付き合いの長さ故なんだろうね。

私は、視線を向けずにその声に答える。・・・・・・死神は、また私らへと小走りに走る。



「なにっ!? こっちは今無茶苦茶忙しいんだから手短にしてっ!!」

『なら簡単に言うぞっ! 今起こっているアジトの崩落は、ソイツを倒せば止まるっ!!』





鎌を振るい、熱光線を撃ち込み、私らを追い詰める。まるでどこぞの狩人のようだよ。



私らは散開して攻撃を避け続ける。そして、まだドンブラ粉は出ない。



そのタイミングじゃない。きっと地面の下で、タイミングを測り続けてる。





『ソイツの中に、自爆プログラムのウォールを形成している媒体があるっ!!
色々調べたがそれを破壊しないと、ウォールが解除されないっ!!』

「そう、だったら話は早いね」



私はアメイジアを一旦収納。それから左手からベルトを取り出す。それは・・・・・・銀色に輝くDEN-Oベルト。

いやぁ、こういう事もあろうかと、555ジャケットとかと同じくAMF対策整えててよかった。



「アレ、壊しちゃえばメガーヌも私らも助かるって事でしょ?」

『正解だっ! 脳筋の癖によく分かったなっ!!』

「脳筋言うなっ! 私はやっさんよりはマシだよっ!!」



そのままベルトを腰に巻く。続けて左手で、バックルの赤いボタンを押す。

すると鳴り響くのは軽快な音楽。それが楽しくなりつつも、あたしはパスをバックルにセタッチ。



「変身っ!!」

≪Sword Form≫





私の身体には変化が起きる。まず、包むのは銀と黒の装甲。

そこから虹色のレールに乗ってアーマー達が現れ、私に装着される。

身を包むのは、燃えるような色合いの赤いプレストアーマー。



そして、頭の部分にある銀色のレールの上を走るようにして現れる物がある。



それは、赤い桃。それが顔の正面まで来ると、パカっと真ん中から二つに割れて、目のようになる。





「ヒ、ヒロリス・・・・・・なんですか、それはっ!!」

「クロスフォードさん、あの・・・・・・えぇっ!?」

「で、ここからがほんばーん♪」

≪え、これで終わらないのかよっ!!≫



言いながらも、私は右手であるものを取り出す。それはケータロス。

そう、みなさまご存知のあの赤い携帯だよ。取り出して、下にあるボタンを順番に押していく。



≪Momo・Ura・Kin・Ryu≫

「当然っ!!」



それから、通話開始ボタンを押す。そして、携帯から音楽が鳴り響く。

最後に、ケータロスの右サイドにあるボタンを押した。



≪Climax Form≫

≪一体なにがどういう具合で当然っ!? いや、俺マジで分からないんだけどっ!!≫

「さぁ、見せてあげるよっ! 私の・・・・・・本当の変身をっ!!」

≪お願いだから無視するなぁぁぁぁぁぁぁっ!!≫





装着されたアーマーが光に包まれ、変化する。

赤くて丸みを帯びて、全身にレールが入ったような感じのアーマーになった。

それから右肩に青い亀の仮面。左肩に金の熊の仮面。胸元に紫の竜の仮面が装着される。



そして、顔の桃な仮面が・・・・・・パカっと剥ける。





『か、皮が剥けたっ!?』



一瞬だけそのボディが輝き、空気が震える。・・・・・・やばい、これ楽しいわ。

ふふふ、どうせやるなら徹底的っ! せっかくのクライマックス、派手にやんなきゃだめでしょっ!!



「・・・・・・俺」



右手の親指で自分を指差し、それから腕を広げる。

ちょうど、歌舞伎やるような、見栄を張るポーズな感じで。



「参上っ!!」



瞬間、私の周りにある全てのものが完全に動きを止めた。

それは、シャナもシャッハもギンガちゃんも。てゆうか、それだけじゃなくて死神も。



「・・・・・・ふ、私が余りにカッコよ過ぎて皆感動してるんだね。わかります」



敵すらも魅了するかっこよさを出せるなんて・・・・・・あぁ、ダメだな。

こんな調子じゃ、で公式が『魔法少女リリカルヒロリス』になるのは、すぐ近くだね。



≪姉御、それマジで言ってんのか? だとしたら、アレだ。
それは老化現象だ。もしくはゆとり思考だって≫

「アンタ、それはどういう意味よ?」

「あ、あの・・・・・・なによ、そのダサいのはっ!!」



・・・・・・はぁ? いやいや、シャナはなんでそんな不満そうなのよ。



「ヒロリス、あなたは昔から若干センスが悪いとは思っていましたが・・・・・・それは極めつけ過ぎますっ!!」

「クロスフォードさん、あの・・・・・・ごめんなさいっ!!」

「待て待てっ! これのどこがダサいのっ!? めちゃくちゃカッコいいでしょうがっ!!」



ほら、色合いとかデザインとか強さとかっ! 全てに置いてかっこいいじゃないのさっ!!



「アンタ、それマジで言ってるっ!? ダサいにも程があるでしょうがっ! なによそれっ!!」

≪あぁ、ついやっちまったー! 俺達絶対怒られるよなっ!? マジですごい勢いで怒られるよなー!!≫





・・・・・・一応これについて説明。これは私とサリが暇つぶしに作った装備。名づけて、Den-oジャケット。

これは555ジャケットやZERONOSジャケットと同じ、特殊ジャケット。

なお、ただ魔力で作った通常のジャケットと違って、物理装甲も組み合わせていたりする。




おかげで重いんだけどね、物理的に。で、徹底的にこだわりにこだわり抜いたのよ。

だって電王好きだから。そのおかげで、見ての通りモノホンな感じなのですよ。

ただ・・・・・・あの、あれなの。あんまりにこだわり過ぎて、魔力消費を一切考えなかった。



おかげで魔力フルの状態でも、装着時間が10分持たなかったりするんだな、これが。

それを過ぎたら? 当然魔力エンプティで変身が解除されて倒れるさ。

ちくしょお、絶対に実用化してやる。具体的には、バッテリーでも動くようにしたりとかさ。



ゼロタロスで色々ノウハウは蓄積出来たし、出来ない事はないんだよね。



とりあえず、目の前のデカ物を見据える。そして、そのまま普通に歩いていく。





「クロスフォードさんっ!? あの、避けてっ!!」



熱光線が撃ち込まれ、見事に全弾私に命中するけど、それは装甲の表面で弾かれた。

・・・・・・あ、痛くないな。もう全然だよ。普通に歩いていけるし。



「アメイジア、装甲の状態はどう?」

≪問題はねぇけど・・・・・・でもやっぱ、魔力消費がデカイって。
早めに勝負つけねぇと、やっぱり10分と持たずにエンプティだぜ?≫



腰のデンガッシャーのパーツを両手で二つ取って、外す。

それを、高く真上に上げる。そうしている間に、死神の右手が動いた。



≪つーか、早く終わらせてくれっ! 俺は怒られるかと思うと、怖くて怖くて仕方ねぇんだっ!!≫





それが振りかぶられる前に、残りのパーツも手に取る。

落ちてきたパーツとそれを、合わせるように手を動かす。

すると、四つのパーツ同士が引き寄せられるように一つの形になった。



この形は、剣。だからガッシャーの先に、赤い刃が生まれる。





「わぁってるよっ! そんじゃあ」



鎌が、私に向かって叩き込まれる。だから私は、その鎌に向かってガッシャーを叩き込んだ。

左から叩き込まれる鎌に向かって、遠慮なしに全力で。



「行くよっ!!」



それが反撃の狼煙になった。ガッシャーの刃と鎌の切っ先は、一瞬だけ拮抗。

だけど、その拮抗は崩れた。鎌の刃が、ガッシャーに斬り裂かれるようにして砕けた。



「あー、そういや言い忘れてたね」



言いながら、大きく上に跳ぶ。死神は左手の鎌を振るって、私を斬ろうとする。

跳びながら、ガッシャーを両手で持って叩き込む。狙うは当然、その刃。



「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



唐竹に叩き込んだ刃は、鎌の刃を砕き斬る。そのまま着地。・・・・・・ナメんじゃないよ。

私は腐っても、ヘイハチ先生の弟子だよ? この私が斬ろうと思って斬れないものなんて、無いのよ。



「私ら全員揃って、始まる前からクライマックスなんだよっ!!」



得物を失った死神は、鎌の柄を捨てて両手を握り締める。

でも、その前に私らはもう動いてる。まず、ガッシャーをガンモードに組み換え。


「シャナ、頭行くよっ!!」

「・・・・・・了解っ!!」



シャナは、一瞬で考えを理解してくれた。両手の銃を構えて、狙いを定める。

私も同じく。ガンモードに変えたガッシャーを両手で持って、シャナと同じ所を狙う。



「「撃つべし撃つべし撃つべしっ!!」」






乱射で狙うのは、死神の頭。死神は、普通に熱光線を撃とうとしていた。

もちろん、普通の方法じゃダメージは与えられない。だから、狙うは目。

そう、目を狙った。熱光線を発射する目を。そこなら、装甲は薄い。


死神の頭から火花が散りまくり、同時に爆発音が聴こえた。




「「うっしゃっ!!」」



息ぴったりでシャナと声を合わせていると、死神が動き出す。

両腕をぶんぶんとところ構わず動かし、周辺のガジェット残骸や壁を砕き始めた。



「・・・・・・ちょっと、ヤバいわよっ! 普通にここ壊れちゃうしっ!!」

「問題ないっ! ドンブラ粉、出番だよっ!!」



そう叫んだ次の瞬間、死神の足元で爆発が起こる。

その爆発に晒された右足は、火花を上げながら膝を突く。



「・・・・・・ちょっとドンブラ粉っ!?」



声をあげると、隣に通信画面が出てきた。そこに映るのは、当然ドンブラ粉。



『急いで近くから爆弾持ってきたんだっ! ダメだったっ!?』

「いや、最高だっ!!」

≪そこ褒めるのかよっ!!≫





それでも、死神は立ち上がろうとする。というか、両腕を動かしまくって、床を砕きまくる。

そこを狙う二つの影があった。それは・・・・・・ギンガちゃんとシャッハ。

