#06
「作間……俺、なんか…」
「…あっ、ごめんね。泣いちゃって…。」
作間は何でもないと言う風に目元をゴシゴシと拭いた。
その拍子に俯いてしまった為、綺麗な髪に隠れて作間の表情が見えなくなった。
「やっぱり…覚えて、ないんだなぁって思ったら…、なんか、泣けて来ちゃって、」
「え…」
「…なんてね!!嘘、だよ!少しでも覚えていてくれて嬉しかった!」
パッと顔を上げ、作間は綺麗な顔で笑って見せた。
しかしまだ潤んでいる瞳が痛々しく、加持は泣かせてしまった罪悪感を感じた。
それと同時に作間の発言に疑問を抱く。
「…俺ら…どっかで会った?」
加持はとうとう混乱してきた。
初めて会ったあの日から感じている感覚。
もしこれがただの錯覚でないのなら、正常であるとしたら…
いつ
どこで
俺達は出会ったのか
何故こんなにも懐かしいのか
知りたい…ー
「加持君ならきっと思い出せるよ。」
「…やっぱり何処かで…」
「……ヒント。特別に、ヒントあげる。」
作間は綺麗な顔でニコリと…楽しげに笑った。
「僕の好きな事って何だと思う?」
「……好きなこと、」
「歌…だよ。僕ね、昔から歌が好きなんだ。」
そう言って得意げ笑って見せた作間だったが、結局何も思い出せなかった。
ただ作間の口から出てきた言葉の全てが引っ掛かる。
歌が好きだという作間。
果たしてそれが忘れてしまった様である記憶を呼び戻すヒントとなっているのか…
真剣に考えてみたが、なかなか思い出せなかった。
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