蒲公英 3 [side春] 正直、受け入れたくなんてなかった。もう三十路になるってのに、彼女もいなければ女の影すらない。そんな俺が、蓮を好きだなんて。 「…有り得ねぇだろ」 まず世間で許されない。男同士で同じ職場で、それもデスクが隣同士。明らかに浮いてる。 でもこの感情は俺だけかもしれない。蓮は本当になんとも思ってなくて、俺のことを友達としか見てなかったら?そしたら俺はどうすればいい。 …リスクが高すぎる。もし失恋したら今まで通りの付き合いなんて出来ない。絶対気まずい。そんな空気に俺は耐えられるのか? 無理だ。 でも、このモヤモヤした胸の内をどうにかしたい。いっそのこと、辞める覚悟で告白するか?そこまでする理由はどこにある? ただ、好きだという感情一つで動いていいのか? 俺ももういい年だし、そんな甘酸っぱい青春みたいなことできない。 それは、本当に?そう思いこんでるだけじゃないのか? まだ三十路にはなってない。まだハチャメチャしても許されるよな? 一回だけ甘酸っぱい青春感じても、罰は当たらないよな? …心が決まった時には既に、俺の足は動き出していた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |