[前]夜空舞う、銀の蝶 2 「…ッ!!!」 ぎゅっと反射的に男の人に抱きつく。 男の人は驚く風もなく、私の頭を優しい手つきで撫でた。 「大丈夫。耳を澄せてごらん。さっきの足音じゃないだろう」 ……確かに、違う。 さっきのは素足の様だったけれど、今のは靴の音だ。 ゆっくりと、足音の方に顔を向ける。 「あら…」 ────その時、 「久し振り、かしら?」 ────時が止まった気がした。 「元気にしてた?」 ────次に出てきたのは、 「────悠嘉」 「お…ッ母…さ…っ…ん…!!」 ────大粒の涙、震える声。 そっと抱き寄せて。 温もりを感じさせて。 どうか… (これを夢だと) (言わないで下さい…) [*前へ][次へ#] [戻る] |