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迷探偵サトコっ




「それじゃあ事件の時、三人とも校庭にいましたの…?」
わたくしがそう重ねて聞いて、三人の顔を見回すと…圭一さんだけが迷うような表情をして、やがて頷く。
「ああ、まあな」「戻って来たら、魅ぃちゃんが倒れてて…」「三人ともずっと一緒にいました。私が保証します」

三人の発言に怪しい場所はないけど、圭一さんは迷うような表情をしたから、怪しいのは圭一さんかしら、わたくしはメモ張に圭一さんが犯人?と書いて、梨花に見せる。梨花はみー☆と喜んで、ぱちぱちと拍手。わたくしはメモ張をもったまま、レナさんと詩音さんに尋ねる。

「んー、……圭一さんはお二人とずっと一緒にいまして?お二人が圭一さんから眼を離したことは?」「ありません。ずっと一緒です」「うん、圭一くんもずっと一緒」
詩音さんとレナさんは圭一さんを庇う。
 んー、圭一さんが犯人で、その犯人を二人とも庇うということは、……三人が共犯?、わたくしはメモ張に、三人とも共犯?と書いて、梨花に見せる。
梨花はみーみー悩んだあと、首を横に振る。梨花の予想は違うらしい。
梨花のこういう仕草は、当たるも八卦当たらぬも八卦だから、わたくしは気にせず推理を進めることにする。
魅音さんを三人で殺害、その後、素知らぬ顔で校庭で遊んだ………。んー完璧な推理ですわ。わたくしは弛む頬そのままに、三人を見回す。
「三人とも犯人ですわね」
詩音さんは図星をつかれたのか、ピクピクとこめかみを押さえ、圭一さんは「ちょっと待て、どうやったらそんな推理になるんだよ」と狼狽え、レナさんは……冷徹な笑顔になる。「そういう沙都子ちゃんと梨花ちゃんはどこにいたのかな?かな?」
「わたくしたちも校庭にいましたわ。ね、梨花」「いましたのです」
「どの辺りに?」「昇降口あたりの木ですわ」「みー」
「うん知ってるよ、梨花ちゃんと沙都子ちゃん、木陰で話してた。でもね、レナたちはもっと遠くにいたんだよ?だよ?疑ってるみたいだから場所も言うね。ドラム缶のとこ、だから教室に居た魅ぃちゃんのところに行くためには、梨花ちゃんたちの前を通らなきゃ駄目なの、沙都子ちゃんたちは私たちが通ったとこ見た?」
「見てませんわ」
「じゃあレナたちはどうやって魅ぃちゃんを殺したのかな?昇降口に行ってないのに?教室に入ってないのに?どうやって魅ぃちゃんを殺したの?それに、聞けばわかると思うけど、ここにくるまでね、岡村くんたちも近くにいたの、レナたちがここに来るまでずっと一緒、だからレナたちは動いてない。レナたちにはチャンスはなかった」

