#05
「…え、いや、ないだろ、」
「いやいや、否定すんなよ‥てーかマジで、俺から見たら明らかに好意あるように見えるな。しかも転校初日から。」
「………、」
どうして加持は「絶対にない」と否定しきれなかったのか。
ただ『絶対にないと言う事はない』と心のどこかで知っていたのかもしれない。
「加持君、お昼一緒していい?」
「おう。」
昼時、加持と作間は2人っきりで屋上に居た。
嘉藤は珍しく風邪で寝込んでいるので今日は居ない。
何とかは風邪を引かないとは言うが、所詮都市伝説なのかと加持は密かに笑った。
加持と作間が2人っきりで話すのは久しぶりだった。
初めて逢った、あの放課後以来…ー
「なぁ作間、」
「…なに?」
加持はやはり、作間との空間にどこか懐かしさを感じていた。
恐ろしいほどの安心感が加持の中を廻り、それは何とも言えない感覚だった。
「今から俺…、変なこと、言っていいか、」
「…変なこと…?」
「…おぅ、俺な、お前と居たら…なんつぅか…"懐かしい"って感じるんだよ……、でも、可笑しいよな、会ったの最近なのに、」
「……、」
加持は素直に感じている気持ちを言葉にしてみた。
あまりにも唐突過ぎる上、可笑しな事を言っていると加持自身が充分理解していた。
しかしどうしてもこの不思議な感覚を作間に伝えたかったのだ。
「なんてな、……ゴメン、忘れて…ー」
やはりこんな突拍子もない事を言われた所で困らせるだけかと、加持は軽く苦笑いを浮かべ、顔を上げた。
「…っ……、」
加持は思わず息を呑む。
作間が…
泣いていたからだ。
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