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ハルノヒザシ

(あ…寝てた…)
一緒に寝ていた睦美君に、お腹を蹴っ飛ばされた衝撃で俺は目覚める。
起き上がると、右に睦美君、左に睦実君がすやすやと寝息をたてていた。
何時だろうと時計をみるとまだ四時。
午前中にたくさん遊んで、昼は叔母さんが素麺茹でてくれて、お昼から二人の宿題見てあげて、おやつにフルーツポンチゼリー作ってあげて、なんかうとうとしてた二人とごろごろしてたら、寝ちゃったんだ。
(のど乾いた…起きよう…)
二人に両側からがっちり挟まれて寝ていて汗だくだ。
二人を起こさないように起き上がり、かけられていたタオルケットをかけ直してやると、俺は部屋を出る。

「春日、起きたの…?」
広間に行くとぽつんと弥生ちゃんが一人で宿題を広げていた。
飲む?と目の前に置いていたペットボトルから取り出したグラスにお茶を注いでくれる。
「ありがとう」
冷えすぎてない麦茶が美味しい。
「夏は?」
「知らない。どっか行っちゃった」
「そっか。これ宿題…?」
「うん。夏期講習の」
小学生から夏期講習か…。大変だな…今どきの小学生って。
そう思いながら見せてもらうと、う、ちょっと怪しい…。
弥生ちゃんは日本でも指折りの名門私立に通ってるからな。すごいや。
弥生ちゃんの問題集をぱらぱらめくっていると、横から視線を感じて、俺は顔を向ける。
じーっと弥生ちゃんが俺を見ていた。
小学生なのに大人っぽい、整った顔立ち。
切れ長で吊った眼差しは、叔父さんの目だ。父さんと似ている叔父さんの目。
(夏にも…似てる…)
兄弟の俺よりよっぽど。
「春日、変わらないね。前会った時と…。背が伸びただけって感じ?」
「弥生ちゃんは大人っぽくなったね」
綺麗になって驚いちゃった。
俺が素直に思っていたことを言うと、弥生ちゃんはカッと顔を赤くした。
「か、からかわないでなよ!!」
そのままきっと睨み付けられてしまう。
「あ、ごめん」
俺にそんな彼女の複雑な乙女心がわかるはずもなく、とりあえず頭を下げる。
「お、怒ってないよ?」
ちょっとしゅんとした俺に、慌てたように言いながら、俺を覗き込んでくる弥生ちゃん。
「弥生ね、春日が変わってなくって嬉しかっただけ」
ちょっと赤い頬のまま、はにかむように弥生ちゃんは言った。
夏月は相変わらず憎たらしかったけど、としっかり付け加えて。
夏。お前弥生ちゃんとなんかあったのか…。
「弥生ね…クラブで家庭科部入ったの。春日が入ってたって聞いたから…。今ね、キルト作ってるの。よかったら見て? 」
弥生の部屋…いこ?
「すごいね!!うん。見せて!!」
「うん!!」
パッと顔を輝かせた弥生ちゃんに手をひかれ、俺達は廊下を歩く。


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