いつの間にかシャッハを背負っていたギンガちゃんが、ウィングロードを展開。



腕のぶん回し攻撃を避けつつ、ギンガちゃんは空を走る。そして・・・・・・真上から飛び込んだ。





「「・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」





狙うは、両肩。ギンガちゃんは手刀で右肩を。そして、シャッハはヴィンデルシャフトで左肩を穿つ。

関節の継ぎ目という弱い部分を狙って、手刀と二振りの刃が死神を深々と貫く。

その一撃が通ったのか、死神の両手が動きを止めて、床に崩れ落ちた。



だから私は、ガッシャーを放り投げる。それから左手でパスを持って、親指でケータロスのエンターボタンを押す。





「シャッハ、ギンガちゃんも下がってっ!!」



それから、パスを開いたままベルトにセタッチ。二人は、私の言葉に頷きながら後ろに大きく跳んだ。

私は、即座にパスを左に乱暴に投げ捨てた。



≪Charge and Up≫





二人がしっかりと距離を取ったのを見ながらも、私のアーマーに変化が起こる。

身体を走る銀色のレールに乗るように、青・紫・金の仮面が身体を移動する。

その移動先は右足。下から、今言った順番に装着された。



ふふふふ、いわゆる必殺キック形態だよ。ガッシャーも全モードも再現可能が目標だったし。





「・・・・・・必殺っ!!」



私は、少ししゃがんで・・・・・・また大きく跳んだ。跳んで、空中で一回転。



「私達の必殺技」



一回転して、そのまま右足を突き出す。右足が、虹色の光が包まれる。

私はその光ごと、動けずに駆動箇所から錆びたような音を立てるだけの死神に突っ込んだ。



「クライマックスバージョンッ!!」





私の蹴りは、銃撃で穴だらけになっている死神の頭に直撃。

そのまま、頭から胴体までを斬り裂くように吹き飛ばす。

私は巨人の後ろに着地。巨人は・・・・・・私の真後ろで、大爆発を起こした。



その爆風が、炎が訓練場を満たすけど、私はなんとか平気。



だって、こういう状況にも対応出来るように、徹底的にこだわり抜いたもん。





「・・・・・・ふ、決まった」

「決まったじゃないわよっ! このバカっ!!」



炎の向こうから聞こえるのは、シャナの声。何故か怒ってる感じがする。



「その通りですっ! あなた、私達の事を忘れていたでしょっ! ギンガ陸曹が守ってくれなかったら、黒焦げだった所ですよっ!!」

「というか、なんですかそれっ!? この状況で使えるって、質量兵器の類なんじゃっ!!」



それに、シャッハやギンガちゃんが続く。・・・・・・確かに、爆発で凄いことになってるなぁ。ま、いいか。



「あー、無事に済んでよかったね」

「左から声。すると、床からドンブラ粉が姿を現していた」

「口から描写が駄々漏れだよっ!?」



気にしてはいけない。きっと、私の心がとても綺麗であるが故だろう。



「・・・・・・でも、なんつうかそれ、カッコ悪いね」

「何言ってるのさ。すっごいカッコいいじゃないの」

「いやいや、カッコ悪いからソレっ!!」

≪その前に、使っちまった事に対してあれこれ言おうぜ? もう遅いけどよ≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『シャーリーちゃん、最後のウォール解除出来たぞっ!!』

「こちらでも確認しましたっ! 一気に行きしょう!!」

『プログラム本体に侵入成功。これまでダミーじゃなくてよかったよ。・・・・・・ウーノ』

『問題ありません。これなら、すぐに解除は可能です』










・・・・・・そして数分後。本当にビックリするくらいにあっさりと自爆プログラムは解除出来た。





これにより、アジトの全ては私達の手中に収まった。もう、あの性悪に好き勝手なんてさせない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「アジトの自爆が止まったっ!? というか、動力炉まで・・・・・・!!」










動力炉の外壁は、真龍クラスの召喚獣の砲撃にも耐えうるように設計されてるのよ?

本来なら、魔導師一人で砕けるはずがない。出来るわけが・・・・・・ないのに。

それに他の屑共も、デスキーパーを魔法無しで倒すなんて。何なの、アイツら。





腹立たしい。なぜ、神に抗うの。私達は愚図でのろまなあなた達を、幸せに導く存在なのに。

多少の犠牲は出るかも知れない。でもそれだけ。あなた達は、世界は幸せになれるのよ?

私という神の母と、ジェイル・スカリエッティという神によって・・・・・・なのに、腹立たしい。





まぁ、いいわ。このゆりかごさえ無事なら、全ては上手くいく。

今改めて計算してみたけど、私達の方が先に軌道ポイントには到着する。

そう、まだ私達の方が早い。うふふ、無駄な頑張りご苦労さま。





でも、これ以上はもう無理よ? だって、陛下を止められる人間なんて居るわけがないもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