レナさんたちにはチャンスがなかった……?んー、難問ですわ。
……わたくしは隣の梨花に、わかります?わたくしは、それでもレナさんたちだと思いますけど……と書いたメモを見せる。梨花は首を傾げたあと、ちょこちょことメモに鉛筆で何やら書き始める。
レナが犯人……、あっ…そっか。わたくしとしたことが簡単なミスを……反論した人が犯人。
コホッと一つ咳払いをして、わたくしはレナさんの腕を掴む。
「今のは反論でございますわね……じゃあ、レナさんが、はんにん」「へ…?」「口は災いのもとなのです。あれだけ流れるように言い訳したら、もう言い逃れはできないのですよ?にぱ〜☆」「え、あ!ちちちちがうよ、私は反論なんてしてない。今のはちがう」ぐいぐい…あとは、レナさんを大石刑事につれてけばおしまい。楽な事件でしたわー「ちがうよ、ちがう。ねぇ聞いて!反論なんかじゃ…たたた助けて、詩ぃぃちゃああん」「沙都子、今のはさすがにレナさんの方が…」あら、詩音さんも……「って……へ?こら、ちょっとなんで私の腕を掴む!?」
「をーっほっほ、大石けいじーもう一人犯人確保ですわー」「ももももう一人って、もしかして、私いぃ?」「そうですわよ。詩音さんも犯人ですもの」「はぁ?!なんで、だって私は」「あら、まだおわかりになりませんの、自分のミスを」「反論したら終わりなのです」
「だからって今のは違うでしょおぉぉ!?!ただ私は、レナさんを助け……ってきききき聞いてよ。引っ張らないで、こんなんでぶた箱になんて行きたくないーっ」「犯人はみんなそう言うんでございましてよ。大石刑事、犯人逮捕しましたわー!」「なっはっは、さすがに素早い。じゃあ引き渡してもらいましょう!」その瞬間、足が宙に浮き、ひょいっと抱き上げられる。ふわああっ!?何ですのっ?!ワイシャツに包まれた荒々しい腕が私をお腹ごと持ち上げて……、後ろから人の感触、私より先に状況を理解した梨花が、「圭一確保なのですっ。ついにボロをだしやがったのですよ」「だあぁああー!!!待て待て!!掴むなお前ら、いくらなんでも無茶苦茶だぞ」「みぃ?むちゃくちゃ…」「失礼でございますわねー、犯人の分際で。梨花っ!」「失礼な圭一確保ーっ」「だからやめろって、どうして反論したら犯人なんだよ?」
「どうしてって…?」「探偵の常識なのです…」
梨花ちゃんも沙都子も、顔を見合せ、不思議そうに首を傾げる。この感じは、心からそう思ってるにちがいない。反論イコール犯人ってな!!
にしても、反論イコール犯人なんて、んなけったいな理論どこで覚えたんだ?ミステリー小説にだってそんなこと書いてないぞ?
普通に考えて、探偵がアリバイのある奴を反論しただけで捕まえるか?証拠一つ出てこないやつを反論しただけで?そんなこと絶対あり得ない!!だってそれが許されたら、事件当時地球の反対側にいた奴だって逮捕できる。犯人扱いして、ノーと言わせればそれで解決だ。
事件の犯人ですか?と聞かれて、「私はやってません」も反論になるならそいつには答えようがない。反論しないってことは、犯人ですって言うのと同義、イエスでもノーでも犯人にされる選択、そんな選択はあり得ない。そんなことは、ちょっと考えればわかること……、のはずなのに、沙都子も梨花ちゃんも、どころか大石さんまでもそれを信じてる。あり得ないあり得ない。レナたちを助けるには、このへっぽこ探偵の二人を論破するしかない。だが、どうする…?この交渉に失敗したら俺のぶた箱行きも間違いないだろう……。今の梨花沙都コンビはそれすら反論と見なして俺を捕まえる。物的証拠どころか、状況証拠すら揃えず、俺が犯人ってのたまい、そして大石さんもそれに乗って……、なんとなくそんな気がする。
かといって、今さら退くこともできない。
もう俺は割って入ってしまったし、何より、レナたちを見捨てるのはさすがにしたくない。
……そこで、俺は考えた……言葉で、この状況を脱するにはどうするか…?






A、反論イコール犯人という理論が、如何に的外れで荒唐無稽なことか、沙都子と梨花ちゃんに説明する。


B、沙都子たちの勘違いは勘違いのまま放っておいて、レナや詩音がしたのは反論じゃない……ということを強調して丸め込む。













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作品一覧
『迷探偵サトコっ』
『不毛なる梨花日記』
『つみほろぼしは遥かとおく』
『ひぐらしのなく頃に〜村探し編〜』
『ひぐらしのなく頃に〜現照し編〜』
『ひぐらしのなく頃に〜妹愛し編〜』
『ひぐらしのなく頃に〜鏡崩し編〜』
『〜偽りのカケラ〜』御感想所
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