散雪華〜貴方と共に〜
身の上、そして…
「まず…、私は人ではありません…」
私はこれまで他の人間には決して話したことのない自分の正体を土方さんに明かした。
「私たち一族は、妖狐と呼ばれ、古くより神の化身と言われてきました。 」
それは姿が真っ白で、上位のものだと尾がいくつかに分かれているその姿が妖艶だったからだそうだ。
だが、私たちはそのような立場ではない。
私たちは、“白狐”と呼ばれるものと“黒狐”と呼ばれるものがいた。
神の使いと言われたのは白狐だけで、黒狐は悪魔の使いと言われ恐れ、ある時、黒狐の子供を捕まえ、張り付けにしてしまった。それに腹を立てた黒狐たちがその村を襲い、人間を全滅させてしまったという。
それから、人間と妖狐の関係は壊れてしまった。
人間は私たちを見つけると捕らえ殺す。
だから、私たちはなるべく人間に見つからないように、ひっそりと暮らし、そして、長い時の中で尾や耳を出さないようになり、今では人間と同じ世界で生活できている。
「けれど、わざわざ人間に正体を明かすようなことは絶対しません。 …昔のことを忘れ、人間に姿を明かし、そして殺された仲間もいます。けれど、私たちは人間ではないから殺されても世間からは何とも思われない。 これが、私の秘密です。」
私が話している間の土方さんは、正直どう思っているのか分からなかった。
「…あの……。」
この沈黙がすごい気まずい。
「お前は本当にそんなことで俺たちがお前を殺すと思ってんのか?」
「…え?」
「正直、お前の話しが信じられねえっていうのが第一だな。証拠も何もねえ。そんな話し、確かに他の奴にしたらお前が嘘をついていると言われて終わりだろうよ。」
「分かっています、信じてもらえないことくらい。ですが…」
「いや、信じるしかねえだろうな。 女のお前が総司相手にあそこまで戦った。それに、お前の剣捌きは誰も知らねえものだった。なにより…、お前の目を見りゃ嘘じゃないことぐらいわかるしな。」
そう言って、土方さんはふっと微笑んだ。
「…俺から少し質問してもいいか?」
「何でしょうか?」
「その、妖狐ってのと人間はどんなとこが違うんだ?」
「そうですね…。まず、身体能力は明らかに違います。男妖狐が本気を出せば、普通の戦闘では人間など敵ではない。と聞いています。私のいた時代では戦闘なんて起きないので、実際に見たことはありませんが…」
「そう、か。 分かった。この話しは俺の心の中にしまっておく。細かく聞き出して悪かったな。」
「他の皆さんには話さないのですか…?」
「ああ。 言いたくねえみたいだったからな。それに俺の口から言うのも変だろう。一葉の好きにすればいいと思うぜ。 どうせ、これから此処で過ごすことになるんだ。話す機会はいつでもあるだろうよ。」
「あ、ありがとうございます!」
新選組(今はまだ浪士組か)の土方歳三が優しいっていうのがなんか笑えるけど、この待遇は正直本当に嬉しかった。
「わかったら、そんなおっかねえ顔すんのやめろ…。今にも俺を殺しそうな顔してるぜ?」
「え!? そ、そうですか? それだけ緊張してたんですよ。ここを出ることを覚悟で話しましたから。」
「ふ…。そうか? まあいい。この話しは終わりだ。」
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