アジトの崩落は、完全に止まったらしい。さっきまで響いてた振動が消えたから。





とりあえず、これでここがぶっ壊れる心配は無くなったって事だね。いや、よかったよかった。










「・・・・・・で、アンタはどうする? 別に決着つけるって言うなら、それでもいいけど」



DEN-Oジャケットの変身を解除。あの炎だらけの練習場からみんなで脱出して、私は唐突にそう言う。

その対象は、シャナ・・・・・・ううん、ボンテージ女。



「やめておくわ。ぶっちゃけ、ここで私が仕事を通す道理がないもの。
あの男はもう居ないし、私のクライアントは折れてる」

「そう。だったら・・・・・・投降って事でいいの?」

「えぇ。それに」



少しおかしそうに、通路の背にもたれながらもボンテージ女は笑う。

それを見て、私もシャッハも、ギンガちゃんも、ドンブラ粉も首を傾げた。



「私の人生、ここからRemixするんだもの。もう過去に囚われたくない。
アンタのバカなノリ見てたら、あれこれ考えてた自分がバカみたいに思っちゃったしさ」

「そう。じゃあ、まずどこからRemixする?」

「そうね、とりあえず・・・・・・シャナを、本当に私の名前にする所かしら」



恥ずかしげな雰囲気も漂わせつつ、ボンテージ・・・・・いや、シャナは自分を両手で抱きしめる。



「なんか、響きが気に入っちゃったの。別にいいわよね?」

「・・・・・・あぁ、問題ないよ。勝手につけた名前で良ければね」

≪いや、大ありだろ。それ、アニメの主役の名前だしよ≫



アメイジアの余計な一言で、場の感動モードな空気が一瞬にして壊れた。そして、全員が私を見る。



「はぁっ!? ア、アニメの主役って・・・・・・何よそれっ! ちょっと、どういう事か説明しなさいよっ!!」

「あなた、またそんなネーミングをっ! 幼少の折、拾ったフェレットに『トトロ』と名付けた悪夢を、また繰り返すんですかっ!?
ヒロリス、彼女にもっといい名前を付けてあげなさいっ! いくらなんでもそれは、彼女が可哀想ではありませんかっ!!」

「クロスフォードさん、DQNネームというのがありまして・・・・・・その、このままはダメですよっ!!」

「あの、えっと・・・・・・まぁ私の名前も数字が元だしあんま言えないよ? でも、もうちょっと考えてあげた方が、絶対嬉しいと思うんだ」

「あぁもう、お前らうっさいっ! あの状況でそんな真剣に考えられるわけないでしょっ!?
てか、いいじゃんシャナでっ! 一体何がどういう風に悪いって言うのさっ!!」










何にしても、私達の地下でのゴチャゴチャはこうして決着がついた。





あんまRemixされてないのが現時点での不満だけど、まぁ、これはこれでいいのかも知れない。





だって、大事な友達は助けられたし、誰かが目の前で死ぬなんてこともなかった。うん、それは良かった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「レイジングハート」

≪W・A・S、エリア2まで終了。3に突入。・・・・・・もうちょっとです≫



私は現在、チートヴィヴィオと戦闘中。というか、攻撃を凌いでいる最中。



「分かった。なら、もうちょっとだけ持たせようか」





・・・・・・ヴィヴィオが、両手の剣を砲弾に変える。それを私に向かって投擲。

砲弾は途中で分裂して・・・・・・これ、クレイモアと同系の散弾魔法っ!?

私はすぐに、その散弾の射程圏外に移動。・・・・・・まずは、回避と防御中心。



そんな私に踏み込んでくるヴィヴィオは、拳を一気に叩きつけてくる。

それを、レイジングハートの柄で受け止める。そのまま、壁に吹き飛ばされた。

アクセルフィンを羽ばたかせて、体勢を整える。それから一気に下に移動。



続けて突撃してきたヴィヴィオの足元を潜るようにして、私は突撃してくる虹色の刃を避けた。

ヴィヴィオが突き出した二刀は、壁を砕き、穴を開ける。

ヴィヴィオは振り向きながら、また前に飛び込んで二刀を唐竹に打ち込んでくる。



機動性は、今の私と同レベル。だから、かなり必死に後ろに下がって避けた。

レイジングハートを前にかざしながら避けて、ギリギリで掠りそうだった刃を防ぐ。

柄と刃の切っ先が擦れて火花を散らす。それでも私はなんとか回避。



ヴィヴィオの剣が、床を斬り裂き砕く。・・・・・・やっぱり、力任せだ。

だから十二分に狙える。私は札を一つ切る。

ヴィヴィオの左右両側から、金色の物体が飛んでくる。数は3つ。



エクシード時のレイジングハートの穂先を簡略化したデザインのそれは、ブラスタービット。

ブラスターシステム使用時専用の、補助装備。なお、某ファンネルをイメージして作ってみた。

これのせいで恭文君に『鉄仮面だ鉄仮面だ』とからかわれて、泣きそうになったのは内緒。



というか、鉄仮面ってひどいよっ! せめてハマーン様かララァかクェスじゃないかなっ!?



いや、その前にラフレシアにはビットないはずだよねっ!!





