小説「召喚と召還の結末」 報酬 王の揺らぎを感じ取りながら、ブラックは数秒、目を閉じた。 そして、目を開けると、傭兵の長たる気迫を身体に纏わせて、ブラックは言葉を紡ぐ。 「王よ。此度の報酬に、ロックウェルを俺は欲した訳だが、その生死までも、俺が握ったと考えてもよいのか?」 すると、黙したままだったロックウェルは、途端に。 「お、王様…」 と、怯えを含んだ表情で、懇願するような視線を王へと向ける。 だが、王は言葉に詰まる。 「そ、それは…」 「王。それで、良いな?」 聞いていながら、ブラックの態度は、王が断る事を許さない。 王としては、臣下を守らなければならない。 だが、ここで断る事を選べば、何万もの民を犠牲にしてしまう。 今、目の前に居るのは、傭兵団『ヒュプノス』の団長。 打算的で野蛮な傭兵。 戦う事に慣れた存在。 「臣下の命が惜しいなら、断れば良いさ」 挑戦的な笑みを浮かべ、ブラックは更に言う。 「しかし、断れば…この国の民の命の保証はしない。民の血で、大地を濡らしてみるか?」 「くっ…そ、それは…」 ブラックは言葉を続ける。 「一人の命で、何万もの民は助かる。ならば一体、何を躊躇する必要がある?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |