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「もう一度、言っていただいてもよろしいですか?」
「これからわしと共に東三条殿に赴いてもらう」

この人はいつも突拍子のない事を言ってくれる。思わず頭を抱えたくなったが、晴明の手前、そうするわけにもいかない。

晴明の部屋には、他にも勾陣と伝令をおおせ付かった太裳がいるのだが、二人は事の成り行きを見守る事にしたらしい。

「晴明様、私は……」
「先の一件での礼を言いたいと仰せでな」

先の一件とは、夜警の帰りに襲われていた所を助けた件なのだろうが、その場で礼は言われたはずだ。

自分はあまり人に関わらない方がいいだろうし、そのつもりもないし、何よりも激しくめんどくさい。

渋っているのを雰囲気で察した晴明は、持っていた扇子で口元を隠し、。

「行きたくないと言うならば仕方がない。大臣様にはわしが頭を下げるしかなかろう」
「えっと……」
「きっと大臣様は悲しまれるだろうが、本人が行きたくないと申しておるのを、無理矢理連れていくわけにはいかぬし」
「その……」
「ああ、気にしなくてもよい。大臣様には、誠心誠意お詫び申し上げる」

昌浩がたぬきと称するのがわかる気がする。
きっと扇子の裏の顔は、笑みを浮かべているに違いない。

「わかりました」

何かと世話になっている自覚がある晴明に、自分の為に頭を下げさせるわけにはいかない。

「では、参りますかな」
「はい」

結局は、断る術はなかったということだと自分を納得させるしかなかった。




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