「ブラスター・・・・・・ビットッ!!」





ビットがヴィヴィオの周囲を回る。その軌道から、桜色の縄が生まれる。

これはバインド。そのバインドが、ヴィヴィオの身体を縛り付ける。

でも、それだけじゃない。ビットが移動し、ヴィヴィオの真上に配置される。



そのビットの先を始点に、結界が展開される。





「クリスタルケージ、ロックッ!!」



赤いピラミッド型のケージの中に、ヴィヴィオは閉じ込められる。

相手を閉じ込める閉鎖結界の一種。これ、私も前にフェイトちゃんと閉じ込められた事がある。



「こんなの、無駄」





まず、最初にやったバインドはアッサリ解除。うん、ここは分かってる。

そして、ヴィヴィオはクリスタルケージにも手を伸ばす。だけど、途中で止めた。

ヴィヴィオは少しニヤリと笑って、両の拳を握り締める。



握り締めて、クリスタルケージに叩きつけ始めた。




「・・・・・・く」





やっぱりそう来たか。ケージの維持のために、私が魔力を注ぎ続ける必要があるのを、読まれてる。

もう、向こうは気づいてる。私のブラスターシステムが、ただ無茶をしているだけの物だと。

だから、結界を一瞬で解除じゃなくて・・・・・・わざと攻撃して、負担をかける方向に走り始めた。



私がママを奪った敵だから。一瞬で仕留めるんじゃなくて、苦しめる方向に走り出したんだ。

でも、これでいい。時間を稼げるかどうかが重要。だから、さっきから回避と防御を念頭に置いてる。

今私が、ヴィヴィオを倒せるかどうかは実は大した事じゃない。というより、絶対に無理だよ。



私のクリスタルケージを叩きに叩きまくっているヴィヴィオは、ゆりかごのサポートを受けてる。

普通の非殺傷設定の攻撃では、間違いなく倒せない。ここはもう確定。

やろうと思ったら、ゆりかご自体の魔力を全部削らないと。でも、そんなの私一人では無理。



それも、あの虹色の障壁を破った上でだよ。なら、どうすればいい? 方法は幾つかある。

今のヴィヴィオは、一種の洗脳状態にある。まずはその洗脳を、解除するしかない。

だけどさっき言ったように、ヴィヴィオ本人をどうこうは無理。



だから・・・・・・私は、最初から札を切ってる。まさか、こういう状況になるとは思ってなかったんだけど。



その札から伸びた手は、もう胸元まで来てるはず。あと・・・・・・もうちょっとで詰みだ。





「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










ヴィヴィオの拳が、更に叩きつけられる。魔力がガシガシ削られるけど、これでいい。





必要なのは、醜いまでの時間稼ぎ。一筋の希望にすがるようにして、私は・・・・・・ヴィヴィオを戒め続ける。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ふふふ、陛下は頭がいいですね。そう、それでいいんですよ」



ブラスターシステムなんて大仰な名前を付けてるから、どんなものかと思えばなんてことはない。

自己ブーストによる、自身の魔力出力の徹底強化。それが、ブラスターシステムの正体。



「確かに、後方から一発勝負でどでかい攻撃をぶっ放されれば、おっかないスキルよね」





そう、このブラスターシステムは本来であれば短期決戦型のシステム。

だって、今の陛下とギリギリタメを張れるだけの能力を出してるのよ?

技量どうこうは抜きにして、それを個人だけで出すなんて、無茶もいいところだもの。



長時間使用すれば、身体も魔力もリンカーコアも、術者とデバイスの命さえもどんどん削られていくもの。





「でも、もう限界よね。地力ではあなたより陛下の方が上。だから、もうおしまい」










それを暗示するように、クリスタルケージが粉々に砕けた。それがおかしくておかしくてしょうがない。





だって、これが反逆者達の未来を示しているかと思うと・・・・・・そうなるのよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヴィヴィオがクリスタルケージを壊して、飛び込んでくる。

飛び込んできて、私へと接近。拳を突き出してきた。

右拳を私は左に回避。でも、それだけではまだ避けきれない。




ヴィヴィオは右手を開いて、刃を形成。もちろん、虹色の鉄輝一閃。

ヴィヴィオは右足を軸に急停止と回転を即座に行う。

そうして、回避のために下がっていた私を狙って右薙に刃を打ち込む。





私は、スレスレでそれを避ける。ジャケットが切っ先を掠めるか掠めないかのレベル。





ヴィヴィオの間合いから下がって、私達は空中で数メートルの距離を取って・・・・・・いや、その前にヴィヴィオが動いた。










「こそこそ」



ヴィヴィオは、左手で巨大な砲弾を一瞬で形成。一気に私に向かって放った。



≪Round Shield≫



回避はタイミング的に無理と判断して、私はシールドでそれを防ぐ。

ミッド式の魔法陣を模した桜色の盾が、砲弾や爆発の衝撃や爆煙を防ぐ。



「逃げるなっ!!」



後ろに気配がした。咄嗟に、後ろにもシールドを展開。



≪Round Shield≫



ヴィヴィオが、私に向かって鉄輝一閃を叩き込んでいた。

鉄輝一閃とラウンドシールドが、火花を上げながら衝突し合う。



「砕けろ砕けろ砕けろ砕けろ・・・・・・砕けろっ!!」





力任せに、ヴィヴィオは刃を押し込む。でも、無駄。ヴィヴィオは鉄輝一閃を完全に使いこなせてない。

だから斬れない。斬れるわけがない。ヴィヴィオの技には、恭文君の想いまでは篭ってない。

その力は、力が無くて苦しんだ恭文君が・・・・・・それでも自分を通すために作った技だ。



私みたいにスペック勝負に走るなんて安易な手が使えないあの子が、強くなるために鍛えた技だ。

悲しくて苦しい時間を壊すために、そうして繋げられる未来を守るための技なんだ。

この技が全てを斬り裂く力に溢れてるのは、恭文君が強いから。だから、ヴィヴィオには使いこなせない。





「だったら」



ヴィヴィオは、左手をかざす。私はすぐに7時方向に移動。

だって、次の瞬間には虹色のクレイモアが発射されてるもの。



「これでっ!!」





クレイモアはシールドを粉々に砕きながら、私に迫る。

でも私は、射線軸スレスレにそれを回避している。

冷静に・・・・・・本当に冷静に、レイジングハートの切っ先をヴィヴィオに向ける。



切っ先に生まれるのは桜色の砲弾。私は即座にトリガーを引いた。





≪Short Buster≫





放たれたスピード重視の砲撃は、ヴィヴィオを捉える。でも、また虹色の盾で防がれた。

あの盾も、いずれ何とかしないとダメだね。ヴィヴィオに有効なダメージが全く与えられない。

だけど、それは向こうも同じ。もう私はヴィヴィオの攻撃を、一発だって食らう気がしない。



今のクレイモアだって同じだ。恭文君なら、斬れないと判断した時点ですぐに撃つ。

もちろん、攻撃の反射に関しての対抗策を整えた上で。場合によっては視覚外への移動も行う。

恭文君の技は、ただ使えばいいってものじゃない。恭文君だから、使いこなせる。



私やフェイトちゃんより判断スピードが早くて、戦ってる最中に迷いが無い恭文君だから有効になる。

あんなにチンタラやってたら、誰だって避けられる。全然脅威なんかじゃない。

どんどん冷静になっていく。それにより、不思議だけど力が溢れてくる。



私は、ヴィヴィオが使う技の全部を知ってる。その使う人達がどれだけ強いのかも。



だから怖くない。今倒す事は出来無くても、それでももう・・・・・・怖くなんてない。





「ヴィヴィオ、知ってる?」



ヴィヴィオが踏み込んできた。そうして、右の刃を振るいながらどんどん直進。

私は後ろに下がりながら、レイジングハートでそれを受け止めつつ言葉を続ける。



「戦いは、どっちかが強いかじゃない」



幾度となく、技量も想いも足りない刃を捌きながら、私は壁際に追いつめられていく。

ヴィヴィオがそれを見て取ったのか、一気に決めようとする。刃を、私の胸元へと突き出した。



≪Flash Move≫



高速移動でその刺突を回避。私はヴィヴィオの後ろに回りこみつつ、10数メートルの距離を取る。

そこからまた魔法を発動。発動するのは・・・・・・これ。



「ノリのいい方が勝つんだからっ!!」

≪StarDust Fall≫



周囲の床の一部が持ち上がり、宙に浮く。というか、魔法で切り取って巨大な石にする。

数は3個。私の胴体くらいの大きさの石を、私は・・・・・・そのまま打ち出す。



「ファイアッ!!」





迷いも、躊躇いも今は振り切る。・・・・・・ハードボイルド、私なりに通す。

だからトリガーを引いた。ヴィヴィオはそれに向かって左手をかざす。

クレイモアを2連続で発射。発射して、隕石を全て砕く。



でも、それが砕けて生まれた細かい破片が、ヴィヴィオを襲う。



それが、ヴィヴィオの身体を自動的に守る虹色の盾を叩く。





「ブラスタービット、クリスタルケージ」



そこで動きが止まった所を狙って、再びクリスタルケージを発生させる。

ヴィヴィオは・・・・・・予想通りに、私を苦しめるためにケージを斬りつけ始めた。



「レイジングハート」

≪お待たせしました。・・・・・・発見しました≫

「方向は?」

≪丁度右。射角データは送ります≫










私は、レイジングハートの指示通りにその切っ先を向ける。その方向は、王の間の壁。





狙うは・・・・・・この先にある悪意。この船を管制し、ジェイル・スカリエッティを裏切った女。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ゆりかご、破損部分の自動修復開始。ふふ、まだ・・・・・・まだやれるわ。
しかしあの女、何をしているの? 恐怖のあまり、気でも狂ったかしら」



そう思って呆れて笑って・・・・・・気づいた。私の側に、桜色の球体がある事を。



「これ、まさか・・・・・・広域型のエリアサーチッ!? まさか、ずっと私を探してっ!!」



そうか、迂闊だった。普通はこれだけの大きさの船を、普通に二人だけで制圧しようとするはずがない。

でも、そのための人員は居ない。なら、全体の構造や敵の配置の把握の意味も含めて、こういう手に出ないはずがない。



「ふ、でも無駄ね。例え見つけられたとしても、ここは最深部。辿り着けるわけがないわ」

『ブラスター・・・・・・3! リミット・リリースッ!!』



画面の中の女が、今まで開放していない段階まで出力を上げた。

画面に、その膨大な出力が数値として出てる。ちょっと待って、あのデバイスを向けてる先に居るの・・・・・・私?



「ふん、壁抜きなんてそんなバカなマネが」










言いかけてまた気づく。あの女は、4年前の空港火災でも同じことをしていた。

でも、頭が・・・・・・理性が否定する。そんな事をするわけないと。出来るワケがないと。

それでも理性は、一つの答えを出す。今もなお上がり続けている魔力出力なら、出来ると・・・・・・残酷に。





そしてそれに対しての対抗策は、ない。私はこの中に置いて、それを作る必要性すら感じなかった。





だからここにはデスキーパーも、ここまで到達する砲撃を防げるだけのバリア装置も無いのだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



