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PSO2小話
「オレの相棒(アフィン視点)」
<アフィン視点>

キャンプシップの端末から、パートナーカードをスロットするとモニターに表示される相棒のプロフィール。

名前、身体的特徴、フォトン特化傾向、最近の任務記録。

「もうサブクラス申請できんじゃん…」

あっという間にレベルを上げてしまっていた相棒。
ため息が出た。
ため息が増え始めたのは数日前から、相棒の話題を聞くようになったからだ。

昨日もそうだった。
「お、よう!」
ショップエリアで買い物中に声を掛けられ、その陽気な声に振り返れば、命の恩人と言える先輩が居た。
終了試験に起きた緊急事態で助けてもらった先輩アークス、あれ以降何かと気に掛けてもらっている頼りになる先輩だった。
「昨日、お前の相棒と一緒に森林探査に行ったぜ。いやぁーまいったね、俺が同じハンターを名乗ってるのが恥かしくなるほどの剣術だったぞ。マジで新人とは思えない技量、しかもテクニック無しでだ。物理攻撃に物を言わせてガッツガッツ振り回してるように見えて、敵の攻撃はしっかり回避する。あれは相当場数を踏んでる動きだった。そもそも大剣を振り回すだけでもかなりのコツが居る、自重と遠心力を計算した攻撃力、ハンターは簡単そうに見えて実は武器との相性にはレンジャー以上に繊細なもんなんだぜ」

自分の知らないところで相棒の活躍を聞く。
最近増えた話題の一つ、新人の中に面白い素質を持ったハンターが居る。

そんな噂に乗って、何度か耳にした相棒の評価。

その前の日にも聞いた。
一度ロビーで相棒と立ち話をしている姿を見かけた、相棒と同じハンターの人だった。
「君か、彼の相棒というのは。うむ、パートナーにレンジャーを選ぶのは戦術的にも大いに成果が出る組み合わせだ!、俺も同じハンターとして彼に助言をしたところだ、フォースと組むなと!」
これは別な意味でため息が出た。同じアークス同士でも相性と言うものはとても大切だと再確認させられた。

そしてその後に、かなり熟練したレンジャーと会った。
確か新人相手に説教をくどくど語る古参のアークスが居ると聞いていた、正にその人だった。
「最近の若いアークスたちは規律と礼儀と言うものを弁えておらん!、いいか、私が新米だった頃は先輩から…」
以下延々と語られる思い出話に逃げ出す同期たちの姿を見ていただけに、話が長くなりそうなときは逃げようと思っていた。
「彼はアークスとしては新米だが、ハンターとしては既に熟練している。そして…これは私の長年の経験からの勘だが…、いや、これは相棒の君の役目だな。彼を支えてやりたまえ。私にも嘗てそんなパートナーが…」
伊達に歳は取っていないと、少しだけ尊敬した。でもその後に始まった思い出話には即行で逃げた。

「君、あの時のルーキーね?」
逃げてきた先、ロビーに行けば女の人に声を掛けられた。この人も命の恩人、先輩のパートナー。
「どう?。上手くやってる?。相棒の彼、最近よく任務に出てるみたいよ。一日に何度も、クエストカウンターに並んでる姿を見たことあるわ。あの終了試験で生き残った新人って事で、上からもちょっと目を付けられてるみたい、ほら、ロビーの2階から見てる人…」
こっそり耳打ちされチラッと見上げてみれば、吹き抜けのロビー2階の回廊から見下ろしているサングラスを掛けた厳つい風貌の男が一人、カウンターを見つめていた。
「貴方も負けずに頑張ってね。でも、ほどほどに、よ!」

ほどほどに頑張ってたら、あっという間に実力の差が出てしまった。





「はぁ〜…、何やってんだろ、オレ」
端末のモニターをオフにすると、相棒のビジョンは消えた。
そのまま座り込むとうな垂れる。

「オレの相棒がすごい奴なのは分かった、でも相棒のオレがこんなんじゃなぁ…」
アークスになった動機が不純だと言われるかも知れない。もしかしたら自分の知らないところでは笑われているかも知れない。
「地道にやるって言っても、先は長いよなぁ…、ははっ…それまで生き残れるかな?オレ…」
情けない事ばかり浮かんでくる。
このまま一人で任務に出ても、たいした成果は得られない。
それでも行かなくちゃならない、地道に、出来る事でしか此処では生き残れない。


「…呼んだか?」
「へっ?!」
突然声を掛けられ振り返ると、相棒が何時もの真顔で見下ろしていた。
「…呼び出し、丁度カウンターで申請中に、お前からパートナーカードで」
「あー…うん、その…」
呼ぶつもりで端末を操作した、でも止めてしまった。
こんな簡単な任務に呼び出すのも気が引ける、そう思ってしまう程もう相棒はベテランの風格だ。
「…どうした?」
「なあ、相棒…って、まだ、呼んでもいいのか?」
座って膝を抱えたまま、その頭上高くから見下ろされる。
それは二人の間に出来た格差にも見えた。

隣に気配が動く。
見ると相棒が隣に同じ様に座った。真顔で覗き込んでくる、何時もの顔だ。
「…呼んで欲しい」
「でもさ、オレとお前じゃ差が出てるじゃないか。もう正直並んで歩くのも恥か…」
「何の差だ、何を恥じる」
少しだけ強い口調で返されて驚いた。こんな声も出せるのか、と。
「お前が相棒と呼んでくれた、だから…もう少し此処で生きてみようと思った」
「何ソレ…そんな深刻な事、オレなんかでイイのか?」
「イイから此処に居る」
「はははっ…、お前、変な奴」
「…お互い様だ」
相棒とこんなに会話らしい会話をするのは初めてだった。ちゃんと話せる、ちゃんと分かってくれる相棒だ。
本当は不安だった。
その無表情の真意、理解に苦しむ行動。10話して1も返ってこない会話。
自分が思って居るほど必要とされてないんじゃないかという、独りよがり。


「…で、何処に行く?」
「火山!、今度こそあのドラゴンを!…と意気込んで引き受けたのはいいけど、無理だって自覚しちまったら自分が情けなくなっちゃってさ…それで、相棒を呼ぼうと思ったら、最近の色々な事が頭の中でグルグルと、な」
「…3回だ」
「何が?」
「…火山探索、3回しか行っていない」
「・・・・・・・・・マジで?」
「…2度、ココに送り返された…」
ココとは即ちキャンプシップの事。つまりクエスト失敗。
そう言って膝を抱えて顔を隠す相棒の姿、さっきまでの劣等感が綺麗さっぱり吹き飛ぶほどの親近感。
「お前はオレか…」
「…相棒だからな」
「よっしゃ!、行こうぜ!オレも一緒にリベンジするぜ!」
「…いや、既に消化済み…」
「オレは2度目、コレでクリアすればお前より自慢できる事が一つ出来る!」
「…そうか」
立ち上がって宣言する姿を座っている相棒が見上げている。さっきとは逆の立場。
差なんて、こんなにも簡単に埋まるものだ。

自慢の相棒は、今日も自分だけの相棒でいいんだ。

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