独眼と橙頭 0-0
※過去編


















親も兄弟も、女もダチも、
上辺だけの関わり合いならない方がマシだ。

顔色伺い?
何て煩わしい。

予定や都合を合わせる?
放っておいてくれ。

いい大学に入って有名企業に就職?
誰が決めたシナリオだ。

不景気だから資格を取って自分を売り込め?
俺に価値なんかない。


こんな無価値な存在に誰がした。

こんな社会はくそ食らえ。

こんな世界は滅べばいい。



それが叶わぬのなら、



こんな自分が滅べばいい──────












「何だぁ………喧嘩か?」



人の往来が激しい夜の繁華街。

そこにある小さな公園では十数人が集まっており、罵声や野次が聞こえた。



喧嘩だと気付いた通行人は、
足早にその前を通り過ぎたり、足を止めて様子を見たりしていた。



「ガキ共が…………」

「見てくのか?」

「違う………庭先で騒がれるのは好きじゃない」

「蹴散らすのかぁ〜……俺は待ってるからな」



スーツ姿の2人組は人集りに足を止めた。



「平和主義というか、喧嘩っ早いというか…………何でも首突っ込むよな」



片割れの男は、オレンジの頭を見送って苦笑いした。






「オラァッ!!」

「弱ってきてるぜ!潰せ潰せ!」



暴力による鈍い音が響く。



「ハァ………………」



呻き声を洩らしながら足元に転がる男達を見て溜め息が零れた。



「おい、お前等ー!騒ぎ起こしてんじゃねーよ」

「あぁん!?何だテメー」

「引っ込んでろよ!ぶっ殺すぞッ」



突然乱入してきた笑顔のスーツ男に、殺気立つ集団は更に騒ぎ出した。



「だからさ………騒ぐなって言ってんだよ」

「何だとコラァ!?」

「おいッ…………ちょ、コイツ、ホンモノじゃねぇ」

「マジ?………ヤクザ者かよ………」



いくら凄んでも怯まない様子に、逆に男達は怖気づいてしまった。



「人の庭で騒ぐからには覚悟出来てんだろうな?」

「言っとくけどよ、そいつが喧嘩売ってきたんだからな!」

「行くぞ!」



集団は蜘蛛の子を散らす勢いで、倒れた男達を抱えてその場を去って行った。



「袋叩き……か……」



残ったのは1人の少年のみ。

肩で大きく息をしながら俯いているが、あの人数を相手にして尚、立っているのだから実力はそれなりなのだろう。



「おい、小僧………大丈夫か?」

「…………邪魔しやがって………」

「ッ────────」



男をヤクザと知って逃げた奴等とは真逆の反応で、少年は食って掛かる眼で睨み上げたのだ。



「ははっ!片目で相手してたのか!スゲェなお前」

「チッ…………」



少年の右目は医療用の眼帯で覆われていて、死角となる右側の傷は酷いが少しも弱味を見せようとしない姿に、男は顔が緩む。



「フフ…………いいね、お前…………腕っぷしも度胸も買ってやるよ」

「はぁ?………が、はッ─────」

「まぁ、ちょっと大人しくついてきてもらうよ」



男の拳が鳩尾に入り、少年は身体をくの字に曲げ、そのまま意識を手放した。





「お待たせ〜」

「お前…………それ誘拐じゃねぇのか?」

「介抱って言ってよ」

「物好きだな…………」

「だってせっかく見つけた面白いモノだし、拾ってもいいだろう?」




気絶した片目の少年を肩に担ぎ上げて、車へと歩いて行く……………





くだらない平穏な日常に、変化をもたらす1つの出逢いがこれだった───────










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