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PSO2小話
「オレと相棒(アフィン視点)」

(アフィン視点)

本当は怖い、すごく怖い。
戦うことは殺し合うことだ、でもそれだけの危険を冒す価値はある。

自分には目的があったから。

「人を探してるんだ」

終了試験の最中に起きた緊急事態、混乱していたのだろう、つい口に出した本音。
初対面の相手に言う事じゃないかも知れない。
コンビを組んだ相手は、同じ訓練生とは思えない落ち着いた雰囲気の大人だった。

試験が始まる前、交わした言葉と言えば相槌を打つ有り触れた言葉。
「…そうだな」
そして名前だけだった。
「…阿蒙」

初めての戦闘でも動揺一つ見せずにソードを振り回し、先陣で道を切り開いていった。

彼のお陰で目的の第一関門を突破したようなものだった。
正式にアークスとして登用され、当初は一人で任務に出ていた。
その時にロビーで何度か姿を見かけた、その度に彼は一人だった。

あれだけの力量を目の当たりにした自分には、それも当然かと納得する。
自分に目的があるように、彼にもアークスになる目的があるのかもしれない。

その理由に、少しだけ興味が沸いた。
だから声をかけた。

「よお!相棒!」

振り返った顔は、初めて出会ったときと同じ真顔のまま。
何だと言う訳でもなく、ただ見返してくる。
「なぁ、ちょっと頼みがるんだけど…こんな事、相棒のお前にしか聞けなくって」
アークス同士で依頼を請合う事もある、それが近づく切っ掛けになった。

それから何度かパートナーとして任務に出るようになった。
相変らず真顔で口数も少なくて、時々何を考えてるのか分からない行動に驚かされる。
あっさりレアアイテムを捨て置いたり、ボスクラスのエネミーを放置して雑魚ばかり狩りまくってたり。

でも、一緒に戦うたびに強くなっているのは分かった。

「やっぱスゲーな!相棒!」
「…そうか?」

一方的に話し掛けてばかりだった言葉に、会話らしい返事が返ってくるようになった頃には、気兼ねなく「相棒」と呼べるようになった。



「なあ、相棒。一つ聞いてもいいか?」
「…何だ?」
「どうしてアークスに成ろうと思ったんだ?、俺はホラ、最初の時に話しちまったけど、お前の話は聞いてなかったなーって…」

ショップエリアが新しい季節の装飾で彩られたとき、大きなピンク色の花で盛られた木を見上げながら何気なく聞いた。
隣に立つ相棒の顔を見上げれば、やっぱり真顔でどんな返事が返ってくるのか読めない。
「…知りたいか?」
「あ、うん。いやでも!話辛い事だったら無理に聞かないから!」
話し出しておいて引くのは気まずいが、答えを聞いたらもっと気まずくなるような気がして慌てて断った。

ふと、隣に立つ相棒の気配が動く。見上げれば近づいてくる真顔。

「…お前の、相棒になる為、だ」
「はっ?」

目の前で囁くように言われた言葉の意味を考える前に、真顔の表情が緩み、微笑を見た。
何だ、ちゃんと笑えるじゃん、コイツ。
そんな事を考えてから我に返った。

「…冗談だ」
「おまっ…冗談ってお前ヒデーーーーーー!、普段真顔で冗談なんて考えて無さそうな奴が言うと冗談も洒落になんねーから!。ホントお前何考えてんだ!このムッツリ!」
「…同じ様なことを、昨日ゼノにも言われた。…変態と言う名の紳士だ、と」
「だろうな!、って…ゼノさんにまで何言ったんだお前!」
やっぱり、何を考えてるのかどうしてこうなったのか、知りたいような知ってはいけないような、複雑な心境にどっと疲れがでた。
「もういいよ、どうせ俺には関係ない事だし、ちょっとお前の事…知りたかっただけだし」
「…そうか」
またいつもの真顔に戻って、離れてゆく。
何を考えてるのか分からないけど、放っておけない。
「ところで相棒!、次の緊急任務には出るのか?、先に出た奴の話だとかなりのレアアイテムがゲットできるらしいぜ!」
「…お前が出るなら」
「そんじゃ、決まりだな!」

話題を変えて吹っ切るように明るく言うと、相棒の手が耳元に添えられた。
耳をなぞる指の動き、どうしても悶々としてくる。
他意はないと信じて、擽る痒みにも似た感覚を我慢する。
こうして触れてくるのは、相棒なりの信頼の証なんだと信じて。


緊急任務のアナウンスが響くと、相棒が言った。

「…行くか、相棒」
「おう!」



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