拉致と質問 0-1
※過去編


















「結構酷い傷だな」

「ほらー!やっぱ介抱は必要でしょー」

「でもあれは誘拐じゃねーか、もしくは拉致?」

「拒否られたら悲しいじゃん?……ってゆーかさ、中坊かなコレ?」

「さぁ〜………でもかなりガキだよな」

「こんな子供を袋叩きなんてなぁ………そりゃ気絶もするよ」

「お前のボディーブローがクリティカルヒットしたせいだろうが」

「えー?加減したってー」

「失神する手加減ってお前なぁ…………」





少年を見下ろしながら軽いやり取りがされていたが、

意識のない少年は当然そんなことは知る由もない…………────













「───…………ん…………」

「あー、起きた?」

「ッ!?─────痛ッ………」



目が覚めると聞き慣れない声がして飛び起きたが、身体に激痛が走った。



「あぁ〜……肋骨にヒビ入ってると思うから安静にしてなよ」

「…………………」



黒革張りのソファーに寝かされていたようで、声の主は斜向かいの一人掛けに座るオレンジ頭の男。


ここがどこなのか、片目で静かに一室を見渡す。


そして、


自分の格好に驚いたようで腕や足、腹などを見ながら触れていた………



「…………ここは通称『ヤクザ事務所』だよ」

「……………」



少年が知りたがってるだろうことを男は答えた。



「あと、手当てするのに邪魔だから脱がした、それで血とかで汚れが酷いから服は捨てた」



そう。

身に付けているのはトランクスと靴下だけ。
そしてあちこちに包帯やガーゼ、絆創膏などで傷の手当てがされていたのだ。



「他に質問は?」

「……………」

「…………ないならこっちから質問」



男は咥えていた煙草の灰を落とし、もう一度口元に戻して煙を肺に吸い込みながらゆっくりと立ち上がった。



「最近………喧嘩を吹っかける中坊がいるって噂を聞いたよ」



男はソファーの肘掛け部分に腰を下ろす。

2人の距離はかなり縮み、少年は視線を逸らした。



「…………お前だろ?」

「……………中坊じゃねぇ……」

「ん?じゃあ幾つだ?」

「…………16………」

「高1か?………ガキには変わりないけどデカイ差だなー……」



中学生と言われて少しムッとした少年に、つい笑いが零れてしまう。



「調べたけどさ、理由なく喧嘩売るみたいだな?」

「…………」

「でもお前自身には理由はあるんだろ?」

「………別に………」



少年は俯いたままで口数少ない。
男は横目で見下ろしながら質問を続けた。



「そんな傷作ってたら親が心配するんじゃねぇか?」

「………………」

「学校は?今ってウルサイんじゃねーの?友達とかも何も言わない?」

「…………鬱陶しいんだよ」

「ん?」

「親なんて世間体だけで俺に無関心で放置だし、先公も有名大学に進学させることしか頭にねぇ」

「うん…………」

「ダチなんて仲良しごっこで群れるだけだし、女は自分の事とセックスしか頭にねぇし、鬱陶しいんだよ」

「………思春期だなぁ…………」



少なからず誰しも経験する反抗・葛藤・ジレンマ………

堰を切ったように語る少年に、男は理解が出来たので苦笑いしながら煙草の煙を吐き出す。



「でもさ、お前が強いのはさっき見てて分かったけど、あんま調子に乗ってると怪我だけじゃ済まないぜ?」

「…………構わねぇ…………」

「ん?」

「別に死んだって構わねぇ……」

「お前…………」



少年は胸中を漏らす。



「俺が死んだって悲しむ奴もいねぇし、迷惑だって掛からねぇ………こんなくだらねぇ世の中なんて未練もねぇしな」

「喧嘩の理由も自暴自棄か?」

「…………俺なんて生きてる意味はねぇよ…………」

「それ、本気で言ってるのか………?」

「あぁ………」




声のトーンが下がった男の方へと顔を向けた………







カチャッ───────








「そんなに死にたいなら俺が殺してやるよ…………」

「─────ッ!!」





額に押し当てられたのは


冷たく黒い鉄の塊だった───────











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