8:【どういうことだ】1 朝早く、特訓が開始された。 マルコがコーチ、キフリがサポート役だ。 何故エースじゃないのかというとそれはエースじゃ真面目に、まともに特訓などできないだろうからだ。 「まずは体力。体力はしっかりつけないとこれからの特訓にはついていけないよぃ」 『はーい、何するんですか?』 「この船を100周できるようになれ」 『へっ?この船を?グルーっと回って来い、ってことですか?』 「そうだよぃ。できるようになれ、というよりもやれ」 『マヂっスかァ!?この船、何キロあるんスかァァァ!?』 「ざっと言えば1周で10kmってとこだな」 『じゅじゅじゅ、10kmを100周=1000kmォォォォ!?』 「ああ、やれ」 『何鬼畜!?ぼっ、僕一応運動はやってたけどそんなにこなせる体力ないぃぃぃ・・・』 「何やってたんだ?」 『け、剣道・・・』 「剣道?剣術か?」 『まァそうだけど、実戦向きではないやつ・・・』 「実戦向きじゃない剣術?なんだそれ」 『僕の元居た世界は平和なの!てかマヂで100周・・・』 「俺はこなしてるぞ」 『マヂでか』 「早く走らねェと終わらねェよぃ」 『ひぃぃぃぃ・・・!』 走る前からゲッソリとしたひずににキフリがくつくつ笑いながら先に始める。慌ててひずにもその後を追った。 「マルコ・・・いくらなんでも最初から100周はねェだろ?ひずには言えば一般人だったんだからよ」 「そんなこと言うからお前には任せられないんだよぃ。いつ戦いになるか分からないここで、ひずにが生き残る為だよぃ」 「・・・・・・」 もちろん分かっているが娘が心配でならないエースである。そわそわしながらひずにが1周して帰ってくるのを待つ。 が、帰ってきたのはキフリだけ。 「キフリ、ひずには?」 「ひずには今頃半分ぐらいじゃないですか?マルコ隊長、いきなりひずにに100周は無理があると思いますよ」 キフリはエースと同じことを言って走りながら行ってしまった。 そしてキフリが2周目をした後もひずにの姿がなく。 そわそわが心配の域を脱しかけたその時、ひずにの姿が見えた。 「!ひずにー!頑張れ!!パパ応援してるぞー!!」 「初めてにしてはまだ早いか?」 『ふぇっ、へっ、はっ、』 肩で息をしながらなんとか走ってるひずに。1周で10km、いきなり地区マラソンに出て来いと言われた様なもんである。しかも100周。 『さっ、さんっ、そ!!プリーッズ!!』 「まだ喋れる余裕はあるな。まだ1周だよぃ。早く行け」 鬼畜ゥゥゥウゥ!!!そう言いたかったが無駄に喋って体力消費は止めようと思い留まる。まだ99周は残っているのだから。 * * * 今は昼、諦めないでなんとか走っているという形状を保ちながらひずには必死に走っていた。只今26周目。自分でもよく頑張ったものだ、と心底感心する。 キフリは只今96周目。息は上がっているが余裕そうだ。 マルコは昼食を食べに行っている。 エースは珍しく昼飯を食べないでいた。ひずにが完走するまで見守るつもりだろう。 『っ、っ、・・・っ』 なんとかなんとかで走っているひずに。27周目に挑む。 それを見たエースが、ああああああああ!!と悶えているのだが。 next 後半に続きます。 ←前次→ 戻る |