蒲公英 動き出す 本当は、平気なんかじゃないんだ。平気だと思いこもうとしてるだけ。俺も男なんだし、男に掘られたってことはショックだ。 たぶん 最近、どうしたらいいか分からない。前はどうやって話してたっけ。どんな風に触れ合ってたっけ。どうすればいいか分からなくて、気がつけば避けて逃げてる。昼はいつも二人だったのに、それさえ耐えられなくて屋上に来てしまう。今だってそうだ。 「はぁ…」 風が冷たい。会社の屋上から見る景色は絶景とは言わない。むしろ悪い。高いビルに囲まれて、風景なんて見えない。ただ風が冷たいだけ。 そういえば、高校の時はよく屋上で飯食ったな。みんなでワイワイやって、授業サボって。 「蓮!!」 「…え」 振り向くと、春がいた。なんでいるんだよ。まだ心の整理がついてないんだ。 「蓮」 「な、なんだよ」 どんどん近付いてくる春に恐怖を感じて、少しずつ後ずさる。ついには転落防止用の柵にたどり着いて、どうしようもなくなった。 「俺…蓮のこと、好きだ」 「な、何言ってんだよ…笑えねぇぞ」 「冗談で言ってるんじゃねぇから」 真剣な顔で言われたら、笑い飛ばすことも出来ない。嘘だって言ってくれよ。あれは酒のせいだったってことに、してくれよ。 そう言いたいのに、何故か胸が締め付けられたように痛い 「…男同士だし」 「セックスしただろ」 「そう、だけど…あれは酒で」 「セックスってのは、好きじゃねぇと出来ねぇんだよ」 「俺は…」 頭が混乱してきた。胸が痛い。春の顔を見てると、あの夜の記憶が戻ってくる。男臭い笑顔で俺の頭を撫でた春の顔が、何度も何度も頭に浮かぶ。 「俺は、蓮が好き。お前の気持ち、すぐに聞かせてとは言わねぇから」 頭をポンと叩かれて、またあの夜の春の顔が浮かんだ。俺は、なんともないはずなのに。 どうして春の服の端を掴んでしまったんだろう 「蓮?」 「な、なんでもない…から」 [*前へ][次へ#] [戻る] |