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迷探偵サトコっ〜Bパート〜



とりあえずここは、あれは反論じゃないと沙都子たちにわからせる!成功しても根本的な解決にはならないが、一時的に助けることはできる。
「じゃあ、観念してくださいませ。わたくしの予想通り三人が犯人ですわ!」
「反論したから確保だと?くっくっくっふははは、甘い!甘すぎるぜ沙都子」
「…甘い?わたくしが?」「みぃっ、耳を塞ぐのです。犯人の口先の魔術なのです。洗脳されるのですっ」梨花ちゃんが沙都子の耳を塞ぐと、沙都子が高笑いをあげる。「ナイスですわ梨花、梨花の手が有る限りわたくしの耳には、口先の魔術は無効化されますわー!!」「バリアーなのです!」
大石さんもそれを見て、ニヤリと笑って、両手で自分の両耳を塞ぐ。
「ほらペタッと、んっふっふ、大石シールド形成、これで、私にも口先の魔術は効きません」

……くそっ、これじゃ大石さんと、沙都子には聞こえない。どうする?このまま梨花ちゃんだけに聞かせるか?レナと詩音は沙都子に捕まってるし……って片手で捕まえてるだけか。
「お、おい、二人とも今の内に脱け出せ」
「はうぅ、でも、脱け出す意味はないと思う」レナの言葉に詩音が頷く「そうですよ、大石はこれでも警察です。逃げても追手を差し向けられるだけ」
「それどころか、逃げたら犯人だって認めることになっちゃう。説得しないと……」
「みぃー、二人ともお利口さんなのですよ」梨花ちゃんの小憎たらしいくらい嬉しそうな笑顔を見て、心が定まる。
…仕方ない。梨花ちゃんだけにでも聞かせるか。
「いいか、よく聞け梨花ちゃん」「みぃ?」「レナがしたのは、反論じゃないんだ」「反論なのですよ?」
「いやちがう、レナはただ参考意見を述べただけだ。沙都子を否定したわけじゃない」

梨花ちゃんはふくれっ面になり、頑なな声を返す。
「……沙都子は、三人が犯人って言いましたのです。そしたらレナがちがうっていいましたのです。反論なのです」

俺はそれを、優しく解きほぐす。
「そうそれなら反論だ。梨花ちゃんの言うことは正しい」「みぃ?」梨花ちゃんはよくわからないと言った風に首を傾げて、俺は話を続ける。「でもな、そこが勘違いなんだ」
「勘違い…?」梨花ちゃんはまた少しむくれる。
「ああ、レナの言葉を一言一句違わずに思い出してみろ。レナはちがうなんて言ったか?」「いいましたのですよ?ちがうって」
「い、いや、そんなはずはない。ほら、レナは何て言った?ほら、レナはー…」「犯人じゃないよなのです」「ちちちがうだろっ、レナは、犯人じゃないではなく」「犯人ではないよなのです」「いやだから、もっと間接的な」「…レナは…犯人じゃないよ?」「おおお願いだからそこから離れてくださいいぃ!ほら、思い出せ、レナが言ったことは、梨花ちゃんたちはどこにいたのか?とか、私たちはドラム缶からうごいてない、とか…、あとはえっと…」「かな、かな、なのです」「そうっ、かな!……ん?かな?何で『かな』なんだ?」

梨花ちゃんは何故か不満そうな上目遣いになる。……おや?

「みーレナは、どこにいたのか?なんて言わないのです。どこにいたのかな?かな?なのです。圭一のは一言一句じゃないのです」
「えっ……ああ、すまない。訂正する、まぁ一言一句正しくなくても、意味が伝わりゃ」
「圭一が自分で言ったのですよ?一言一句正しく思い出せって、一言一句じゃないのなら、圭一の捏造なのです。そんなの信じられないのです」
「え…?」

