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東三条殿までの道中、何度回れ右をしたくなったか。
その度に理性を総動員して堪えてはみたものの、いざ東三条殿に着いてみると、やっぱり帰っておけばよかったという思いの方が勝ってしまう。

晴明の後ろに控える形で座し、道長を待っているのだが、こうしてみると場違いも甚だしい。
身分すらなく、都人でもない自分が、まさか左大臣と対面することになろうとは。

晴明や神将たちに気付かれぬように息をついた所で、呼び出した本人が姿を現した。

「待たせたな、晴明」
「いえ」

晴明と簡単な挨拶を交わすと、道長はすぐに自分の方へと視線を向けてきた。

「あの時は暗がりで顔が見えなかったが、思っていたよりも若いな。先だってはよくぞこの道長を救ってくれた、礼を言うぞ」
「……勿体ないお言葉にございます。わたくしこそ、名乗りもせずに申し訳ございませんでした」

隠形していた勾陣と太裳は無言で視線を交わした。
緊張しているとばかり思っていたのだが、受け答えのそれは、しっかりしている。
昌浩などは大分緊張していて、騰蛇のちょっかいに耐え切れなかったというのに。

聞かれた事だけを答える姿からは、少なくともそれなりの教養を身につけていることが伺える。




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あきゅろす。
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