散雪華〜貴方と共に〜
のんびりまったり
私が土方さんに妖狐である事を明かしてから数日が経った。
「近藤さん。お茶が入りました。」
「ん?ああ、ありがとう。」
こののんびりな感じは何だろう?
この間、斎藤さんと永倉さんが不逞浪士と斬り合いになったってこともあったけど、それ以降は本当にのんびりとした日が続いている。
でも、今日の空気は少し違った。
まあ、のんびりはのんびりなんだけど、どことなく皆さんが喜んでいるような気がした。
「今日は何かあったのですか?」
「ん?そう見えるか?」
「はい。何だか皆さん嬉しそう…」
「ああ。実はな、兼ねてより注文していた隊服が出来上がったのだよ。今日届くからそれでみんな浮かれているのだろう。」
「そうだったんですか!それはおめでとうございます。」
「いや、これは芹沢殿の提案でな。だがまあ、喜ばしいことだ。」
「そうですね。これで不逞浪士と間違われなくなりますね。」
新選組と言えば隊服だもんね。
まだ隊名こそ浪士組だけど、段々新選組の形が出来上がってきた気がする。
「そう言えば、一葉くんは大福は好きかね?」
「大福? はい、好きです。」
「そうか! 実はな、さっき八木さんに頂いたんだ。ちょうどお茶も淹れてきてもらったしな。」
近藤さんはニコニコして私に大福をくれた。
「そう言えば、こうしてトシと菓子を食ってると決まって総司が来るんだが……ほら、足音がする。」
「近藤さん!こんなとこにいたのか。探したぜ」
「おお、トシだったか。どうかしたのか?」
「また芹沢さんが金を強請ったらしい。お役所から、苦情が来たとさ。」
「また、か…。 隊服を揃えるとなるとまた金が足りなくなるからなあ。とにかく、謝りに行ってこよう。」
「ああ。全く、何処かの後ろ盾とかがあれば、少しは金が入るんだろうが、何にせよこれ以上八木さんに迷惑をかけるわけにはいかねえからな。」
「ああ…。」
「すまんな、一葉 くん。そういう訳だから少し出かけて来る。あ、大福は食べてくれて構わないからな。」
「ありがとうございます。いってらっしゃい。」
最近、芹沢さんの横暴で近藤さんや土方さんが出かける回数が増えてきた。
「悪い人ではないんだと思うんだけどな…」
私の知っている芹沢鴨は色んな像があるけど、まだこっちに来てからは一度も会ったことがないから実際どんな人物なのかは分からなかった。
まあ、ここで今私のやることは何もない。
私は縁側に座って大福をほうばった。
「あんた、誰だ?」
声のする方に顔を向けると、そこには私とあまり年が変わらないくらいの男の子が立っていた。
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