[前]夜空舞う、銀の蝶
温かい
───知ってる。この匂い。
知ってる。この温もり。
太陽みたいにあったかくて、良い匂い…────
「……れ…」
閉じていた瞳を開ける。
さっきまで暗かったのに、外は眩しくて目眩がした。
「私、どうして…」
「おや、起きたみたいだね」
「!」
声に驚いて、バッと立ち上がる。
「…誰…?」
目の前には、知らない男の人がいた。
顔は、恭弥先輩に似ている。
でも髪が少し長くて、隼人君の勉強スタイルみたいに後ろで結っている。
…知らない筈なのに、恐怖心などは不思議と沸いて来なかった。
「ははっ!
やっぱり俺の事はわからないか」
「??」
スッと伸ばされた手に掴まれ、高い高ーい、と上にあげられた。
小さい私はされるがまま。
「…あの…」
「敬語」
「え、」
「敬語、止めてくれないか?寂しくなるから」
な?
と首を傾げる男の人。
その時、
トン、トン、
(規則的な足音が)
(近付いて来た)
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