散雪華〜貴方と共に〜
怪しきもの
だけど、やっぱり問題となってしまうのは私の性別だった。
「平隊士と雑魚寝させるわけにもいかねえしな。」
土方さんはそう言っていた。
私は別に構わないんだけどね。バレなきゃいい訳だし、バレない自信あるし。
「バレなきゃいいんですか?」
「そういう問題じゃねえ。今俺らは、お前も知っての通り二分してるんだ。そんな中でお前が女だなんて芹沢さんに知られでもしたら、またややこしくなっちまう。」
「土方さん。俺が一葉を見ます。誰かの下に着いていれば少しは安心かと…」
「そうだな。悪いな、斎藤。」
「いえ。」
「じゃあ、一葉の部屋は斎藤の隣だな。」
なんかまた私を置いて話しが進んでるけど、まあいっか。
「じゃあ、一旦解散だ。 と、新八と平助は市中の見廻りをしてきてくれ。 それから、
一葉は俺について来い。」
「はい」
私が土方さんに連れられて彼の部屋に行くと、土方さんは私のバッグからあるものを取り出した。
「…それはーー」
「他の物は、明らかにお前がいた時代の物だとわかった。だが、どう見てもコレだけは違うからな、何なのかと思ってな。」
コレ、と土方さんが手にとった物は、小さな本のような物。
「それだけじゃねえ。書物のはずなのに中は何にも書いちゃいねえ。どう考えてもおかしいだろ?」
当たり前だ。私たち一族に伝わる物が人間なんぞに読めるわけがない。
「それは私たち一族に伝わる書物。言わば家系図のような物です。そして…」
話しても良いものだろうか?
でも、人間に私のことを理解出来るだけの頭があるか?
「来た時からおかしいとは思ってたぜ。腰に刀ぶら下げた侍どもを見てもまるで驚かねえし、さっきの剣さばきは見たこともねえ流派だしな。お前、何か隠してんだろ?」
「ーー。」
これだけは、軽々しく話せるものではない。
まして、会ったばかりの人間なんかに…
「…土方さんの考えている通りです。私はまだ皆さんに話していないことがあります。でも… 軽々しく口に出来るようなことじゃないんです…」
ごめんなさい…。と小さく謝った。
「はあ…。お前の言い文もあるんだろう。だがな、俺たちだって同じなんだよ。隠し事があるやつを置いておくほど俺たちゃ優しくはねえぞ?…俺だけにでも話しちゃくれねえか?」
確かにその通りだ。
私にはまだ彼らに言っていないことがある。だけど、それは人間には口外してはいけないこととされている。 昔、それを言ったことで酷い目に遭ったことがあるから…
「私が何を言っても受け入れて下さることができますか…?」
「俺たちに害を成すことでないと分かれば、な。」
そんなことはあり得ない。私たちはいつだって平穏に暮らすことを願ってきた。それを破ってきたのは人間だ。
「わかりました。 ですが、何があっても口外しないことをお約束ください。それが、条件です…」
元々、人間に存在を知られてはならないのだ。
(これで、私はここにはいられなくなるな…)
そう思いながら、私はぽつりぽつりと話し出した。
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