W・A・Sというのは、『ワイド・エリア・サーチ』の略。

レイジングハートのコントロールで、サーチスフィアを飛ばすの。

そうして、ゆりかごみたいな巨大な建造物や、広範囲のエリアの状態を把握する。





私とヴィータちゃん二人だけで、ゆりかごの制圧なんて無理。

だけど後に突入する部隊のために、大体の状態は把握しておく必要がある。

そのために、行く先々でサーチャーをばら撒いた。それがこんな形で役に立つとは、思ってなかったけど。





あれだね、『こういう事もあろうかと』って言うのが正しいんだろうな。










≪ファイアリングロック・解除≫



レイジングハートの先に、魔力スフィアが形成される。普段より大きく・・・・・・力強い形で。

身体の痛みが激しくなって、魔力も吸い上げられるように消費される。でも、止まらない。



「全力」



カートリッジを全弾ロード。レイジングハートが、自動的に空になったカートリッジのマガジンをパージ。

私は右手で、新しいマガジンを装着。それも全弾ロードされて、スフィアに蓄積されていく。



「全開っ!!」



レイジングハートの魔力スフィアは、私の胴体よりも大きくなった。1メートル以上の大きさになってる。



「ディバイン・・・・・・!!」





もうターゲットは捉えた。W・A・Sの映像から、怯えている顔が映っている。

逃がさない。そして、例えバリアか何かあっても、全部撃ち抜く。

レイジングハートの穂先から、桜色の羽が展開した。それが揺れて、同じ色の羽が撒き散らされる。



私は、ただひたすらに撃ち抜くべき敵を見据えて・・・・・・トリガーを引いた。





「バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




私が迷っている間に生まれたのは、桜色の奔流。

それが壁を砕く。障壁やここまでにある全ての装置を砕く。

そして私の目の前には、破壊という名の力が迫っていた。





私はただ背を向けて、逃げるしか無かった。










「い・・・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





でも、それではダメだった。私は後ろから砲撃に飲み込まれ、周辺の装置や設備ごと吹き飛ばされる。

吹き飛ばされて、ゆりかごの最下層に叩きつけられた。その間にも、奔流は私を圧し潰す。

身体が、心が悲鳴をあげる。そして現実を否定する。こんな事、ありえるはずがないと。



私の・・・・・・私のお腹にはジェイルが、夢が・・・・・・やめな、さい。

私をなんだと思っているのっ!? 私は、私達は神よっ!?

神にこんな真似をして、ただで済むと思っているのっ!? ありえない・・・・・・ありえないわよっ!!



でも、そんな思考すらも吹き飛ばすような爆発が起こる。それにより、私の身体は吹き飛ばされた。

身体は10メートルほど上を舞い、私が先程まで押し付けられていた最下層に叩きつけられる。

衝撃で腕や足、アバラがへし折れ、頭から血が流れる。受身も取れずに私は・・・・・・ただ、そこに倒れるだけだった。



痛い・・・・・・痛い。なんで、こうなるのよ。私は・・・・・・ただ、当然の事をしただけなのに。

普通、夢を叶えたいと思うでしょ? それを叶えようとして、何がいけないのよ。

そうだ、私の・・・・・・私の夢を叶えようとしただけ。ただそれだけの事。なのに、どうして。



なんで、神の母足る私がこんな仕打を・・・・・・身体中が痛い。痛みで、おかしくなりそう。





「ジェイル・・・・・・スカリエッティの、私の・・・・・・夢、が」










私の思考は、そこで途切れた。折れた四肢やアバラの痛みも、そこで感じなくなった。





ただ、その間にもずっと思い続けていた。私は・・・・・・私の夢は、私が作る『すばらしい世界』は、正しいものであると。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ナカジマ三佐っ!!』

「おう、グリフィスか。・・・・・・気づいたか?」

『はい。各地のガジェットは続々と停止しています』



そうだ、俺達の目の前で散々暴れてくれたガジェットが、突然動きを止めた。

いや、それだけじゃないな。・・・・・・あの召喚獣も同じくだ。動きを止めて、棒立ちに・・・・・・あれ?



「高町嬢ちゃん達が、うまいことやったんだな」

『だと思われます』



グリフィスが、どこか嬉しそうなのは当然だろ。

これでゆりかごの中の連中の無事が、証明されたも同然だ。



『それで、召喚獣の方は』

「悪い、こっちはまだみたいだ。殴り合い・・・・・・再開しやがった」



もうアレだ。右で殴られたら片方が殴り返して、その仕返しでまた殴って・・・・・・すげーなオイ。

つーか、アレが動き止めないって事は、別方向でゴチャゴチャって事か?



「アレは俺達じゃどうしようもねぇ。おチビの召喚師に任せるしかないだろ」

『・・・・・・はい』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・くぅ」



レイジングハートから、煙が上がっている。それも何箇所かから。

相当負担、かけちゃったよね。でも、これでまず一手。



「・・・・・・ヴィヴィオ」



私は、ヴィヴィオを見る。なお、クリスタルケージは解除。

ヴィヴィオは両腕を下ろして、力なく私を見ていた。



「なのは、ママ」



私は走り寄って行く。ヴィヴィオは・・・・・・私を、ママだって呼んでくれた。

だから、大丈夫。もう洗脳は解けてる。私は走り寄って・・・・・・ヴィヴィオに両手を伸ばす。



「ダメっ!!」



その瞬間、お腹に衝撃。私は・・・・・・ヴィヴィオに左拳で腹を打ち抜かれた。



「・・・・・・かは」



続けて、攻撃が来る。腹に再び衝撃。私は、宙に打ち出された。

零距離での砲撃・・・・・・というか、クレイモアかな。これは。



「止まれないっ! もう、止まれないのっ!!」



飛び上がった私の上に、ヴィヴィオが居た。ヴィヴィオの左手に魔力スフィア。

私は、呆然としながらもシールドを展開。



≪Round Shield≫



再び撃たれたクレイモアは、ラウンドシールドに阻まれて爆煙を巻き上げる。

でも、数発がシールドを突き抜けた。私はそれを食らって、床に叩きつけられる。



≪マスター!!≫

「大丈・・・・・・夫」



不意打ちだったから、マトモに食らった。まずい、普通にクリーンヒットだ。



≪ブラスターシステム、緊急停止≫



身体から魔力と言う力が無くなる。そして残ったのは、痛みだけ。



「レイジング、ハート」

≪すみません。ですが、これ以上の維持は無理です≫



分かってる。さっきの連撃で残ってた余力を全部削られた。

それでも、私はレイジングハートを支えにして立ち上がる。立ち上がって、ヴィヴィオを見る。



「ヴィヴィオ、どうして・・・・・・かな。もしかして、ママだって分からないのかな」

「分かるよ」

「なら」

「ダメなの・・・・・・もう、ダメなの。ヴィヴィオはなのはママの」



言いかけて、ヴィヴィオは首を横に振った。振って、そのまま悲しげな瞳で私を見る。



「もう、なのはさんやフェイトさん、恭文さんの子どもじゃない。ヴィヴィオは・・・・・・ただの兵器だから」










全てを出し切って、ここまで来た。でも、もう少しが届かなかった。





なら、どうする? ううん、もう答えは決まっている。





私の新しい夢は・・・・・・『なりたい自分』は、もう見えてるんだから。




















(第39話へ続く)




