ギョッとする。信じられない…?今何て言った?一言一句正しくないなら、捏造だから信じられない、だと……?
となると、あれか?この先俺がどんなに言葉を駆使しようと、レナの言ったことと一文字でもちがうならダメってことかぁ?いくら俺が梨花ちゃんを説き伏せようとしても、一文字違ったら捏造の一言で片付けられるってことかよおぉぉ?
ぐわあぁあああぁーっ!一文字ってなんだよ一文字って!?一体どんな奴がセリフを一個も間違えず覚えられんだよ!?
俳句とか名台詞じゃなく、人の言葉なんだぞ?!大意だけ受け取りゃあとはみーんな忘れちまうような日常会話。一言一句なんて覚えてるわけねぇだろおおがあぁ!梨花ちゃんだって覚えてねぇだろおぉおお?だれが判定するんだようぅ…みろ、梨花ちゃんのあの拗ねた表情!唇を尖らせて、ただ俺が謝るのを待っている、あの顔!!答えられないなら謝れっていうのか!?
でも、どうしてだ?梨花ちゃんはここまで子供じゃなかったはず、いつもの梨花ちゃんなら、こんな大事な時に、答えられないような難題をふっかけてくることはない。ちゃんと会話をしてくれる…でも今はなぜかこんな子供の理論で言い返してくる。
状況も立場も考えず、揚げ足だけを取って、無理難題をふっかけて…、くそっ、梨花ちゃんが幼くなってるってことか?沙都子といい梨花ちゃんといいどうなってんだよ。
……ん?幼くなってる…?待て待て待て待て、それなら、子供の目線に立てば解決策が見つかるんじゃないか…?
そうそうだよ、要するに梨花ちゃんの誤解を解けばいいんだ。理論じゃなく感情を解きほぐせば解決するっ。簡単なことだ。子供の目線……子供の目線……、子供の時俺はどういう時にこう言っていた…?相談の時?笑った時?…ちがうな確か、言い争いになった時が多い、自分の意見を押し通したくて無茶苦茶な理屈をこねくりまわして……自分の意見を押し通す…か……、そうかわかったぜ、今の梨花ちゃんの気持ち!……あれだ、とにかく言えるのは、梨花ちゃんは何か目的があって、ああ言ったんじゃないってことだ。もっと感情的なモノ、そう、簡単に言やあ、梨花ちゃんはただ言い合いに負けたくないだけなんだ!!
せっかく沙都子が名推理を披露したのに、俺たちが言い返したものだから、拗ねて、無理難題をふっかけてきたにちがいない。
そこまで、考えてふと不安が過る。
ん?……ということは、どうなる?
梨花ちゃんは感情的に反論してるだけとなると……おそらくは、正しい答えを突き付けても、ひたすらに拗ねるだけだろう。なんせ自分が正しいと信じたいだけだからな。反対意見なんか聞きたがらない。
となれば、俺たちが一言一句違わない答えを言っても、違うと頑なに否定して、最終的に言った言わないの水掛け論になるだけだ、結果、今と何も変わらない。解決策なし!!どうすりゃいいんだよぅ……
仕方なく、俺はレナにぎぎいと首を動かす。「レナ…悪いが、梨花ちゃんに一言一句違わない答えを言ってやってくれ…」
本人の言葉だったら、梨花ちゃんだって聞かざるおえまい…と願う。
「え、無理だよ圭一くん、一言一句なんて覚えてないよ…」
レナがそう言うと、詩音が慌てたようにレナに言い含める「そういう時は、嘘でもなんでも答えるんです。本人の言葉なら間違ってても誰も気づきませんから」「あ…ごめんね詩ぃちゃん」「あ…いえ、私の方こそ言い過ぎました。ごめんなさい」詩音も感情的に言い過ぎたと思ったらしく、すぐにごめんなさいとレナに謝る。梨花ちゃんのふて腐れた声。
「レナが嘘ついたって、ボクにはわかりますです」
梨花ちゃんは今の会話でますます拗ねてしまったらしく、ぷいっと横を向く。終わった……。打つ手なしっ!俺はそれでも諦めきれず、その横顔に、なんら考えもないまま声を……と、その時、なぜか沙都子の快活な声が割って入る。
「をっーほっほっ、皆さんわかりませんの?先ほどのレナさんの言葉!梨花も聞いてくださいませね」『え!?』「みぃ?!沙都子はわかるのですかっ?!一言一句なのですよ?」
「当たり前でしてよ!なめないでくださいませ、んーとレナさんは、『そういう沙都子ちゃんと梨花ちゃんはどこにいたのかな?かな?』これが一つめですわね、そして『どの辺りに?』これが2つ目、それに対してわたくしたちは、昇降口の前の木陰で話してたと答えた。そしたらレナさんは…『うん知ってるよ、梨花ちゃんと沙都子ちゃん、木陰で話してた。でもね、レナたちはもっと遠くにいたんだよ?だよ?疑ってるみたいだから場所も言うね。ドラム缶のとこ、だから教室に居た魅ぃちゃんのところに行くためには、梨花ちゃんたちの前を通らなきゃ駄目なの、沙都子ちゃんたちは私たちが通ったとこ見た?』と答え…四つ目は……
『じゃあレナたちはどうやって魅ぃちゃんを殺したのかな?昇降口に行ってないのに?教室に入ってないのに?どうやって魅ぃちゃんを殺したの?それに、聞けばわかると思うけど、ここにくるまでね、岡村くんたちも近くにいたの、レナたちがここに来るまでずっと一緒、だからレナたちは動いてない。レナたちにはチャンスはなかった』ですわね。探偵足るもの、常に人の会話を忘れない!常識でしてよー」「みぃー!沙都子は天才なのです!すごいのです」
梨花ちゃんは顔を真っ赤にして、喜色満面で歓声をあげる。梨花ちゃんは沙都子を尊敬してるから、素直に受け取ったらしい。
俺も歓声をあげたいが……おい沙都子、バリアーはどうしたんだよ?口先の魔術は無効じゃなかったのか?ちゃっかり聞きやがって……よくよく見ると大石さんも、今の沙都子の言葉に目を丸くしてる。大石シールドもまったく効果はないらしい。まあ手で耳を塞いだくらいじゃ、会話は防げないか、当然と言えば当然だが、なんか釈然としない。
その時詩音が、早く早くと身振りをする。ふぅ……、よしっ、レナたちを解放する!

「聞け、沙都子と梨花ちゃん!」







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