あとがき



あむ「・・・・・・あたしさ、クアットロって死ぬかと思ってたんだ」

恭文「そっか。実は作者も迷ったらしいよ?」

あむ「あぁ、やっぱりか。さて、思いっ切り風呂敷広げまくってたRemix最終決戦も、残すところあと少しだよ」

恭文「なんだかんだでさ、10話近くずっとバトルしてたよね。えー、そんな38話、みなさんいかがだったでしょうか。今日のお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむと」

なぎひこ「あははは、また呼ばれて来た藤咲なぎひこです。ねぇ、これはなんで?」

恭文「いや、将来の嫁と娘の頑張りを見て欲しいなと」

なぎひこ「お願いだからその勝手なカップル認定やめてくれないっ!? てゆうか、君までそっちいっちゃうっておかしいからっ!!」





(蒼い古き鉄、何故か首を傾げる。そして、若干楽しげに微笑んでるのは気のせいじゃない)





なぎひこ「まぁ、そこはいいよ。それで、今日のタイトルってアレだよね。劇場版の挿入歌」

恭文「うん、なのはとヴィヴィオの戦闘時の挿入歌はこれだから。
でも、今回は・・・・・・いやぁ、色々あったね。ヒロさん達が暴れて」

あむ「動力炉を壊して、アジトの崩落を止めて、クアットロも潰した。でも、ヴィヴィオちゃんが残ってると」

なぎひこ「あとはあれだね。エリオ君がさり気なく生き残った」

恭文「・・・・・・本人は『死んだ方が影が』とか言い出してたけどね。とりあえず、フェイトが泣く前にソバットかまして黙らせたけど」





(他の二人は、ただただため息を吐くばかり。まぁ、仕方ない。もうあの子はそういうキャラだから)





恭文「それでさ、なぎひこ」

なぎひこ「何?」

恭文「まぁ、どっかでちょこっと言っただろうけど・・・・・・なのはと仲良くなるお話をドキたま/だっしゅで書いてるわけだよ」

なぎひこ「あぁ、そうらしいね」

恭文「それ、前後編になったから」

なぎひこ「はぁっ!?」





(お祝いするような、明るいファンファーレが鳴り響く。いやぁ、めでたいめでたい)






なぎひこ「いやいや、どうしてっ!?」

恭文「分量の問題。まぁ、ドキたま/だっしゅ始めるのは、Remixとあむルート全部出してからだけどね」

あむ「あー、それまでにまたストック作るんだっけ」

恭文「そうそう。てゆうかさ、なぎひこ・・・・・・10歳差なら、大丈夫じゃないかな」

なぎひこ「だから、どうして僕っ!? 他に色々いるよねっ!!」

恭文「他がサッパリだから頼ってるんですけど、何かっ!? てーか、もう嫌なんだー!!
恭也さんにまで『なのはを娶ってくれ』とか言われるのは嫌なんだー! それもすっごい殺し屋の目でー!!」





(蒼い古き鉄、そうして崩れ落ちる。それを見て・・・・・・二人は色々と察した)





なぎひこ「・・・・・・恭文君、だから最初から僕になのはさんを押してたんだ」

あむ「色々あるんだよ。ほら、なのはさんってなんだかんだで恭文に甘いしさ」

なぎひこ「あぁ、そうだね。というか、まぁ・・・・・・その、アレだよね。もう終わっておこうか。ほら、恭文君再起不能だし」

あむ「そうだね。えー、お相手はいつもの三人でお送りしました」

なぎひこ「いつもの三人じゃないよねっ!? てゆうか、僕はゲスト扱いもいいところだしっ!!」










(とりあえず、蒼い古き鉄が復活したのは大分後の事でした。
本日のED:水樹奈々『Don't be long』)




















ヒロリス「・・・・・・さて、それじゃあ私はゆりかご行くか」

シャッハ「あなた、本気だったんですかっ!?」

ヒロリス「当然。私のありったけでゆりかご落としてやるよ。
くくく、私のRemixはここからだー!!」

サリエル『・・・・・・お前、そんなにRemixしたいのかよ』

ヒロリス「したいね。これじゃあミッション話の焼き増しだし」

サリエル『そういうメタな発言すんのやめないかっ!? てーか、そのためにまだ暴れるつもりかよっ!!』

ギンガ「というか、もうこれ以上はダメですっ! クロスフォードさんは引退組ですよねっ!? だったら、私達に任せてくださいっ!!」

シャナ「・・・・・・マジで名前どうしよう。出自が気に食わないけど、でも響きはいいし」

セイン「まぁ、数字が元の私らよりはマシじゃないですか? ほら、適当でも意味合いがまた違うし」










(おしまい)





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あきゅろす。
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